■ピロリ菌の再々除菌は受けられますか?

30歳代から胃痛に悩まされ、「慢性胃炎」「胃潰瘍」「慢性膵炎」などでたびたび薬物治療を受けてきました。 しかし、症状が改善されず、8年前にピロリ菌の除菌治療を2回受けました。それでも除菌に失敗し、今のところは、 「タケプロン」を服用して、胃痛症状は治まっています。担当医には「ピロリ菌よりも、ストレスが原因ではないか」 と言われていますが、なんとかピロリ菌を駆除したいと思っています。もう一度除菌治療を受けることはできるでしょうか。 (◇57歳・女性◇既往症:脂質異常症、腰痛)


◆答

除菌治療に2回失敗しており、治療が必要な胃痛が続いているとのことですが、「除菌」と「胃痛」を分けてお答えした方が よいと思います。

最初に、3回目の除菌治療(三次除菌)が可能かどうかについてお答えします。初回の除菌治療(一次除菌)には、 強力な酸分泌抑制薬と2種類の抗菌薬を用いますが、失敗して再度除菌治療(二次除菌)を行う場合には 異なる抗菌薬を用いて治療するのが原則です。一次除菌では、抗菌薬のアモキシシリンとクラリスロマイシンの組み合わせが、 二次除菌では、アモキシシリンと抗原虫薬のメトロニダゾールの組み合わせが、「胃潰瘍」と「十二指腸潰瘍」 の患者さんに限定されてはいますが、健康保険で認められています。薬剤に耐性を持つピロリ菌だと除菌が成功しないため、 除菌の成功率は100%ではなく、一時除菌では約80%、二次除菌では約90%です。したがって、数パーセントの方には 2回治療してもピロリ菌が残ることになります。
質問の内容から、現在では健康保険で認可されている前記の処方内容で、一次・二次除菌を受けられたものと推測できます。 その場合の再々除菌、すなわち三次除菌については、さまざまな抗菌薬の組み合わせや投与方法が試されてきましたが、 決定的な処方は見つかっていません。最高でも50%前後の成功率であることをご理解いただいたうえで、 3回目の除菌治療を希望される場合には、ピロリ菌の専門家がいる医療機関で十分に説明を受けてから、 治療されるとよいと思います。

次に、自覚症状である「胃痛」の問題ですが、胃酸を抑える薬でコントロールできているようですので、 「機能性ディスペブシア」と考えられます。明確な病変がなく、ストレスなどでさまざまな胃症状が出た場合、 最近では、機能性ディスペブシアと診断して、自覚症状を改善する薬を用いて治療するようになりました。 その代表が胃酸を抑える薬です。日本では「慢性胃炎」の病名で治療されてきた歴史があるために混同されることもありますが、 ピロリ菌感染による慢性胃炎とは異なる病気ですので、除菌後も症状が続くことは少なくありません。 ピロリ菌の除菌治療や機能性ディスペブシアの治療は、保険診療では十分にカバーされていませんので、 治療に当たっては担当医とよく相談してください。