痺れる腰痛

腰痛には、お尻から太腿、ふくらはぎにかけて、痛みや痺れが現れる坐骨神経痛を伴うものがあります。


■坐骨神経痛を起こす2つの病気

坐骨神経痛は、脊柱管狭窄症椎間板ヘルニアなどの腰の病気によって引き起こされることがあります。 症状の現れ方は、それぞれ異なります。

▼脊柱管狭窄症の場合
背筋を伸ばしたときや、立ち続けた時などに、お尻から脚にかけて痛みや痺れが起こります。 また、歩いているときに、お尻や太もも、ふくらはぎに痛みや痺れが起こって歩けなくなる可能性があり、 前かがみの姿勢でしばらく休むと再び歩けるようになるのも特徴です(間欠跛行)。

▼椎間板ヘルニアの場合
前かがみの姿勢になると、お尻から脚にかけて痛みや痺れが強くなります。 椅子に座っていても、症状が強くなります。

脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアが原因で起こる坐骨神経痛の改善には、それぞれの病気の治療が必要です。 重症化した場合は手術が検討されるため、早目に医療機関を受診してください。 治療には、それぞれ次のような方法があります。

【坐骨神経痛とは?】

お尻から太腿の裏側を通って、足まで伸びる神経、腰から伸びているため、腰の神経が圧迫されると、 この神経が通る周辺に痛みや痺れが現れることがあります。


■脊柱管狭窄症の治療

▼保存療法
「血流を改善する薬」「神経の炎症を抑える薬」「神経痛を和らげる薬」などによる薬物療法があります。 また、局所麻酔薬などを注射して症状を緩和する、硬膜外ブロックや神経根ブロックなどのブロック療法が行われます。

▼手術
重症の場合が対象で、例えば、「性器と肛門の間当たりの熱い感じや痺れ」「歩行時の尿漏れ感」「筋力の低下」などがある場合は、手術が検討されます。 保存療法を3~6ヵ月間行って効果が見られない場合も、手術が検討されることがあります。 手術では、神経を圧迫している部位の骨や靱帯を切除して脊柱管を広げ、圧迫を解消します。 併せて、骨を固定する手術が行われることもあります。手術は内視鏡で行われることもあります。

▼自分でできる対処法
姿勢の工夫や運動などによるセルフケア(下図参照)を行いましょう。神経の圧迫が軽減されて、症状の改善に繋がります。
【高齢者が気を付けたい薬】

処方される薬の中には、注意が必要なものがあります。 なかでも、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の長期使用には、注意が必要です。 特に高齢者では、副作用として胃腸障害や腎障害を引き起こす可能性があるため、医師とよく相談することが必要です。


■椎間板ヘルニアの治療

▼保存療法
「神経の炎症を抑える薬」「神経痛を和らげる薬」などによる薬物療法やブロック療法などが行われます。

▼手術
「尿が出ない・出にくい」「脚の筋力が著しく低下している」など、重症の場合は、手術が検討されます。 保存療法を3~6ヵ月間行って効果が見られない場合にも、手術が検討されることがあります。 椎間板ヘルニアの手術は、飛び出している髄核を除去して、神経の圧迫を取り除きます。 内視鏡を使う方法が多く行われています。

▼自分でできる対処法
椎間板ヘルニアの場合、痛みが強くても、その多くは発症から3~6ヵ月前後で自然に良くなります。 また、「これだけ腰痛体操」「ぎっくり腰体操」をして、 症状が強まらなければ、続けることで、症状が軽減することがあります。 体操をすると坐骨神経痛が強くなる場合は、すぐに中止して医師に相談してください。
【坐骨神経痛の症状と似ているほかの病気】

腰痛がなく、両脚の筋力低下が急に起こった場合は、「脊髄の病気」や「脳梗塞」が疑われます。 太腿や足の付け根の痛みは、「変形性股関節症」でも起こり、間欠跛行は「抹消動脈疾患」でも起こります。 特に、抹消動脈疾患は脊柱管狭窄症と間違えやすいです。 お尻や太ももの痺れ以外に手足の血行不良がある場合は、上腕と足首の血圧を比較するABI検査を受けるとよいでしょう。


坐骨神経痛の原因とされる2つの病気

脊柱管狭窄症による坐骨神経痛があるときのセルフケア