アディポネクチン(動脈硬化を防ぐ生理活性物質)

アディポネクチン』は、脂肪細胞から出てくる「生理活性物質」の1つで、別名「長寿ホルモン」と呼ばれ、 血管を健康に保ち動脈硬化を予防、「高血圧の予防」「糖尿病の予防」「心筋梗塞・脳梗塞などの動脈硬化の予防・改善」 「癌の予防」「脂肪肝の予防」「メタボリックシンドロームの予防」などが期待でき、専門家の間で今最も注目を集めています。 アディポネクチンは、脂肪細胞で作られるホルモンですが、内臓脂肪が多くなり肥満になるとアディポネクチンの分泌が減り、 健康や寿命に影響します。内臓脂肪のレベルは、1〜10が標準、10〜15がやや過剰、15〜17.5以上が過剰です。 アディポネクチンの多い人ほど長生きするという調査結果が出ています。


■アディポネクチンとは?

脳梗塞や心筋梗塞などの病気を起こしにくくする効果がある

『アディポネクチン』は、1996年に、メタボ研究の第一人者である大阪大学医学部分子制御内科の 松澤佑次教授(当時)の研究グループによって発見されたホルモンで、脂肪細胞から分泌されます。 アディポは「脂肪」、ネクチンは「くっつく」という意味で、このアディポネクチンは、 標準な体格の人の血液中には多く存在し、体の中で血液中を流れて全身を巡り、 血管の傷ついているところを見つけると素早く入り込み修復します。

「脂肪細胞」というと、かつては「エネルギーの貯蔵庫」としての役割しかないと考えられていました。 ところが、肥満と病気の関係についての研究が進むなかで、 脂肪細胞がさまざまな働きを持つ「生理活性物質」(アディポサイトカイン) を作り出していることがわかってきました。生理活性物質は、100種類以上あるといわれ、 「アディポネクチン」も脂肪細胞から分泌される生理活性物質の1つです。 脂肪細胞が分泌する物質には、体にいい働きをする善玉物質と悪い働きをする悪玉物質があり、 善玉物質の代表がアディポネクチンです。 アディポネクチンは長寿者の血液中に多いことから、長寿ホルモンとも呼ばれています。


●アディポネクチンの働きT「動脈硬化を防ぐ」

「動脈硬化」にはいくつかタイプがありますが、一般には「粥状動脈硬化」を指します。 血管壁の内部に「アテローム」という柔らかい塊ができるものです。 まず、高血圧や高脂血症、喫煙などが原因で血管壁に傷などができると、 全身にコレステロールを運ぶ”悪玉”の「LDL」が、血管壁の「内皮細胞」の下に入り込みます。 すると、LDLは何らかの要因で酸化され、「酸化LDL」に変わります。

一方、白血球の一種である「単球」が、血管壁の表面にある「細胞接着分子」と呼ばれる 接着剤のような役割をする分子に捕らえられて、内皮細胞の下に入り込みます。 すると単球は「マクロファージ」という細胞に変わり、酸化LDLを取り込みます。 こうしてコレステロールをたくさん取り込んだマクロファージを「泡沫細胞」といいます。 この泡沫細胞などがたまって、「アテローム」ができます。

「アディポネクチン」は、これらの過程のさまざまな場面で、動脈硬化が進展しないように活躍しており、 その働きには次のようなものがあります。

▼血管壁を修復する
「アディポネクチン」は、常に血管壁のパトロールを行い、傷などを見つけたら、それをきれいに修復します。 血管壁の傷からLDLが入り込んでしまうのを防ぐことで、動脈硬化の芽を摘みます。 また、血管壁の「中膜」を構成する「平滑筋細胞」が、傷ついた「内膜」を修復しようとして増殖し、 内膜に進入してくることも動脈硬化を進める要因の一つです。 アディポネクチンには、この平滑筋細胞が増殖するのを防ぐ働きもあります。

▼細胞接着分子を減らす
単球を捕らえる細胞接着分子は、血液中のLDLの量が過剰になると増えるといわれます。 「アディポネクチン」は、この細胞接着分子ができるのを抑えて、単球が血管壁の中に入り込むのを防いでいます。

▼酸化LDLの取り込みを抑える
「アディポネクチン」は、マクロファージが酸化LDLを取り込むのを抑え、アテロームができるのを防ぎます。

アディポネクチンは、これらの働きによって、血管内のあちこちで起こる動脈硬化の火種を”ぼや”の段階でどんどん消し、 大火になるのを防いでくれます。ですから、血管内の”消防隊”といわれています。


●アディポネクチンの働きU「インスリンを活性化させる」

「アディポネクチン」には、血糖をコントロールする働きもあります。 血液中の糖は、身体中の筋肉などに取り込まれて、エネルギー源として利用されます。 余った糖は、脂肪細胞に蓄えられます。糖が、筋肉や脂肪細胞に取り込まれるときに 働くのが、「インスリン」というホルモンです。インスリンが活発に働いていれば、 糖がどんどん筋肉や脂肪細胞に取り込まれるので、血液中の糖は減ります。

ところが、悪玉の生理活性物質である「TNF-α」は、このインスリンの働きを低下させ、 「インスリン抵抗性」を生じさせます。そのため、糖が取り込まれにくく、なかなか 血糖が下がらなくなります。この悪玉であるTNF-αの働きを阻止し、 インスリンの働きをよくしてくれる強い味方が、善玉のアディポネクチンなのです。 さらに、アディポネクチンは、血管壁を柔軟にして、血管が広がりやすくすることで、血圧を下げることもわかってきています。

血糖や血圧が高いと、動脈硬化が促進されてしまいます。 アディポネクチンは、動脈硬化の進行を直接防ぐだけではなく、動脈硬化の危険因子を減らすことで、 間接的にも動脈硬化を防いでいます。