良性発作性頭位めまい症

めまいを訴えて耳鼻咽喉科の外来を受診する人の中で最も多いのが三半規管内の耳石がリンパ液の流れを乱す 良性発作性頭位めまい症です。 グルグル回るめまいの多くは、「良性発作性頭位めまい症」です。 医師が行う治療法のほかに、患者さん自身ができる運動療法も紹介します。


■良性発作性頭位めまい症とは?

頭を動かしたときに短いめまいが起こる

めまいを起こす病気の中で最も多いのが、三半規管の異常で起こる「良性発作性頭位めまい症」です。 良性発作性頭位めまい症という病名の”良性”とは、危険な脳の病気ではないという意味です。 耳の奥の内耳に原因がある病気で、基本的には命に関わる病気ではありません。 ただ、発作的に回転性のめまいが起こり、それがたびたび繰り返されるので、多くの人が不安や不安感を覚えます。 このめまいは、じっとしているときには起こらないのですが、頭を動かして、頭がある特定の位置に来ると、めまいが起こるのが特徴です。 めまいが起こる頭の位置は、人によって異なります。 寝返りを打った時や、寝た姿勢から起き上がった時に、めまいが起こる人がいます。 目薬をさそうとしたときなど、上を向いた時にめまいが起こる人もいれば、逆に髪を洗う時や料理を作る時など、 下を向いた時にめまいが起こる人もいます。 また、美容室でシャンプーをした後や、歯科で治療を受けた後など、体を起こす時にめまいが起こって受診する人が多くいます。

この病気のめまい発作は持続時間が短いのが特徴で、30秒~2分程度です。 めまいの種類は、目が回るような回転性のめまいで、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。 ただし、メニエール病のように耳鳴りや難聴などの聞こえの不調が起こることはありません。 発作の持続期間が短くても、繰り返し起こるような場合には、医療機関を受診することをお勧めします。 良性発作性頭位めまい症は命に関わらない病気ですが、小脳などに原因がある「中枢性めまい」など、 命に関わりうる病気が原因でめまいを起こしている場合もあるので、確認しておく方がよいのです。


■めまいが起こる仕組み

剥がれた「耳石」が三半規管に入り込み、めまいが起こる

良性発作性頭位めまい症のめまい発作は、以下のようにして起こります。
三半規管は”「リンパ液」で満たされた容器”の中にあります。 内耳にある三半規管の根本あたりには、重力や体の向きなどを感知する「耳石器」という器官があり、 耳石器には、「耳石」という非常に細かいカルシウムでできた結晶があります。 この耳石が剥がれて塊となり、三半規管に入り込むと、良性発作性頭位めまい症が引き起こされます。 耳石が三半規管に入り三半規管内を移動すると、中のリンパ液の流れが乱され”センサー”が誤作動を起こしてしまいます。 そのため、回転していると錯覚して、ぐるぐるめまいが起こるのです。 耳石は、頭を特定の位置に動かしたときに三半規管に移動しやすくなります。 例えば、洗濯物を干すために上を向くと頭が反って、耳石が三半規管に入り込みやすい状態になります。 美容室などで頭を反らして洗髪してもらう動作、高いところのものを取る動作、あおむけの状態から起き上がる動作でも耳石が三半規管に移動しやすくなります。


耳石の働き


●原因

三半規管内の耳石がリンパ液の流れを乱す

三半規管は、耳石器と共に、”「リンパ液」で満たされた容器”の中にあります。 耳石器には、「耳石」という非常に細かいカルシウムでできた結晶があります。 その耳石器が剥がれて塊となり、三半規管に入り込むと、良性発作性頭位めまい症が引き起こされます。 耳石が三半規管に入り三半規管内を移動すると、中のリンパ液の流れが乱されます。そのため、回転していると錯覚して、ぐるぐる回るめまいが起こるのです。 耳石は、頭を特定の位置に動かしたときに三半規管に移動しやすくなります。 例えば、洗濯物を干すために上を向くと頭が反って、耳石が三半規管に入り込みやすい状態になります。 美容室などで頭を反らして洗髪してもらう動作、高いところのものを取る動作、あおむけの状態から起き上がる動作でも、 耳石が三半規管に移動しやすくなります。

耳石がどうして剥がれてしまうのかについては、はっきりとしたことはわかっていません。 ただ、良性発作性頭位めまい症が60歳~70歳代の女性に多いことから、加齢や女性ホルモンの分泌が関係しているのではないかと考えられています。 閉経して女性ホルモンの分泌が低下すると、 カルシウムの代謝に影響が現れ、 耳石が剥がれやすくなるのではないかともいわれています。


●高齢の女性は特に注意が必要

良性発作性頭位めまい症は、高齢の女性に比較的多く起こります。その原因の1つとして、耳石を作るカルシウムの代謝が低下し、 耳石が耳石器から剥がれやすくなることが考えられます。 ふだん、頭をあまり動かさずに、じっとしている人も注意が必要です。頭をあまり動かさずにいると、耳石器から剥がれた耳石がたまって塊ができやすくなります。 その耳石の塊が、良性発作性頭位めまい症の引き金になります。 頭を強く打った場合も、衝撃で耳石が剥がれ三半規管に入り、良性発作性頭位めまい症を起こすことがあります。


■良性発作性頭位めまい症の検査

頭を動かしたときの眼球の動きを調べる

良性発作性頭位めまい症を診断するためには、問診と聴力検査などの一般的な検査のほかに、 頭位眼振検査頭位変換眼振検査を行う必要があります。 どちらの検査もフレンツェル眼鏡を使って行います。 頭位眼振検査とは、仰向けの状態で、頭を動かし、その時の眼球の動きを調べる検査です。 頭位変換眼振検査は、「座った姿勢から素早く仰向けになって頭を後ろに下げ、また上半身を起こして頭を上げる」という動作を行って、 この時の眼球の動きを調べる検査です。 良性発作性頭位めまい症は、頭を動かすことでめまい発作が起こるため、これらの検査で頭がどのような位置になったときに異常が起こるかを調べます。


■良性発作性頭位めまい症の治療

三半規管に入り込んだ耳石を元の位置(耳石器)に戻したり、薬で症状を和らげる

良性発作性頭位めまい症は命に関わるような病気ではありませんが、めまい発作が起こるたびに辛さを感じたり、不快な思いをしたりすることになるので、 耳鼻咽喉科で治療を受けた方がよいでしょう。主な治療法は、浮遊耳石置換法、薬物療法、運動療法の3つです。

浮遊耳石置換法は、良性発作性頭位めまい症と診断がついた場合、最初に行われる治療法です。 患者さんの頭や体を動かすことで、三半規管に入り込んでいる耳石を耳石器に戻し、めまいが起こらないようにします。 患者さんは「フレンツェル眼鏡」という特殊な眼鏡をかけ、眼球の動きがよくわかるようにします。 フレンツェル眼鏡をかけることで、患者さんの目を拡大して観察することができます。 めまいが起こっているときには、眼球が異常な働きをする「眼振」という現象が現れます。 眼振の起こり方によって耳石の位置を確認できるので、眼振を観察しながら患者さんの頭を動かして、耳石が耳石器に戻ったかどうかを眼振の状態から判断し、 三半規管内にある耳石をもとの場所に戻してやります。耳石が三半規管から出てしまえば、めまいは治まります。 浮遊耳石置換法は医師が行う治療法であり、患者さんが自分で行うことはしないでください。

それ以外に、薬物療法が行われる場合もあります。薬でめまいの原因を取り除くことはできませんが、つらい症状を和らげる効果が期待できます。 薬は患者さんの症状に合わせて使用されます。吐き気や嘔吐でつらい場合は、「制吐薬」が用いられますし、 めまいがひどくて不安な時には、「抗不安薬」「抗めまい薬」が使われます。

運動療法は、患者さんが自分で行うものです。頭や体を左右に動かすことで、耳石が三半規管にとどまらないようにするのです。 運動療法を行うことで症状が和らぎ、再発の予防にもなります。 身体を倒す運動は、ベッドや布団の上で行います。3回を1セットとして、寝る前に1セット行うようにします。 頭の向きを変える運動も、寝る前に行います。 このような運動を寝る前に行うことで、寝返りを打った時や、起き上がったときなどに、めまいが起こりにくくなります。 最初は頭の位置を変えるだけでめまいが起こることもありますが、運動を継続しているうちに、徐々にめまいの症状が軽くなっていきます。 良性発作性頭位めまい症のある人は日常的に体をよく動かすことが、めまい発作の予防に繋がります。 卓球などは、高齢の方でも安全に頭を動かすことができる運動としてお勧めです。


■自分でできる対策

頭を動かす体操を行ったり、寝る姿勢を変える

医療機関で良性発作性頭位めまい症と診断されている場合は、自分でできる対策もあります。 その1つが、頭を動かして耳石が1か所にたまらないようにする体操です。 仰向けに寝て、頭部を右に向け10秒間保ちます。左右交互に10回程度頭を動かします。これを1日数回行いましょう。 頭の位置が低いと、三半規管に耳石が入り込みやすくなります。高めの枕を使ったり、寝る姿勢を変えて、耳石が三半規管に入りにくくしてやるとよいでしょう。 ふだんから、めまいの起こる位置に頭を動かさないことも大切です。

良性発作性頭位めまい症は、耳石が自然に消えたり、散ったりして1か月程度でよくなる場合がほとんどです。 再発しやすいのですが、良性で治りやすい病気なので、あまり心配することはありません。


良性発作性頭位めまい症の治療