高齢者の高コレステロール治療

65歳以上の高齢者では、生活習慣が基本なのは若い人と同じです。 生活習慣の改善が難しい場合、冠動脈疾患発症のリスクを十分考慮し、早期から薬を使うこともあります。 また、65歳以上の高齢者では、日常生活を送るうえでの活動レベルに、大きな個人差が出てきます。 そのため、一人一人に合った治療を行うことがより重要になります。 さらに、治療をうまく進めるためには、周囲の人の協力も欠かせません。


■治療の流れ

薬物療法を個人に合ったタイミングで行う

65歳以上の人の「脂質異常症」の治療では、便宜上、「65~75歳の人」と「75歳以上の人」を分けて考えます。 現代の65~74歳の人は、健康状態も日常の活動レベルも、65歳未満の人とほとんど変わらないことが多いものです。 そのため、治療も基本的に65歳未満の人の場合と同様に進めます。 まず食生活や運動などの生活習慣の改善を行い、それでも値が改善しない場合や、冠動脈疾患を起こすリスクが高い場合は、薬物療法を考慮します。
ただ、高齢になると、心身の健康状態や社会環境などその個人差がたいへん大きくなります。 例えば、人によっては、腰や膝に病気を抱えており、運動を思うようにできないことがあります。 また、脂質異常症のほかにも、病気をいくつか持っているという人が少なくありません。 そのため、その人に合った治療の進め方が必要になります。 例えば、膝などが悪くて運動ができないという人には、生活習慣の改善と同時に薬物療法を始めることを考慮することもあります。
高齢者の場合、食べ慣れた食事を変えたり、運動を始めたりすることが現実的には難しいケースが多く、 早期から薬物療法を選択することも多いのが実情です。


■65歳までの治療の基本

自分のできる範囲で生活習慣の改善を行う

高齢者であっても、治療の基本は、食事や運動などの生活習慣の改善にあります。 ただ、長年食べ慣れた食事を変えるのは、なかなか難しいものです。 また、運動したくても、腰や膝が痛かったりして、思うようにできない人もいるでしょう。

●体重計に乗る

肥満があれば、まずは体重を減らすことが何よりも重要です。 食生活の改善や運動で減量することが望まれます。 それらがなかなか思うようにできない場合は、こまめに体重計に乗ることを習慣づけるとよいでしょう。 自分の体重を常にチェックし、記録しておくことで、減量の必要性を自覚でき、減量の成果がわかって励みになります。 自分の体重を1つの目安にして、無理をせず、できる範囲で食生活を改善して、運動を行いましょう。

●食事は摂取エネルギー量と栄養バランスの見直しを

どの年代の人でも、食生活の改善の基本は同じです。適切な摂取エネルギー量と栄養バランスを心掛けます。 長年の食習慣を変えるのは大変でしょうが、一度これまでの食生活を見直し、できる部分から改善していきましょう。 元気な人の場合は特に、65歳未満の人と同じように食生活を管理して、その状態を維持するように努めてください。 自分で調理をしている人なら、摂取エネルギー量や栄養バランスを自分自身でコントロールしやすいのですが、 家族などに頼り、自分では調理をしていない人も少なくないでしょう。 このような場合には、食事を作っている人に適切な摂取エネルギー量や栄養バランスを知ってもらい、 協力を仰いでください。

◆適切な摂取エネルギー量

標準体重×25~30(kcal)
(標準体重[kg]=身長[m]×身長[m]×22)

◆適切な栄養バランス

炭水化物・・・・・60%
たんぱく質・・・・・15~20%
脂肪・・・・・20~25%
(コレステロール 1日300mg以下)
食物繊維・・・・・25g以上
アルコール・・・・・25g以下
その他の栄養素
・ビタミン(C、E、B6、B12、葉酸など)
・ポリフェノール


●歩ける人は歩こう

腰や膝などの病気がなく、元気な人は、65歳未満の人と同じように、 「ウォーキング」などの有酸素運動と、 可能ならば「腹筋運動」や「スクワット」などの軽い 「筋力トレーニング」を習慣にしましょう。 腰や膝などに痛みがある人や、肥満がある人などは、できる範囲でなるべく歩くことを心掛けましょう。


■75歳からの治療

合併症や生活活動レベルを総合的に考慮して治療が行われる

75歳以上になると、それ以前に比べて、個人差がより大きくなります。 例えば、75歳未満の人と変わらないほど、心身ともに元気な人がいれば、思うように活動するのが難しいという人もいます。 家族に囲まれて暮らす人もいれば、1人暮らしの人もいます。都会に住んでいる人もいれば、郊外に住んでいる人もいるでしょう。
75歳以上になると、多くの場合、生活習慣はより難しくなります。 食生活に関しては、食べ過ぎよりもむしろ、低栄養の方が問題になります。 また、腰や膝などに痛みを持つ人はさらに増え、運動をきちんと行うことができる人は少なくなります。 そのほか、合併症や薬の副作用に、より注意が必要となります。
これらの点を総合的に考えて、一人一人に合った治療を行っていきます。

◆外出が困難になることも多く、周囲の人の協力がより必要に

高齢者の場合、自分一人では通院できず、家族などが付き添って来院する場合がよくあります。 付き添ってきた人も、担当医の説明をよく聞くようにしてください。 特に75歳以上の人では、生活習慣の改善や薬の管理などが1人でうまくできないことも多いため、 どうしても周囲の協力が必要になります。自分で通院できる場合でも、毎回ではなくてもよいので、 家族など周囲の人が一緒に受診することが望まれます。
また、交通機関などの問題で、専門医のところを頻繁に訪れるのが難しい場合は、 専門医が患者さんの自宅のかかりつけ医と連携をとって治療を進めることもできます。 通院に不便があれば、担当医に相談してみるとよいでしょう。 患者さんによって状況が異なるだけに、支えてくれる人と担当医とのコミュニケーションが、より重要になるのです。


■薬物療法

なぜ薬物療法が行われるかをきちんと理解することが大切

高齢者の場合、食生活の改善や運動を十分に行うことができないため、生活習慣の改善だけでは脂質の値を改善することができず、 早期から薬物療法を始めることが多いのが実情です。 薬物療法の目的は、冠動脈疾患や脳梗塞の予防だということをよく理解し、医師や薬剤師の指示通りに服薬してください。 薬物療法を始めても、生活習慣の改善はできる限り継続しましょう。 生活習慣を改善しながら薬を使用したほうが、脂質の値を改善でき、冠動脈疾患や脳梗塞の予防効果が高まります。 生活習慣の改善は、他の生活習慣病を防ぐためにも大切です。

◆高齢者は薬の副作用が起こりやすいため、より注意が必要

脂質異常症の治療で使用される薬は、比較的安全性が高いとされています。 それでも高齢者の場合は、薬を代謝・排泄する肝臓や腎臓の機能が低下していることが多いので、少ない量から始めます。 そして、効果を見ながら、使用量を調節していきます。

◆副作用により注意が必要

安全性が高いとはいえ、高齢者の場合、副作用は起こりやすくなります。 高齢者で気を付けたい副作用が、一部の薬で現れることがある「便秘」です。 便を柔らかくする薬を併用すれば、症状を緩和できるので、便秘があったり、 薬を飲み始めてから便秘に悩まされるようになった人は、担当医に相談してください。
稀に、筋肉が障害される「横紋筋融解症」という副作用が現れることがあります。 また、どのような薬にも、肝機能を低下させる可能性はあります。 定期的に通院し、副作用が現れていないかどうかのチェックを受けてください。