【質問】歩くとふらふらする原因は?

半年ほど前から平衡感覚が鈍くなり、歩くとフラフラするので、買い物に行くときはカートを引いています。 また、人と話すときに言葉がなかなか出てこないこともあります。 病院で検査を受けたところ、「脳は年相応に委縮しているが、特別悪いところはない」と言われました。 ただ、歩くときや人と話すときには、かなり緊張します。何とか原因がわからないものかと日夜苦しんでいます。
●84歳・女性


【答】

高齢になると、ふらつきを訴える方が増えてきます。ただ、その原因は多岐にわたり、診断や治療が難しいことも多いのが実情です。 ふらつきの原因で多いのは、耳の病気からくるものです。 三半規管内の浮遊物によって生じる 「良性発作性頭位めまい症」は、 めまい疾患の中で最も多く、頭を動かしたときに数秒~1分程度のめまいが起こります。 ただ、ご質問者の場合、そこまで明らかなめまい症状ではないようなので、これには当てはまらない可能性もあります。 また、中枢・末梢前庭系の加齢変化によって起こるめまい(老人性平衡障害)も考えられます。 この場合、脳血管障害がないことが前提になりますが、現時点でよい治療法はなく、治療が難しいことが多いです。 次に考えるべきは、薬剤性のめまいです。睡眠薬や抗鬱薬、降圧薬などを服用している場合には、担当医と相談が必要です。

ご質問者の場合、脳の検査では委縮以外に異常はなかったということですが、 MRI画像でラクナ梗塞や白質病変が見られる場合は、 脳の血流低下によりふらつきが生じることがあります。また、家庭で血圧を測定し、高い場合は適切な治療を受ける必要があります。 不整脈や心臓弁膜症などもふらつきの原因になるので、 心臓の病気についても一度調べてもらうとよいでしょう。 そのほか、ご質問者は、歩くときや人と話すときに、緊張するということから、自律神経障害、 不安神経症鬱病、などが原因でふらつきを感じている可能性もあります。 また、加齢に伴う全般的な体の衰えをフレイル(虚弱)といいますが、 筋肉量や筋力の低下するサルコペニアを合併して、ふらつく場合もあります。 この場合は適切な栄養補充と運動療法により、ふらつきの改善が認められる場合もあります。

いずれにせよ、ふらつきの原因について系統的に診てもらえる医師を受診して相談していただくのが一番です。 そして、ある程度の改善が可能な症状と、そのまま付き合っていく必要のある症状を区別し、改善が可能な病態がある場合は、 リハビリテーションや薬物治療を受けてください。 例えば、国立長寿医療センターでは、 めまい・ふらつきに対する包括的な評価とともに、 ロボットを用いたバランス機能改善のリハビリテーションも行っています。

(この答えは、2019年4月現在のものです。医療は日々進歩しているので、後日変わることもあるのでご了承ください。)