大腸癌の手術

大腸癌が粘膜下層の深いところまで進行した場合や転移がある場合は、手術が行われます。 大腸癌の手術は、癌の進行の程度と癌が発生した場所によって大きく分けられます。 最近では、医療技術の進歩によって、特殊な手術器具を使った、体への負担が少ない大腸癌の手術が一般的になり、 治療法の選択の幅も広がって、肛門が残せる手術法も選択できるようになってきました。 大腸癌と診断された場合は、医師とよく話し合って、手術後の生活の質が保てるように、適切な治療法を選択しましょう。


■手術が行われる場合

大腸癌は、「癌が大腸の壁にどれだけ深く侵入しているか」「転移の有無」など、進行度に応じて治療が行われます。 癌が大腸の粘膜下層の浅い部分にとどまっている場合は、転移の可能性がないので、 内視鏡治療で切除することができます。 一方、粘膜下層に1mmを超えて深く入っている場合は、転移の可能性を考えて、手術が行われます。


■大腸癌の手術の前に

進行度と癌の場所によって治療法が決められる

大腸癌の治療の基本は、手術による癌の切除です。 手術の方法や切除する範囲は、大腸癌の「進行度(ステージ)」「結腸癌か、直腸癌か」によって決められます。

◆検査により大腸癌の進行度を調べる

大腸癌が発見された場合、治療法を検討するうえで重要なのが、癌の進行度です。 進行度を調べるには、まずは大腸を詳しく調べる「注腸造影検査」や「大腸内視鏡検査」が必要です。 さらに、癌の転移の有無を調べるために、「胸部エックス線検査」や「腹部超音波検査」「CT検査」「MRI検査」なども行われます。

【大腸癌の進行度】

大腸壁は、内側から「粘膜」「粘膜下層」「固有筋層」「奨膜下層」「奨膜」の5層構造になっています。 大腸癌は5層の最も内側にある粘膜から発生し、外側へと進行していきます。 大腸癌は癌が大腸壁のどの深さにまで達しているのか、また、リンパ節や他の臓器への転移があるのかによって、次のように分類されます。

▼0期
癌が粘膜内に留まっている、一番初期の状態です。

▼Ⅰ期
癌が粘膜下層、または固有筋層にとどまっていて、転移のない状態です。

▼Ⅱ期
癌が大腸の固有筋層を超えていたり、奨膜まで達している状態です。

▼Ⅲ期
癌の深さにかかわらず、リンパ節へ転移している状態です。 転移は、癌がリンパ液や血液の流れに乗ることで起こってきます。

▼Ⅳ期
癌が肝臓や肺などの臓器へ転移していたり、腹部を覆っている腹膜に散らばって 転移している状態(腹膜播種)です。

これらの分類の他に、日本では、リンパ節転移の有無に関わらず、癌が粘膜や粘膜下層にとどまっているものを 「早期癌」、粘膜下層を越えているものを「進行癌」として区別しています。 早期癌では、内視鏡による治療が可能な場合もあり、進行癌でも手術をすることで治療効果が期待できる場合があります。


■手術の方法

大腸癌は、癌ができた部位によって結腸癌直腸癌に分けられ、それぞれ手術の仕方が異なります。 いずれの場合も、次の2つの手術法のどちらかが行われます。

▼開腹手術
腹部を切開し、癌を切除する方法です。医師が患部を直接見て確認できるため、癌の取り残しの可能性が少なく、出血などにも素早く対応できます。 また、医療機関の間での治療技術の差が少なく、費用は次に述べる腹腔鏡手術よりも低額というメリットがあります。

▼腹腔鏡手術
腹部にいくつかの小さな孔を開け、炭酸ガスでお腹を膨らませ、カメラの付いた腹腔鏡と手術器具を入れ、画像を見ながら癌を切除します。 傷が小さく、手術後の痛みが少ないのがメリットですが、熟練した技術が必要で、個々の条件によりリスクは異なります。 直腸癌の場合には、腹腔鏡手術の一つとして、より精密な動きで行える「ロボット支援術」を導入している医療機関もあります。

手術の方法を選択する際には、まず、癌をすべて切除し、再発しないような手術を行うことを優先し、 次に肛門などの機能を残す、傷を小さくすることを考えて選択します。

【腹腔鏡手術の治癒率】

腹腔鏡手術は、手術をするときの視野が限られるので、大腸や周囲の臓器を傷つけてしまう可能性があり、医師の熟練度が求められます。 症例数が多く経験が豊富な医療機関かどうかなどによって、治癒率に差が出ます。 かなり進行している癌や、手術中に医師の視野が制限される肥満のある患者さんの場合なども、治癒率に差が出やすいといえます。