【質問】緑内障の薬はずっと使い続けるのでしょうか?

16年前、「緑内障」の手術を受けました。手術後、キサラタンという目薬が処方されました。 それ以来現在まで、毎日ずっと同じ目薬をさしています。医師には「妊娠した場合は申し出るように」と言われていますが、 妊婦への影響があるのでしょうか。また、目薬の使用をやめた場合、緑内障の治療はどうなるのでしょうか。
(20代・女性)


【答】

キサラタンを含むプロスタグランジン関連薬(PGA)は、1日1回の点眼にもかかわらず、眼圧降下の効果は強力で、 現在、最も広く用いられている「緑内障」の点眼薬です。実は、緑内障のために用いられている治療薬で、 正式な意味で妊婦、産婦、授乳婦などへの投与に対する安全性が確かめられた薬剤はありません。 倫理的に、このような患者さんを対象に行うことができないことによります。
まずは、使用されている薬の添付文書をお読みください。このような文書には必ず、「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」 という項目があります。この薬剤の場合も「妊婦または妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が 危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」と書かれています。PGAの持つ元々の作用(プロスタグランジンは 体の中で作られる物質で、さまざまな作用を持っています)として、子宮の収縮作用があります。 この薬剤の添付文書にも、高濃度の薬剤を血液中に投与する実験で、「流産及び後期吸収胚の発現率増加、胎児体重の減少が 認められた」と記載されています。また、授乳に関しても類似の実験で「乳汁中へ移行することが報告されている」 と記載されています。

実際には、使用されている点眼薬中のPGAの濃度は極めて低く、点眼した後は速やかに代謝され、そのため血液中への移行は 非常に微量と考えられています。おそらく、眼科で一般的に使用されている範囲ではほとんど問題になることはないのではないかと 考えられます。しかし、薬剤への反応には個人差もありますので、100%大丈夫で安全という保証もありません。 緑内障の患者さんが妊娠された場合には、原則としては、一度、緑内障のための点眼薬を中止することが勧められます。 妊娠中には治療をしなくても眼圧が低下する傾向があるとの報告もあります。眼圧が高くない患者さんの場合には、 数ヵ月間、点眼薬を中止しても大きな問題にはならないことがしばしばです。 もし、眼圧が高い場合や緑内障が重症の場合には、眼科医のこれまでの経験から比較的安全な薬剤から使用し、 継続していただくのが一般的です。そのような意味で担当の医師は「申し出てください」とおっしゃっておられるのだと思います。 ぜひ、相談してください。