アディポネクチンとメタボリックシンドローム

メタボを改善するアディポネクチン

アディポネクチンは、動脈硬化・糖尿病・高血圧を防いだり改善したりする強力な働きを備え、 癌予防に有効なことも確かめられているのです。 中でもアディポネクチンと密接な関係にあるのが、「メタボリックシンドローム」です。 メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積によって引き起こされますが、 実はアディポネクチンの分泌量は内臓脂肪の蓄積量と反比例の関係にあります。 つまり、太って内臓脂肪が多くなるとアディポネクチンは減少し、糖尿病や動脈硬化になりやすくなるのです。

心筋梗塞などの冠動脈疾患の患者でアディポネクチンが低い群ほど死亡率が高くなります。 また糖尿病患者でもこの数値が低く、インスリン感受性が低いことも報告されていますし、 動脈硬化も高率に発現するようです。 したがって、メタボリックシンドロームの改善には、アディポネクチンが増えるような生活を送ることがいいのです。 内臓脂肪を減らせば、アディポネクチンが増えて、脂質異常・高血糖・高血圧も一挙に改善されることになります。


アディポサイトカインの一つであるアディポネクチンは、抗糖尿病作用、抗動脈硬化作用、 抗炎症作用、抗肥満作用を併せ持つ分子であることが多くの研究者により明らかにされ、 まさに「メタボリック・シンドローム」対策の中心的存在として注目されています。 長寿ホルモンともいわれるアディポネクチンは、週90分の速歩と大豆製品の多食によってを増やすことができます。

【関連項目】: 『メタボ対策の食事療法「アディポネクチンを増やす」』


■内臓脂肪が増えるとアディポネクチンは減る

「アディポネクチン」が、いくら動脈硬化を防ぐ「善玉の生理活性物質」であるといっても、 「悪玉の生理活性物質」がそれ以上に強力であれば、負けてしまいます。 アディポネクチンがどの程度の力を持っているかは、人それぞれの体質もありますが、 一般には、「肥満」と深く関わっています。

▼皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満
肥満には、皮膚の下の脂肪が多い「皮下脂肪型肥満」 と内臓の周りに脂肪が多い「内臓脂肪型肥満」があります。 以前から、皮下脂肪型肥満が病気とはあまり関係がないのに対し、 内臓脂肪型肥満は病気と深い相関関係があることが指摘されていました。 同じ体重、同じ身長でも、腹部が太っている人は、血糖や血圧、血中脂質の値が高く、 脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患になりやすいのです。 そして、皮下脂肪と内臓脂肪ではどのような違いがあるのかを調べていくうちに発見されたのが「アディポネクチン」です。

▼内臓脂肪が増えると悪玉が増える
血液中の生理活性物質を調べてみると、内臓脂肪型肥満の人では、 TNF-αなどの悪玉が増えていることがわかっています。 一方、善玉であるアディポネクチンは、少なくなっています。 悪玉が増えて、善玉が減るのですから、動脈硬化は進む一方です。
内臓脂肪が増えるのなら、そこから分泌されるアディポネクチンも増えそうなもの ですが、実際には逆に減っています。この理由はまだわかっていませんが、 増えた悪玉が脂肪細胞に働きかけて、アディポネクチンの分泌を減らしているのではないかといわれています。

また、皮下脂肪型肥満の人では、こうした生理活性物質の量や比率の大きな変化はありません。 その理由はまだ明確ではありませんが、脂肪のある位置に関係するのではないかと考えられています。
皮下脂肪から分泌された生理活性物質は、静脈を通って心臓へと向かいます。 内臓脂肪から分泌されたものは、一度肝臓に入ってから、静脈、心臓へと流れます。 肝臓は栄養素の代謝や血液循環の調節などをしている体内の巨大な「化学工場」ですから、 このことが悪玉の増加、善玉の減少に関わっていると考えられます。

▼メタボリックシンドロームとの関係
最近、内臓脂肪がたまりすぎているために、血中脂質、血圧、血糖の値が少し高いという状態をあわせもった 「メタボリックシンドローム」という病態が注目されています。 メタボリックシンドロームは、動脈硬化が飛躍的に進行しやすく、 脳梗塞や心筋梗塞などをおこしやすい、非常に危険な状態です。

内臓脂肪型肥満の場合に、高血圧などの動脈硬化の危険因子が集まりやすくなるのは、 血栓を作りやすくする「PAI - 1」の分泌が増える一方で、 動脈硬化を抑える「アディポネクチン」の分泌が減るため、直接的に動脈硬化の危険性が高まるからです。 また、内臓脂肪がたまると生理活性物質の分泌に異常が起こり、これが高血圧や 高血糖、高脂血症の原因となり、間接的にも動脈硬化の危険性が高まります。