コレステロールが関係する病気『脳梗塞』

脳梗塞』とは、脳の血管が詰まって脳細胞が壊死する病気です。 脳梗塞は大きく3つのタイプに分けられますが、そのいずれに対しても「コレステロール」が直接的・間接的に関係していると考えられています。 重篤な後遺症が残ったり、時には命に関わったりします。コレステロール値が異常であるほど、脳梗塞が起こりやすくなります。


■脳梗塞とは?

大きく3種類に分けられ、動脈硬化が主な原因

『脳梗塞』は、「脳卒中」の1つです。 破れたりして起こる病気の総称で、「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」に大きく分けられます。 脳出血とくも膜下出血では脳の血管が破れますが、脳梗塞では脳の血管が詰まります。 脳の血管が詰まると、その先には血液が流れなくなるため、脳細胞が壊死します。


●脳梗塞のタイプ

脳梗塞は、次の3つのタイプに大きく分けられます。

▼アテローム血栓性脳梗塞
脳の比較的太い動脈に起こりやすいタイプです。これらの動脈の壁にコレステロールなどが蓄積して 「アテローム(粥腫)」ができ、その被膜が破れたところに血小板などが集まり、 「血栓」ができることで起こります。

▼ラクナ梗塞
脳の細い血管の内腔に高い圧力がかかり続けて、血管壁が厚くなり、最終的に閉塞して起こります。 主な原因は高血圧ですが、細い血管の根元の部分にアテロームができることも関係するとされています。

▼心原性脳塞栓症
心臓の中でできた血栓が脳に流れ、脳の血管を詰まらせます。原因の7割は「心房細動」という不整脈です。 脳卒中は、現代の日本における死亡原因としては「癌」「心臓病」に次ぐ第3位です。 この脳卒中による脂肪の過半数を占めるのが、脳梗塞です。近年脳梗塞の治療法は進歩し、 発症しても一命を取りとめることが可能になってきています。 ただ、残念ながら、重篤な後遺症が残ることも多いため、予防が非常に重要です。

脳梗塞の症状

体の片側が麻痺したり、ろれつが回らなくなったりする

障害される部位によって現れる症状が異なりますが、最も多いのが「運動障害」です。 運動機能を司る部位が障害され、「手足に力が入らない」「手足が麻痺して動かない」といった症状が体の左右どちらか、 片側だけに起こります。また、ろれつが回らなくなったり、視野が欠けたり、意識を失うこともあります。

脳梗塞の前触れ「TIA」

脳梗塞と同様の症状が現れて24時間以内(大半は10分前後)に収まる場合を、「TIA」といいます。 TIAでは、血栓が脳の血管に詰まって脳の血流が途絶えますが、短い間に自然に血栓が溶け、血流が回復します。 TIAは脳梗塞の前触れとされており、TIAが現れた人の約3割が、1年以内に脳梗塞を発症します。 TIAが現れてからの1~2週間が特に危険なので、症状が治まったからといって放置せず、 必ず医療機関を受診してください。


コレステロールと脳梗塞ととの関係

脳梗塞の発症や再発の予防には、コレステロール値の管理が大切

コレステロール値の異常は脳梗塞の危険因子の1つであり、予防のためにはコレステロール値の適切な管理が重要です。 そのことを示すデータを、いくつか紹介しましょう。LDLコレステロール値を下げる効果のある「スタチン」 という薬について、世界中で行われた数多くの研究をまとめたところ、LDLコレステロール値が下がるほど、 脳卒中の発症率が低下することが示されました。この結果は脳卒中全体についてのものですが、 出血性脳卒中(脳出血、くも膜下出血)の発症率には変動が見られませんでした。 したがって、LDLコレステロール値を下げると脳梗塞の発症率が下がるということができます。

逆にHDLコレステロール値は、低いほど脳梗塞の発症率が高くなります。日本で行われた研究でもそのことが示されています。 近年、スタチンが脳卒中の再発を抑制するのではないかと考えられ、盛んに研究が行われています。 世界二十数か国で行われた研究では、スタチンを使った場合には、脳卒中の再発予防効果が見られました。 日本でも現在、これと同様の研究が進められています。


脳梗塞を発症した時は

経過時間が治療の決め手。すぐに救急車を呼ぶ。

脳梗塞が疑われる場合、周りの人はすぐに救急車を呼んでください。 意識がない場合は、嘔吐したものが喉に詰まって窒息しないように、体と顔を横に向けて寝かせます。 運動障害が起こっている場合は、障害のある側を上にしてください。

診断

「問診」「身体診察」「血液検査」「心電図」「エックス線撮影」などの一般的な方法を行うほか、「神経学的所見」 といって、麻痺やしびれなど、神経に原因があって起こる症状についてもよく調べます。 脳梗塞が疑われた場合、病巣の位置や広がりを確認するために有効なのが、画像検査です。 「CT(コンピュータ断層撮影)検査」「MRI(磁気共鳴画像)検査」などで脳の状態を調べるほか、 「超音波検査」で頸動脈の動脈硬化の進行度や、心臓の中の血栓の有無などを調べます。

治療

発症から3時間以内であれば、「t-PA」という血栓を溶かす薬を点滴することがあります。 脳細胞が壊死する前に、血栓を溶かして血流を再開することで、壊死する範囲を減らす効果があります。 ただし、発症から3時間以上たった場合や重症の場合などは、脳出血を起こす危険性が高まるので、 t-PAは用いられません。診断がつくまでに約1時間はかかるため、t-PAによる治療を受けるためには、 発症から2時間以内に診察を始める必要があります。そのためにも、できるだけ早く医療機関を受診することが重要なのです。

3時間以上たった場合、アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞では、「抗血小板薬」などによる治療が行われます。 心原性脳塞栓症では「抗凝固薬」などが用いられます。 治療と並行して、早期から「リハビリテーション」も積極的に行われます。 かつては”脳卒中を起こしたら絶対安静”といわれていましたが、現在では早期からのリハビリテーションが機能回復、 維持に有効だと考えられます。再発予防のための治療も重要です。生活習慣の改善に積極的に取り組み、 薬は担当医の指示通りに服用してください。