メタボリックシンドローム予防・改善の食事療法

さまざまな要因を併せ持つことで認められるメタボリックシンドローム。 その「さまざまな要因」は食事によってコントロールすることが可能です。


■メタボ対策の食事療法

肥満の是正が中心になる

『メタボリックシンドローム』は、「内臓脂肪」の蓄積によって血糖、 血清脂質、血圧などの値が異常値を示し、動脈硬化を進行して心臓や脳血管にリスクが高い状態と考えられています。 メタボリックシンドローム予防・改善の食事療法は、基本的に肥満を解消して内臓脂肪を減らすことが中心になり、 これに高血糖、脂質代謝異常、高血圧などの改善がポイントになります。 何が肥満の原因になっているのかを把握して、その生活習慣を改善していく必要があります。


●体脂肪蓄積を防止する食事法の基本

高脂肪脂肪食を夕食に食べない

体脂肪蓄積を原因とするメタボリックシンドロームを発生させてしまう原因の一つは、 鶏のから揚げや焼肉、フライやソテーした料理などの高脂肪食を夕食で連日食べる食生活にあります。 休息と睡眠を控えて脂肪を多量摂取すると、脂肪は脂肪組織に効率よく取り込まれて貯蔵されます。

食事から摂取された脂肪は、カイロミクロンとなって血中に吸収されていきますが、 どの組織に取り込まれるかはリポプロテインリパーゼ(LPL:リポたんぱく分解酵素)の働きにかかっています。 問題は食事に含まれる炭水化物によってインスリン分泌が刺激され、脂肪組織のLPL活性が上昇して、 血中脂肪が積極的に脂肪細胞に取り込まれ貯蔵脂肪になっていくことです。 加えて、筋肉と心臓は脂肪を燃やす組織ですが、この2つの脂肪組織のLPL活性はインスリンによって低下してしまい、 血中脂肪を取り込まなくなってしまいます。そのため血中脂肪はますます脂肪組織に取り込まれるようになります。 インスリンの分泌は食後に高まったあと運動する、たとえばダンベル体操のような軽レジスタンス運動を実行すれば 低下しますが、休息すると高いまま長時間維持されます。これが、肥満対策には夕食で高脂肪食を食べることを避ける のが基本である理由です。

◆脂肪と砂糖を一緒に食べない

人は、血中インスリンを上昇させて脂肪を吸収させると、脂肪を効率よく脂肪組織に貯蔵するメカニズムをもちます。 ですので、脂肪と砂糖が一緒に含まれているケーキ、ビスケット、チョコレートなど洋風の菓子類を食べることは、 体脂肪を代謝的に蓄積させる原因になります。また、ハンバーガーやフライドチキンのような高脂肪の食べ物を 砂糖入りの飲料を飲みながら食べる食べ方も、肥満の原因です。


●肥満の是正に対する食事のポイント

最終目標は標準体重

エネルギーの過剰摂取は肥満、血糖値や中性脂肪の増加が認められ、このためエネルギー制限が必要になります。 減食療法の最終目標は標準体重を目指すことになります。
摂取エネルギー算定の目安は、
 ○摂取エネルギー量=標準体重×身体活動量
という式で求められ
標準体重
 ○身長(m)×身長(m)×22
身体活動量
 ○軽労作(デスクワークが主な人、主婦)・・・・・25~30kcal/kg
 ○普通労作(立ち仕事が多い職業)・・・・・30~35kcal/kg
 ○重労作(力仕事の多い職業)・・・・・35~kcal/kg
で計算します。

◆摂取カロリーを減らす

食べ過ぎとわかっていてもやめられない、あるいは自覚がなく食べ過ぎている人がいます。 特に加齢とともに基礎代謝力が落ちているにもかかわらず、若いころと同じ食事をしていると太ってしまうことがあります。 食べる量を減らせない人は、食材や調理法方を工夫してカロリーを抑え摂取エネルギー量を適正にする必要があります。

▼主食の量を決める
ご飯や麺、パンの摂り過ぎはエネルギーオーバーにつながります。 ご飯150~200g、乾麺80~100g、食パン100gを目安にします。

▼早食いを是正する
太っている人の食べ方の傾向として、早食いがあります。よく噛んで食べたり、楽しい会話をする、 また食べるのに時間がかかるように、料理は尾頭付きのものや殻つきのものを使います。 テレビを見ながら、新聞を読みながらといった、ながら食いは量を多くとりやすくなるので注意しましょう。

▼ボリューム感を出す
今までよりも食事量が減るので、満足感を得る工夫をします。 超低エネルギー食品(海藻、きのこ、こんにゃくなど)や野菜を取り入れたり、皿数を増やす、 スープや果物を盛り込むなど、食事がさびしくならないように配慮します。

▼1日3食規則正しく摂る
朝食を抜いたり、昼食を軽くして2食にしたりすると、栄養バランスが崩れやすくなり、 また、1食抜かすことで、自分では食べていないように思っても、実際は必要以上に摂っている場合があります。

▼栄養の偏りをなくす
1日に決められたエネルギー量のなかで、栄養バランスの取れた食事をします。 特定の栄養素の不足が肥満の原因になることがあります。 例えば、日本人が不足がちだといわれる栄養素にビタミンB1、B2、B6、パントテン酸などは、 炭水化物や脂質、たんぱく質の代謝と深くかかわっています。 カロリー摂取を増やさずに必要な栄養素を補うには、栄養補助食品(サプリメント)を利用するのも1つの方法です。