メタボリックシンドローム対策の食事療法「減量の実践」

メタボリックシンドローム対策の食事療法減量を実践するには ただ単に「食べなければいい」というものではありません。 やみくもに食事制限を始めても、続くのはせいぜい1週間程度。 無理なく、しかも確実に効果を上げるには、1日分の適正食事量と、実際の食事量を知ることが大切です。


■1日の摂取エネルギー量を計算

メタボ解消には「量る・記録する」ことが欠かせない

「食事制限が必要だと言われても、いったい何をどうしたらいいのかわからない・・・・・ とりあえず食事の量を減らしてみよう」
という方も少なくないことでしょう。確かに食べる量を減らす必要はありますが、実際にどれだけを食べているのかを 知らなければ、何をどれだけ減らせばよいかわかりません。 下に示すのは、厚生労働省が健康な食生活の指針として発表している「日本人の食事摂取基準」(2005年版) を基にしたエネルギー所要量の計算式です。この方法で計算すると、1日の食事でどれだけのカロリーを摂ってよいのか、 必要量がわかります。

1.標準体重を計算
身長(m)×身長(m)×22=標準体重(kg)
まず標準体重を設定します。標準体重は体格指数(BMI)と身長から計算します。

2.1日の基礎代謝量を計算
基礎代謝基準値×標準体重(kg)=1日の基礎代謝量(kcal)
基礎代謝量とは、生命維持に必要な最低限のエネルギー量のことです。
下の基礎代謝基準値をもとに計算します。
年齢 18~29 30~39 40~49 49以上
男性 24.0 22.3 21.5 21.5
女性 23.6 21.7 20.7 20.7

3.1日の摂取エネルギー量を計算
1日の基礎代謝量(kcal)×活動レベル指数=1日の摂取エネルギー量(kcal)
基礎代謝量と活動レベル指数で摂取エネルギーを計算します。
活動レベル指数は、活動量によって異なり、下のようにます。
低い 1.50 1日中座っていることが多く、体をほとんど動かさない。
普通 1.75 デスクワーク主体で、通勤や家事、軽い運動で体を動かす人。
高い 2.00 立ち仕事や肉体労働が主体だったり、激しい運動習慣がある人。

では、適量に対して、実際にどれだけのカロリーを摂取しているのか。それを知るには、食べるものを量り、 記録する必要があります。そして、市販の「食品栄養成分表」などを利用してカロリー計算をするのです。 というと、とても面倒だ、いちいち量っていられない、忙しいのに記録する暇なんかない、と思われるかもしれませんが、 1日3食毎日量るというのではありません。初めのうちだけ、目分量で見当が付くようになるまでの間だけ、 「量る・記録する」ことが必要なのです。

量るには、軽量スプーン、軽量カップ、重量量りが必要です。記録には、ノートとペン。 ただし、外出先などで、ノートにメモする余裕がないときは、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話で撮影し、 後で記録するという方法もあります。こうして、どれだけ食べているのかを記録から割り出し、 1日の必要量と比較するのです。おそらく、思っていた以上に食べ過ぎていることに気づくはずです。
では、メタボ解消には、何に重点を置いて食事制限に取り組めばよいのか、そのポイントを見ていきましょう。


●塩分

食塩は1日10g未満に、「隠れた食塩」にも要注意

メタボリックシンドロームには、肥満に加えて高血圧、脂質異常症、糖尿病といった要素がかかわっています。 そこでメタボリックシンドローム解消には、まず高血圧対策として、食塩の摂取量に注目する必要があります。 厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」では、1日の食塩摂取量は10g未満とされています。 これは小さじ2杯に相当します。一見多そうにも思えますが、食塩10gというのは、塩そのものだけでなく、 醤油や味噌などの調味料、そばやラーメンのスープ、パンなどに含まれている分も含めての数字です。 いわば、「隠れた食塩」ということになりますが、この部分が侮れません。 例えば、薄口醤油は大さじ3強、味噌は大さじ4強で食塩10gに相当します。 もし漬物に醤油をかけたり、刺身にたっぷり醤油をつけたりしたら、あっという間に10gを超えてしまいます。 味噌汁は薄味で具だくさんにする。そばやラーメンのスープは残す。漬物には醤油をかけない。 刺身につける醤油は、ほんの少しにする。こうした積み重ねで、食塩の摂り過ぎを防ぎましょう。


●脂肪分

脂肪は総エネルギーの25%未満に、揚げ物・肉は1日1回まで

食塩と並んで減らすのが難しいのが脂肪分です。何しろ脂肪は美味しさのもとですから。 食事摂取基準では、脂肪の摂取量を総エネルギーの20~25%未満としています(30歳代以降の場合)。 例えば、1日のエネルギー所要量が1800kcalなら、脂肪で摂るのはその25%未満、つまり450kcalまでという意味です。 といっても、どのくらいの分量なのかわかりにくいかもしれません。見当として、1日3食のうち、 油を使った料理は1回にとどめると考えてください。揚げ物や肉料理、油いためなどを、1日に何回も食べるのを控えるということです。

◆食材選び、調理の工夫で脂肪分は減らせる

もう一つ重要なのは、脂肪の多い食材を使わない、調理で脂肪を落とすということです。 例えば、牛肉や豚肉は、もも、肩、ヒレを使い、ロースやばら肉は避けること。 調理油をたくさん吸わないように、吸収率の低いパン粉を使ったり、表面積を小さくするために 一口カツより大きい一枚のカツにする。パン粉を使わずに素揚げにする。 なす、きのこ、高野豆腐、かき揚げなど、油を吸いやすいものに注意することも忘れないでください。 また、脂肪にも「隠れた脂肪」があります。例えば、マヨネーズやドレッシングには、油が使われています。 「サラダはヘルシー」という信仰がありますが、マヨネーズやドレッシングをたっぷり使ったら、 あっという間に高カロリーになってしまいます。



●アルコール

おつまみの選び方で、飲み過ぎ・食べ過ぎを防げる

基本的にアルコール類は、度数の高いものがカロリーも高いといわれます。 「お酒は飲んでも飲まれるな」と言われますが、メタボリックシンドローム解消には、「食べ過ぎるな」 と付け加える必要があります。お酒の席で問題なのは、飲んだアルコールの量と、一緒に食べたおつまみの 量や中身です。あっさり味よりはこってり味、食塩を多く使ったものに偏ってはいないでしょうか。 お酒が進むにつれ、おつまみもどんどんお腹の中へ、ということが珍しくありません。 こうした食べ過ぎを防ぐには、野菜や海藻、きのこを使ったサラダ、おひたし、酢の物などを先に摂るとよいでしょう。 食物繊維が豊富なため、早く満腹感を得られます。また、味噌汁やスープを先に摂っておくと、お腹が一時的に満たされ、 食べ過ぎ、飲み過ぎを抑制することができます。途中に、おにぎりやおすしなどのご飯ものを食べると、 食べるカロリーを全体としてやや少なめに抑えられます。 なお、おつまみを選ぶときは、できるだけカロリーが低く、脂肪分の低いものがお勧めです。 例えば、アサリの酒蒸し、冷奴、刺身、ささみの焼き鳥などです。また、海藻サラダ、冷やしトマト、ひじきの煮物、 ゴーヤチャンプルーなどは、ビタミンやミネラルが豊富で、栄養素のバランスを取るのに最適です。 外出先でのお酒のおつまみは、揚げ物や脂肪分の多いものがメニューにあります。 そこで、レモン、お酢、大根おろしなどを使用すればカロリーが減ると思っている方もいます。 しかし、揚げ物にかけるレモンなどはさっぱりと口当たりがよくなり、消化吸収の助けになるだけと考えてください。 摂ったエネルギー量が減るわけではありません。

◆飲んだ翌日の食事でコントロールすることも必要

気持ちよくグイグイ飲んでしまった翌日は、自制心の乏しさを反省するものの、何日か経つと、また同じことを繰り返してしまいます。 しかし、こんなことではメタボリックシンドローム解消が「夢のまた夢」と消えてしまいます。 まず、飲み過ぎ、そして食べ過ぎた翌日は、オーバー分をコントロールする必要があります。 普段の食事量の70%程度にとどめましょう。 ただし、カロリーばかりを意識して、ビタミンやミネラルが不足しないように注意してください。 バランスが大切です。カリウムを多く含んだフルーツや野菜を食べることで、摂りすぎた塩分を体外に排出してくれます。