【質問】「強皮症」と診断されました

2年ほど前から、両手の指が太くなってきて夜中から朝方にかけてこわばり、握るのが困難になりました。 同じころから指先が白くなるレイノー現象も出ています。 先日、大学病院で受けた検査で、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体が陽性で 「強皮症」と診断されました。 今は初期ということで薬もないのですが、この先どうなるのか不安です。 日常生活の注意点なども教えてください。
●58歳・女性


【答】

「強皮症」は膠原病の一種で、皮膚や内臓の硬化(線維化)、手足の末端や内臓の血行障害(循環障害)が特徴です。 40歳代以降の中年女性に起こりやすい病気です。 初期症状として多いのが、寒冷などによって指が白⇒紫⇒赤の3段階に変色する「レイノー現象」、手指のむくみ(腫脹)やこわばりです。 この病気で重要なのは、症状や進行のスピードの個人差がとても大きいことです。 レイノー現象と手指腫脹だけで一生過ごされている人がいる一方で、発症数か月のうちに全身の皮膚が硬くなり、 腎臓や心臓に病変が進んで命の危険にさらされる人もいます。 そこで、診断時に将来どのような経過をたどるかを正確に予測し、それに基づいた治療を受けることが大切です。 そのため、強皮症の治療経験豊富な専門の医師への受診をお勧めします。

特に皮膚硬化が全身に広がる「びまん皮膚硬化症」では、レイノー現象と手指腫脹の出現時期がほぼ同時、手指が曲がって握りづらい、 血液検査で抗トポイソメラーゼⅠ(Scl-70)抗体や抗RNAポリメラーゼⅢ抗体が陽性などの特徴が発症早期に見られます。 抗RNAポリメラーゼⅢ抗体が陽性の場合、90%近くの人で1年以内に皮膚硬化が全身に広がり、20%程度の人で急激に血圧が上昇して腎不全を来す 「腎クリーゼ」を発症します。 また、10人に1~2人は体の中に癌が潜んでいるため、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体陽性が判明した場合は、癌検診が欠かせません。

現時点で強皮症を根本的に治す治療法はありません。ただし、びまん皮膚硬化型でも早期に治療を開始すれば、多くの場合、その後の進行を抑えることが可能です。 通常は免疫抑制薬を用いますが、最近は関節リウマチなど他の病気の治療に用いられる生物学的製剤など分子標的薬の効果もわかってきました。 併せて、レイノー現象には血管拡張薬、胸やけにはプロトンポンプ阻害薬など症状に応じた薬も使います。

日常生活では、レイノー現象を防ぐために、料理や洗濯などの際にはできるだけお湯を使い、手足の保温に努めましょう。 また、喫煙は血行や肺症状を悪化させるため禁煙が必須です。 かつては有効な治療法がないとされてきましたが、最近は研究が進み、有効な治療薬の候補が次々に見付かっています。 専門の医師の下で、適切な治療を受けることが大切です。

(この答えは、2017年7月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)