腸の善玉菌を増やす『育菌』⑤ペラペラ腸
重症便秘の高齢女性は腸がペラペラ!腸の筋肉を鍛えるゴロ寝で便が動き出す。
■悪玉菌が増えると腸が痩せて動かなくなる
4万人以上の大腸を診てきた大腸内視鏡のある専門医は、長年の診療の結果、高齢者の女性で、長く便秘を患っている人の多くは、 腸がペラペラに薄いということに気付いたそうです。内視鏡で見ると、大腸の右上の角部分(肝湾曲)が青く透けています。 これが健康な腸の人なら、肉厚できれいなピンク色をしているのです。 筋肉は使わないと、衰えて細くなるように、腸の筋肉も使わないと、痩せていきます。 このような腸を上記の医師は『ペラペラ腸』と呼んでいるそうです。 腸が痩せて薄くなると、便を推し進める力が弱くなります。また、薄い腸は伸びて、ねじれや下垂を起こしやすくなります。 それも、腸に便が滞る大きな原因になります。高齢の女性は、約8割の人が便秘です。 その中でも、ペラペラ腸の人は、薬を飲むだけではなかなか便秘が改善しにくくなっています。
ところで、便秘と関係が深いと言われているのが大腸癌。現在、女性の癌による死亡率のトップです。 大腸癌を防ぐには、まず便秘にならないことです。そのためにも、便秘の原因となるペラペラ腸は早急に改善しなくてはなりません。 ペラペラ腸になる原因は、腸内環境も関係しています。 腸の中には、人に有用な働きをする善玉菌と、害を及ぼす悪玉菌がいます。善玉菌が優位だと、善玉菌が出す乳酸や酢酸などの 有機酸が増えて、腸内が酸性に傾きます。その影響で、悪玉菌の増殖が抑えられたり、腸の運動が活発になったりして、 健康的な腸を維持できます。 ところが、悪玉菌が優位になると、腸内には悪玉菌が作る毒性ガスが増えます。これが腸に作用して、腸は働きが鈍くなり、 腸壁が薄くなっていきます。腸壁が薄くなると、ますます腸が動かず、便秘がひどくなる悪循環に陥ってしまいます。 高齢になると、ビフィズス菌などの善玉菌が急激に減り、ウェルシュ菌などの悪玉菌が急増してくるため、 ペラペラ腸になりやすいのです。それに加えて、運動不足や過度のストレス、偏った食事などがあると、悪玉菌が増え、 ペラペラ腸が悪化します。
●10回ぐらい軽々と便が動きやすくなる!
上記の医師は、このようなペラペラ腸の人に、腸を元気にする「腸トレ」を指導しています。 筋肉を鍛えて太くするように、痩せた腸も腸トレで鍛えると、適切な筋肉量に戻すことができます。 腸トレには、体の内側から腸を鍛えるものと、外側から鍛えるものがあります。
内側からの腸トレは、水溶性の食物繊維と、乳酸菌を意識して摂ることで、腸の動きを促進するものです。 食物繊維には、水溶性と不溶性がありますが、ペラペラ腸の人がいきなり不溶性を摂るのはよくありません。 不溶性は便のカサを増やすので、腸の動きの悪い人には、腸への負担が大きくなり過ぎるからです。 一方、水溶性が便の水分を保持し、便に粘着を持たせることで、腸を動かしやすくします。 ですから、ペラペラ腸の人は、最初は水溶性の食物繊維を多く含むリンゴやキウィなどの果物、納豆やオクラ、海藻類などを 積極的に摂るようにしましょう。 腸が動くようになり、お通じがよくなってきたら、不溶性の食物繊維も摂って、便のカサを増やすようにしてください。 ペラペラ腸の人は、悪玉菌が多いので、善玉菌(乳酸菌)を優位にして腸の動きを活発にしてやることも重要です。 乳酸菌の仲間のビフィズス菌は、比較的大腸に長く棲めますから、ビフィズス菌を多く含むヨーグルトや飲料水などを 選んでとるとよいでしょう。
外からの腸トレは、散歩が一番です。1万歩歩くと、便秘しないと言われています。 歩くことによって腸が動き、便が進みやすくなるのです。 腸の運動は、自律神経の一つであり、休息時に働く副交感神経に支配されています。 副交感神経を高めるには、「ゆっくり散歩」がいいでしょう。 反対に激しいスポーツは腸の動きを止めてしまうので、ペラペラ腸の人には不向きです。 しかし、膝や腰が悪くて、歩けないという人には、「腸のゴロ寝運動」をお勧めします。 床や布団の上にあおむけになり、ゴロンゴロンと左右に転がるだけです。 寝る前に、左右に10回くらい転がるといいでしょう。できる範囲で体を左右に傾けるだけでもかまいません。 ゴロゴロ転がると、滞留した便が動きやすくなり、ペラペラ腸のいい運動になります。