コレステロールが関係する病気『狭心症・心筋梗塞』

狭心症』と『心筋梗塞』は、動脈硬化などによって、 心臓の内腔が狭くなったり、詰まったりして、心臓の筋肉が酸素不足に陥ることで起こります。 狭心症は「胸が重苦しく、締め付けられるような感じ(絞扼感)」が起こるのが特徴です。 これに対して、心筋梗塞では「胸に焼け火箸を突っ込まれたような感じ」といわれるほど、激しい痛みが起こります。 狭心症の症状は長くても5分程度で治まりますが、胸の激しい痛みが30分以上続くと心筋梗塞が疑われます。 心筋梗塞で心臓の筋肉が壊死すると命に関わることがあります。 狭心症は起こり方で、「器具性狭心症」「冠攣縮性狭心症」「冠攣縮性狭心症」の3つのタイプに大きく分けられ、 症状の現れ方も異なります。狭心症・心筋梗塞の発症にには、コレステロールがかかわっています。 これらは「LDLコレステロール値」が髙かったり、「HDLコレステロール値」が低かったりすると、発症しやすくなります。 狭心症の治療には再発を防ぐ薬物療法や血流を確保する治療を行うカテーテル治療、バイパス手術などがあります。


■狭心症・心筋梗塞とは?

動脈硬化などで冠動脈の内腔が狭くなったり、詰まったりする

心臓は全身に血液を送り出して、酸素や栄養を供給しています。その心臓自身の筋肉(心筋)に酸素や栄養を運んでるのが、 心臓を取り巻いている「冠動脈」です。

●肝動脈に動脈硬化が起こると

冠動脈に動脈硬化が起こると、内腔が狭くなり、血流が悪くなります。そのために十分な量の酸素が心筋に届かなくなり、 心筋が一時的に酸欠状態に陥るのが「狭心症」です。「アテローム(粥腫)」の表面は、被膜に覆われています。 その被膜が破れてできた「血栓」が、狭くなった冠動脈に詰まって起こるのが「心筋梗塞」です 詰まった先の心筋には血液が流れにくくなるため、心筋は酸素不足となり、壊死します。 そのため、心筋梗塞を起こすと命に関わることがあります。狭心症と心筋梗塞を併せて「冠動脈疾患」、 または、「虚血性心疾患」と呼びます。


■症状

胸の激しい痛みが30分以上続くと心筋梗塞が疑われる

狭心症は「胸が重苦しく、締め付けられるような感じ(絞扼感)」が起こるのが特徴です。 これに対して、心筋梗塞では「胸に焼け火箸を突っ込まれたような感じ」といわれるほど、激しい痛みが起こります。 胸以外にも、みぞおちの辺りや肩、歯などに痛みが起こることもあります。 狭心症の症状は長くても5分程度で治まりますが、心筋梗塞の症状は30分以上続きます。

●狭心症のタイプと現れ方

狭心症は起こり方で3つのタイプに大きく分けられ、症状の現れ方も異なります。

▼器具性狭心症
”階段を駆け上がる”など、体を動かす時に症状が現れます。運動時には心筋がより多くの酸素を必要としますが、 動脈硬化が進み、冠動脈が狭窄していると、十分な量の酸素を供給できないためです。

▼冠攣縮性狭心症
安静時、特に夜中から明け方にかけて多く発症します。冠動脈が一時的に痙攣して、内腔が狭くなるのが原因です。 日本人に多い狭心症で、動脈硬化があまり進んでいなくても起こります。 「心室細動」というタイプの不整脈に移行して、命に関わることもあります。

▼冠攣縮性狭心症
主に安静時に起こります。アテロームを覆う被膜が破れて血栓ができ、内腔が狭くなるのが原因です。 最も心筋梗塞につながりやすいタイプです。

●痛みが現れない心筋梗塞もある

心筋梗塞を発症すると、激しい胸の痛みに襲われますが、「糖尿病」の患者さんや高齢者などでは、感覚が鈍り、 痛みを感じにくいことがあります。心筋梗塞では「息苦しさ」が起こることがあるので、 胸の痛みだけでなく息苦しさにも注意しましょう。

●症状が現れたら

狭心症で、「硝酸薬」が処方されている場合は硝酸薬を使います。それでも治まらない、あるいは痛みが30分以上続く場合は、 心筋梗塞が疑われます。心筋梗塞を起こすと、時間がたつにつれて心筋の壊死が拡大します。 急いで医療機関を受診し、壊死を最小限に抑えることが大切です。


■コレステロールと冠動脈疾患との関係

狭心症・心筋梗塞の発症にかかわっている

数多くの研究で「LDLコレステロール値」が高くなるほど、冠動脈疾患が発症しやすくなることが証明されています。 逆に「HDLコレステロール値」は、低くなるほど冠動脈疾患が生じやすくなります。 これらに「高血圧」「高血糖」「喫煙」などの危険因子が加わると発症の危険性はさらに高まります。 冠動脈疾患と、LDLコレステロール値を下げる「スタチン」という薬との関係を調べた研究も行われています。 この研究では、心筋梗塞を発症した人がスタチンを服用してLDLコレステロール値を下げると、狭心症や心不全などの発症が 抑えられることが確認されています。 LDLコレステロール値をコントロールすることは、冠動脈疾患の発症を抑えるだけでなく、 発症後の心臓の状態を改善するためにも非常に重要です。

診断と治療

再発を防ぐ薬物療法や血流を確保する治療を行う

診断の基本は「問診」で、症状や病歴などが詳しく聞かれます。「安静時心電図検査」「運動負荷心電図検査」 「過換気負荷試験」などの検査からは、狭窄の位置や程度を推測することができます。 推測した内容を確認するため、冠動脈に造影剤を注入してエックス線で撮影する「冠動脈造影検査」が行われます。 最近は、「CT(コンピュータ断層撮影)検査」などが行われることもあります。 また、心筋梗塞では「心筋シンチグラフィー」で心筋の虚血の広がりを調べることもあります。

治療

次の3つに大きく分けられます。

▼薬物療法
狭心症には、「硝酸薬」「カルシウム拮抗薬」「β遮断薬」「抗血小板薬」などが使われます。 心筋梗塞には、「抗血小板薬」「ACE阻害薬」「AⅡ受容体拮抗薬」などが用いられます。 LDLコレステロール値が高い場合はスタチンも併用します。

▼カテーテル治療
「カテーテル」という細い管を血管に挿入し、冠動脈の狭窄部で風船を膨らませ、内腔を広げます。 現在はそこに「ステント」という金属製の筒を留置する「ステント留置術」が主流です。

▼バイパス手術
体内のほかの部位の血管を、血栓の詰まった場所を迂回するように冠動脈をつなぎ、血流を確保します。

■その他

喫煙習慣や糖尿病がある人は、動脈硬化の程度が軽くても、心筋梗塞を起こしやすい

アテロームによって冠動脈の狭窄が進むと、心筋梗塞が起こりやすくなります。 しかし、アテロームがあまり大きくなく、狭窄が比較的進んでいなくても、心筋梗塞が起こることがあります。 冠動脈の断面積に占めるアテロームの比率を「狭窄度」といいますが、日本における調査では、 「狭窄度25%以下」という軽度狭窄の段階でも、心筋梗塞が発症していることがわかっています。 これには、アテロームを覆う被膜の厚さが関係しています。 この被膜が薄くなるほど破れやすくなり、血栓ができやすくなるのです。 被膜を薄くする主な要因が高血圧、喫煙、糖尿病、そして「高LDLコレステロール血症」です。 LDLコレステロール値を下げることは、この意味でも大切なのです。