C型肝炎に『ラクトフェリン』

ラクトフェリン』は、哺乳動物の乳の中に含まれているたんぱく質の一種です。 ラクトフェリンには免疫力を強化し、病原菌から体を守る働きがあり、 C型肝炎やピロリ菌、O−157などの病原菌の撃退に効果があるといわれています。


■C型肝炎

インターフェロン治療は副作用が大きい

「肝臓癌」で亡くなる人は、20年ほど前は、15,000人ほどでした。 しかし、その後急増し、1990年代後半には、3万人にもなっています。 また、癌の部位別死亡率でも、男性で第3位、女性で第4位になっています。 肝臓癌を招く主原因は、「肝炎ウィルス」であることがわかっています。 そして、その肝炎ウィルスの70%以上が「C型肝炎ウィルス」です。 肝臓癌を招く主原因はC型肝炎ウィルといっても過言ではありません。 C型肝炎ウィルスは、肝臓の細胞に取り付き、細胞の中で増殖して肝炎を発病させます。 C型肝炎の人の70%が、10〜15年という長い年月の中で慢性肝炎になります。 最終的には、肝硬変や肝臓癌をもたらす危険性も高くなっているのです。 C型肝炎の特効薬としては、「インターフェロン」という薬が開発され、よく使われています。 インターフェロンには、C型肝炎ウィルスを撃退して、その増殖を抑える働きがあります。 しかし、インターフェロンを使った治療では、ほとんどの人に副作用が現れます。 しかも、インターフェロンを用いた治療は、C型肝炎の患者の約50%には効果があるものの、 それ以外の人には効果のないこともわかっています。


●ラクトフェリン

C型肝炎ウィルスに効く牛乳の新成分

上記のような中で、副作用の心配がなく、インターフェロンに代わるもの、あるいはインターフェロン治療の補助薬として 注目されている成分があります。それが、牛乳の新成分「ラクトフェリン」です。 ラクトフェリンは、哺乳動物の母乳に含まれている多機能性のたんぱく質の一種で、人間の母乳にも含まれ、 中でも出産して3日間ほどの時期に出る母乳(初乳という)には、きわめて多量に含まれていることがわかっています。 ラクトフェリンには、免疫力を強めて、感染症から体を守る働きがあります。つまり、生まれたばかりで免疫力がまだ 乏しい乳児を守るため、初乳にラクトフェリンがたくさん含まれているのです。 このラクトフェリンに、C型肝炎ウィルスを退ける力があるかどうか、多くの病院や研究機関で、研究がなされています。 最初に行われた横浜市立大学の試験では、11人のC型肝炎ウィルス保菌者に、1日当たり1.8gもしくは3.6gの ラクトフェリンを、8週間にわたって摂ってもらいました。その結果、比較的ウィルス量の低い患者に、 肝機能の改善とウィルス量の低下が見られました。具体的に言えば、ウィルス量が半分以下になったのです。


●ラクトフェリンの働き

ウィルスを包み込み体外に排出

上記のように「ラクトフェリン」には、C型肝炎ウィルスから体を守る働きがあるとされていますが、 では、ラクトフェリンはどのようにして、C型肝炎ウィルスから体を守るのでしょうか。

それは、簡単に言えば、ラクトフェリンがC型肝炎ウィルスを包み込んで、体の外へ排出してしまうからなのです。 C型肝炎ウィルスは、肝臓の細胞に取り付いて増殖します。ラクトフェリンは、肝臓内でC型肝炎ウィルスと結合して、 いわば包み込むような形になります。そして、C型肝炎ウィルスが肝臓の細胞と結合するのを防ぐのです。 こうなると、C型肝炎ウィルスは肝臓の細胞の中に入っていくことができず、細胞内で増殖することも、 細胞から細胞へ移行・拡散することもできなくなります。そしてC型肝炎ウィルスは、ラクトフェリンに包まれたまま、 最終的には体外へと排出されてしまうのです。実際に、試験管内の実験では、ラクトフェリンが肝臓の細胞の中に 入り込むのではなく、細胞の外でC型肝炎ウィルスに付着する現象が見られました。 こうしたことから、ラクトフェリンがC型肝炎ウィルスを駆除して、慢性肝炎や肝硬変、ひいては肝臓がんの予防や治療に 効果を示すことが期待されているのです。


◆免疫力を強めて病原菌を撃退

ラクトフェリンの働きをして、最近では次のようなことが、大手乳業メーカーの研究グループによって新たに発見されました。 それは、ラクトフェリンが胃の消化酵素であるペプシンで消化されると、強い抗菌力を持つ「ラクトフェリシン」という物質ができることです。 ラクトフェリシンは、ラクトフェリンを摂取した人の胃の中に作られます。 そして、病原性大腸菌O−157やMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、ピロリ菌などに対し、 抗菌作用のあることが明らかになりました。 さらに、ラクトフェリンには、腸内の悪玉菌を退治するばかりでなく、善玉菌であるビフィズス菌を増やす働きもあることがわかっています。 ラクトフェリンは、こうした働きにより免疫力を強め、C型肝炎ウィルスをはじめとする O−157やピロリ菌などの病原菌を退ける効果が期待されているのです。

◆大腸ポリープにも効果が認められた

また、最近では、ラクトフェリンの新たな働きも確認されるようになりました。 国立がんセンターの研究によれば、ラクトフェリン3gを1年間にわたって摂取してもらったところ、 大腸ポリープの大きさが0.2mm程度小さくなったことがわかったのです。 大腸ポリープは、成長すれば大腸癌に進行する可能性があります。大腸ポリープの成長を抑えるラクトフェリンは、 大腸癌の予防に役立つというわけです。 なお、最近では、日本での研究を受けて、欧米でもラクトフェリンに注目が集まり、積極的に摂取ることをすすめる働きが見られるようになっています。


●ラクトフェリンの摂り方

市販の牛乳にはほとんど含まれない

上記のように優れた働きをするラクトフェリンは、人間や牛の初乳(出産直後の3日ほどの間に出る母乳)に、 大量に含まれています。ラクトフェリンは、市販の牛乳やチーズにも含まれていますが、その量はごくわずかにすぎません。 さらにラクトフェリンは熱に弱いため、高温で殺菌された市販の牛乳には、ほとんど含まれていないと考えられます。 そのため、ラクトフェリンを摂るなら、ラクトフェリンを抽出した市販の製品を利用するとよいでしょう。 現在、ラクトフェリンは、牛乳から抽出された粒食品が市販されています。 また、ラクトフェリンを配合したヨーグルトや粉ミルクも製品化されているので、そういった食品を利用するのも一つの方法です。

◆1日600mg摂ればいい

免疫力を強め、C型肝炎などの病気から体を守るためにラクトフェリンを摂るなら、1日あたり600mgが目安です。 なお、すでに慢性肝炎になっている人が摂るなら、ラクトフェリンを摂る量を増やしてもよいでしょう。 ちなみに、ラクトフェリンには、副作用の心配はありません。ですから、安心して摂ることができます。 ラクトフェリンは、食前食後のいつ摂っても、効果に変わりはありません。 ただラクトフェリンが効率よく働くようにするには、1日のうちで2〜3回に分けて摂るのが望ましいでしょう。