高齢者の糖尿病対策『薬物療法』

糖尿病の治療は、生活習慣の改善を行い、必要に応じて薬を使います。 高齢者も基本は同じですが、高齢者ならではのポイントを押さえて血糖をコントロールしましょう。 薬物療法では、糖尿病の薬には飲み薬と注射薬がありますが、副作用や飲み忘れに注意することが重要です


■薬物療法

副作用や飲み忘れに注意する

糖尿病の薬には、飲み薬と注射薬があります。

●飲み薬

▼インスリンの分泌をよくする薬
スルホニル尿素薬、グリニド薬、DPP-4阻害薬があり、膵臓のインスリン分泌が低下している人に適しています。

▼インスリンの効きをよくする薬
ビグアナイド薬チアゾリジン薬があり、肥満などでインスリンの効きが低下した人に適しています。

▼ブドウ糖の吸収を遅くする薬
α-グルコシダーゼ阻害薬は、小腸で炭水化物がブドウ糖などに分解されるのを遅らせて、血糖値の急上昇を抑えます。

▼ブドウ糖を尿の中に排出させる薬
SGLT2阻害薬という2014年に登場した薬です。

●飲み薬の副作用

低血糖を起こしやすいのは、スルホニル尿素薬とグリニド薬です。スルホニル尿素は、作用が強く12~24時間続くため重症の低血糖が起こることがあります。 グリニド薬は、作用時間が短いので、頻度は少ないですが、低血糖には注意が必要です。 DPP-4阻害薬は、スルホニル尿素薬と併用すると低血糖が起こりやすくなりますが、単独では低血糖が起こりにくい薬です。 他の飲み薬は、単独で使えば低血糖はほとんど起こりません。低血糖以外の副作用もあります。 ビグアナイド薬は、吐き気などの胃腸症状が起こることがあります。 チアゾリジン薬は、むくみ、心不全の悪化などに注意します。α-グルコシダーゼ阻害薬は、腹部膨満感などが起こることがあります。 SGLT2阻害薬の副作用は、脱水、性器感染症、尿路感染症などです。


●飲み薬の注意点

高齢者の場合、認知機能の低下が原因で薬を飲み忘れることがあります。 飲み忘れた場合は、次回の問診時に必ず担当医に伝え、自己判断で後から服用することは避けましょう。 また、薬の成分を分解する肝臓や薬を排出する腎臓の働きが低下し、薬が効き過ぎて副作用も強く出てしまうことがあります。 他の持病で服用している薬がある場合は、その薬との相互作用で、副作用が起こりやすくなることもあります。 副作用がつらい場合は、担当医に相談して、対策を取ってもらいましょう。


●注射薬

▼インスリン製剤
膵臓から分泌されるインスリンと同じ働きの物質を薬にしたもので、自分で注射をして膵臓のインスリン分泌低下を補います。 食事の前に注射してすぐに効くタイプや、寝る前に注射して長時間かけて緩やかに効くタイプなどがあります。 インスリン分泌の低下が進んでいると、両方のタイプを組み合わせて使うこともあります。 食事を抜いたり量が少ないと、低血糖が起きやすいため、注意が必要です。

▼注射薬の注意点
認知機能が低下していて、1日に何度も注射をすることが困難な場合は、注射の回数が少ないタイプへの変更が考慮されます。 インスリン製剤では1日1回のタイプ、GLP-1受容体作動薬では週に1回の注射で済むタイプが登場しています。