乳癌を見つけるための検査・検診

乳癌の早期発見には、月に1回のセルフチェックと乳癌検診を受けることが大切です。 乳癌検診には、医師による視触診マンモグラフィー検査(乳房のエックス線検査)による画像診断、 超音波検査(乳腺エコー検査)、MRI(磁気共鳴画像)検査などがあります。 また、乳癌の検査には、年代によって適した検査方法があります。 マンモグラフィ画像検査では、乳腺は白く脂肪は黒く映るのですが、 若い人は乳腺が発達していて脂肪が少ないため、ほとんどの部分が白く写り、白く写る病変を見つけにくくなります。 そこで超音波検査を組み合わせると、小さな病変も正確に見つけられます。 一方、60歳代くらいになると、脂肪に置き換わる乳腺が増えて乳腺密度が低くなるため、マンモグラフィでよく見えるようになります。 若い人の場合は、できれば30歳代後半から超音波検査を受けることが勧められます。


■月に1回、セルフチェックを

月に1回のセルフチェックと乳癌検診を受ける

乳癌は、しこりに自分で気付くことが多いがんです。月に1回、乳房にしこりや変形がないかどうかをチェックしましょう。 しこりの有無の確認は、お風呂に入るときなどに行うとよいでしょう。 閉経前の人は、排卵から月経が終わるまでの期間は乳房が張っているので、月経終了後4日~1週間を目安に行いましょう。 乳癌によるしこりは、多くの場合は、クルミのように硬くてゴツゴツしています。 がん細胞が触ってわかる1cmほどの大きさになるには、7~8年かかるといわれています。 しかし、現在は画像診断が進歩し、5mm程度の小さながんでも、画像診断で見つけられるようになってきています。 一方、乳癌以外の病気によるしこりは、グミのように柔らかくて動くことが多いようです。 乳腺症や月経前だけしこりを感じるような場合は、生理的な変化によるもので、一般にあまり心配する必要はありません。 いずれにしても、気になることがあったら医療機関を受診してみてください。


■乳癌の検査

乳癌の早期発見には、検診を受けることが重要です。 日本における乳癌検診は、対策型検診任意型検診の2つに大別されます。 自治体が行っている乳癌検診は、対策型検診とも呼ばれ、集団全体の死亡率を下げるために公的な負担で行われるものです。 40歳以上の女性を対象に2年に1回、医師による視触診マンモグラフィー検査(乳房のエックス線検査)による画像診断が行われます。 任意型検診は、希望者が自費で受けるもので、何歳からでも受けられます。 視触診、マンモグラフィー検査に加えて、超音波検査(乳腺エコー検査)が行われます。 さらに詳しく調べる場合は、MRI(磁気共鳴画像)検査が行われることもあります。 MRI検査では、造影剤によりがんの部分が白く映し出されるため、がんがある場合は、その広がり方を含めて、乳房の様子を立体的に観察できます。

▼マンモグラフィー検査(乳房のエックス線検査)
乳房用のエックス線検査で、しこりや石灰化の有無を調べることができます。 石灰化とは、乳房の中にカルシウムが沈着したものです。その多くは良性ですが、1ヵ所に多く集まっている場合は悪性を疑います。 石灰化は触診ではわからず、マンモグラフィー検査で見つけることができます。 検査では、2枚の板で乳房を挟み、薄く伸ばした状態でエックス線撮影を行います。 こうすることで、放射線量が少なくて済み、乳腺の重なりを減らしてがんを写りやすくするなどのメリットがあります。 ただ、痛みを訴える人も多くいます。痛みを減らすには、乳房の張りが少ない月経後のタイミングで受けるとよいでしょう。 検査中の痛みが強い場合には、検査技師に伝えてください。 欧米ではマンモグラフィ検査を導入したことで、閉経後の女性の乳癌による死亡率が20~30%減少したという報告があります。

▼超音波検査(乳腺エコー検査)
マンモグラフィー検査では見つけにくい病変も写し出すことができます。 マンモグラフィー検査では、乳腺もがんも白く映るので、乳腺の濃度が高い人では画像に写らなかったり、写っていても見分けがつきにくいのです。 乳腺の濃度が高い50歳未満の女性は、マンモグラフィー検査と併せて超音波検査を受けると効果的です。 ある大規模臨床研究では、マンモグラフィ検査と超音波検査を併用すると、早期乳癌の発見率がマンモグラフィ検査単独の約1.5倍になりました。 自治体によっては、併せて受けることもできます。それぞれの検査のメリットを知って、検診をきちんと受けるようにしましょう。

■年代による適した検査方法

マンモグラフィの画像では、乳腺は白く、脂肪は黒く映ります。 若い人は乳腺が発達していて脂肪が少ないため、ほとんどの部分が白く写り、白く写る病変を見つけにくくなります。 そこで超音波検査を組み合わせると、小さな病変も正確に見つけられます。 一方、60歳代くらいになると、脂肪に置き換わる乳腺が増えて乳腺密度が低くなるため、マンモグラフィでよく見えるようになります。 若い人の場合は、できれば30歳代後半から超音波検査を受けることが勧められます。 また、年代によっては、自治体の乳癌検診に超音波検査を組み合わせるとよいでしょう。


■「石灰化」があるといわれたら

乳腺ではカルシウムを含んだ母乳が作られるため、カルシウムが結晶を作ると石灰化が生じます。 一方、がん細胞は活発に増えるため、増殖の過程でがん細胞の壊死に伴う石灰化が生じることがあります。 石灰化がある人の3割ぐらいが乳癌を疑われて精密検査を受けることになりますが、その中から実際にがんが見つかる例はごくわずかです。


■乳癌のリスクが高い人とは?

乳癌のおよそ7割は、女性ホルモンのエストロゲンによる刺激でがん細胞が増えるタイプです。 「初潮が11歳と早い」「閉経が55歳以上と遅い」「初産が30歳以上と遅い、または出産していない」人は、 一生涯のうち、月経数が多く、女性ホルモン値の高い期間が長いため、乳癌のリスクが高いといわれています。 ほかに「高脂肪食」「閉経後の肥満」「アルコール」なども発症に関わっているといわれています。 また、「親族に乳癌、卵巣がんになった人が複数いる」場合も、乳癌のリスクが高いといわれ、遺伝性乳癌の可能性も疑われます。 これらのリスクのある人は、特に注意して検診・検査を受けるとよいでしょう。