アディポネクチンを増やす『ユーグレナ』

動脈硬化をはじめ、生活習慣病を予防・改善する働きのある長寿ホルモンアディポネクチンは、 豆腐や納豆といった大豆食品で増やすことができることがわかっていますが、 最近の研究で『ユーグレナ』という藻類にもアディポネクチンを増やす効果があることが新たに発見されました。

■高栄養藻「ユーグレナ」

ユーグレナでアディポネクチンが増えた

現代人の悩みの一つに、「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」があります。 メタボリックシンドロームとは、内臓の周りに脂肪がたまり、脂肪や糖の代謝(体内での化学変化)が悪くなった状態です。 そうした状態を放置したままでいると、血液がドロドロになったり動脈硬化が進んだりしたりして、 心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす危険が高まります。さらには、突然死まで招く恐れもあるのです。

そこで今注目を集めているのが『ユーグレナ』です。ユーグレナには、動脈硬化を予防・改善する 長寿ホルモン「アディポネクチン」の分泌を増やす働きがあることが、 最近の研究でわかってきたのです。この研究は、銀座サンエスペロ大森クリニックの大森隆史院長によって 行われたものです。研究では、健康な男女6人に、ユーグレナの粒食品を1ヶ月摂ってもらいました。 その結果、実に7割近い4人の血液中のアディポネクチン濃度が高くなったのです。 この研究では、人数が少なく期間も短いため、ユーグレナがアディポネクチンの増加に関与しているとは いいにくい面もあります。しかし、少なくとも傾向として、ユーグレナにはアディポネクチンの分泌を増やす 可能性があるといえます。つまり、ユーグレナは、動脈硬化の予防・改善の効果が期待できる食品であり、 今後の研究成果に期待が持てるのです。

ユーグレナが、こういった優れた働きを行う仕組みについては、現在のところ、詳しくはわかっていません。 しかし、ユーグレナは植物と動物の両方の性質を持っているため、それぞれの豊富な栄養素が相乗的に働くことに よるものと考えられています。それに加え、ユーグレナには、細胞膜がやわらかいため、人の消化酵素で容易に溶ける という特徴があります。植物は、そのほとんどが繊維質でできています。したがって、豊富な栄養素を持っていても、 その大半が体内で消化・吸収されずに体外に排出されてしまいます。 ところがユーグレナは、動物としての性質も持っているので、ユーグレナ自体には細胞壁がなく、 やわらかい細胞膜のみでできています。そのため、ユーグレナは人の消化酵素で容易に溶け、 有効成分がすばやく体内に吸収されるのです。

長く健康に生きていくためには、食生活の見直しや運動などによる内臓脂肪減らしを心がけながら、 併せてユーグレナを使用することで、より大きな効果が見込めると思われます。


●「ユーグレナ」とは?

ユーグレナは動物と植物の性質を併せ持った藻類

ユーグレナは、5億年以上前の地球に生まれた、水に棲む単細胞生物です。 ユーグレナは、クロレラなどの藻に似ていますが、もともとは動物細胞であったものに、 葉緑体(光合成を行う植物や藻の器官)が寄生したものといわれています。 つまり、ユーグレナは、植物と動物の両方の性質を兼ね備える、珍しい生物なのです。

ユーグレナには、ビタミンやアミノ酸といった、私たちにとって不可欠な栄養素が豊富に含まれています。 その理由は、ユーグレナは植物と動物の性質を兼ね備えているため、植物と動物がそれぞれ持つ栄養素を、 両方とも含んでいるからです。前述のように、ユーグレナには葉緑体があり、この葉緑体が光合成を行います。 このことによって、ビタミンEやβカロテンのほか、ビタミンC、B2、B6、葉酸、ビオチン(ビタミンH) といった水溶性のビタミンをどんどん作り出すのです。 そして、ユーグレナの動物的な性質については、アミノ酸がきわめて豊富ということがあげられます。 アミノ酸の中には、人体では合成できないため、食品からとらなければならない必須アミノ酸が9種類あります。 ユーグレナには、その9種類をはじめとする、20種類全てのアミノ酸が含まれているのです。 さらに、ユーグレナには、血液を浄化する効果の強いEPA(エイコサペンタエン酸)や DHA(ドコサヘキサエン酸)といった脂肪酸も含まれています。こららの脂肪酸は、血液をさらさらの状態に保って 流れやすくしたり、動脈硬化を防いだりする働きがあるといわれています。 つまり、各種のビタミンやアミノ酸、EPAやDHAまでもが豊富なユーグレナは、わかりやすく例えるなら、 「高栄養な野菜であるほうれん草と、不飽和脂肪酸の豊富な魚が結合したもの」といるのです。


●ユーグレナの働き

ユーグレナは余分なコレステロールを体外に排出する

ユーグレナのコレステロール値を下げる働きについて、大阪府立大学の中野長久名誉教授が行った実験があります。 実験では、ネズミを2つのグループに分け、一方のグループにはユーグレナを加えた餌、もう一方のグループには たんぱく質を混ぜた餌を、コレステロールと同時に与えました。そのあと、消化管でのコレステロールの移動時間を 調べたのです。するとユーグレナを加えた餌を食べたネズミは、たんぱく質を与えたネズミよりも コレステロールの排泄速度が速いことが確認されました。具体的には、12時間後の便中のコレステロールの排泄量は、 59倍も高くなったのです。このコレステロールの排泄量増加の理由は詳しくわかっていませんが、 その一つの理由として考えられるのが、ユーグレナが持つ特有の成分である「パラロミン」です。 パラロミンは、βグルカンという食物繊維で構成され、ブドウ糖が鎖状に絡み合ってできています。 そして、この絡み合っている部分には無数の微細な穴が開いています。 もちろん、まだ働きは十分にわかっていませんが、パラミロンは難消化性の食物繊維なので、 口から摂ってもほぼそのまま排出され、そのさい、その穴が余分なコレステロールを吸着して、 体外へ排出することが考えられます。したがって、ネズミを使った実験でわかったように、パラミロンを含んだ ユーグレナには、高いコレステロール値を下げる働きがあるのではないかと思われます。 また、パラミロンは、難消化性の食物繊維なので、便秘を解消して便通を整える働きもあるでしょう。


●大量培養に成功

植物と動物両面の性質を持つユーグレナは、300年以上も前の1675年の発見以来、世界中の研究機関で、 さまざまな研究がなされてきました。そして、その優れた働きもだんだんわかってきましたが、 人工的に大量に培養するのは難しいとされてきました。 ところが、2005年に、東京大学・大阪府立大学の研究者たちが、沖縄県の石垣島でユーグレナの大量培養に 成功しました。そのため、私たちがユーグレナを食品として利用することができるようになったのです。 ユーグレナの研究は、現在もさまざまな研究機関で活発に行われています。 今後もユーグレナの新たな効果が明らかになってくるものと期待されているのです。