味覚障害

味覚障害になると、食事を美味しく感じなくなるだけでなく、健康に害が及ぶことがあります。 味がわかりにくくなったと思ったら、早めに専門医などを受診しましょう。


■味覚障害とは?

味が薄く感じる、わからないなど、味覚に障害が起こること

何を食べても味が薄く感じたり、いつも通りに料理をしているのに、家族から「味付けが濃くなった」などと言われることが続くと、 味覚が変わってしまったのかと不安になります。本人が味覚の低下を自覚し、生活に不便を感じている状態を味覚障害といいます。 味がわからなくなると、食欲低下から栄養不足に陥ったり、味付けが濃くなることで塩分や糖分を摂り過ぎるなどの栄養障害を招く危険性もあります。 味覚障害を訴える人の数は、1990年の調査では約14万人でしたが、2003年の調査では約24万人に増加しています。 一般的に味覚は加齢とともに低下するため、味覚障害の増加の背景には、社会の高齢化の影響があると考えられます。


■美味しさを感じる仕組み

味覚や触覚、嗅覚などのさまざまな要素が関係している

食べ物を口に入れると、舌の表面にある乳頭という細かい突起の中の味蕾がセンサーの役割を果たし、味を感じます。 味蕾の中には味を感じる味細胞があり、甘さや塩辛さを感じ取っています。 味蕾で感知された味は、味神経を介して脳の中枢神経に伝えられます。 同時に、硬さや舌触りなどは口の中の触覚で、色や形は視覚で、噛んだ時の音は聴覚で、食べ物の香りは嗅覚で、 というように、五感で集めた情報が脳の前頭葉で統合されて、”美味しさ”を感じるのです。 つまり、「食べ物を味わう」ということは、いろいろな要素を総動員した結果なのです。 「味覚障害」はこの五感や環境のどこかに問題があると起こるため、さまざまな要素が重なり合っていることも少なくありません。

美味しさを感じる仕組み


■味覚障害の原因

加齢や亜鉛の欠乏などが原因になることも

味覚障害の原因には、次のようなものがあります。

▼加齢
加齢に伴って、味蕾の中の味細胞は減少していきます。すると、味覚障害が起こりやすくなります。

▼亜鉛の欠乏
味細胞は新陳代謝によって新しい細胞と入れ替わります。 細胞の新陳代謝には、亜鉛が必要なため、 亜鉛が欠乏すると味覚障害が起こりやすくなると考えられています。 味覚障害のある人の約半数に亜鉛の欠乏があるとされています。

▼口腔内の乾燥
加齢によって唾液の分泌が減少して口の中が乾燥していたり、舌に炎症が起きていたり、舌苔(舌に付着した汚れ)が溜まっていたりすると、 味の成分が味蕾に伝わりにくくなります。

▼糖尿病
糖尿病の合併症で神経障害が起きていると、味を感じにくくなります。 また、糖尿病があると、口の中が乾燥しやすくなり、味蕾が働きにくくなります。

▼そのほかの病気
胃腸や肝臓、腎臓などに病気があると、亜鉛不足が起こり、味覚障害になることがあります。 また、アレルギー性鼻炎や鼻詰まりなどによって匂いがわからなくなると、味覚に異常がなくても味がわからなくなることがあります。

▼薬
薬の副作用で味覚障害が起こることもあります。亜鉛の吸収を抑制する作用や唾液を減少させる作用のある薬が該当します。 味覚障害に関する薬は200種類以上あります。

▼ストレス
ストレスなどが関係する心因性の味覚障害もあります。 実際にストレスやによって「味がわからなくなった」ということがあります。 中高年では、介護がその一因になることもよくあります。

■味覚障害の診断と予防

問診や味覚調査を行い、亜鉛摂取などの治療を行う

「味がわからなくなった」などと感じたら、耳鼻咽喉科を受診します。味覚障害を専門としている医療機関がよいでしょう。 歯科や内科の医師が味覚障害を診察していることもあるので、かかりつけ医に相談して、紹介してもらう方法もあります。

●検査

問診では、いつから症状があるのか、他の病気や薬の服用はないかなどが聞かれます。 視診では、口腔だけでなく耳や鼻、喉も観察します。 必要に応じて血液検査尿検査が行われ、肝臓や腎臓の病気の有無や、亜鉛不足について調べます。 味覚を調べる味覚検査には、次の2つの方法があります。 電気味覚検査では、舌に電極を当てて、どの部位がどの程度の味を感じられるのかを調べます。 紙ディスク法では、甘味、酸味、苦み、塩味の4つの味が付いた溶液を浸したろ紙を舌にのせて、味がわかるかどうかを調べます。 溶液は5段階の濃度があり、どの濃度で味を判別できたかによって、味覚障害の状態が判断されます。

●治療

治療では亜鉛を十分に摂取するよう指導されます。食品では牛肉やレバー、チーズなどの乳製品、牡蠣、カニなどの魚介類、干しシイタケ、 ワカメやヒジキなどの海藻類に亜鉛が多く含まれています。 亜鉛製剤が処方されたり、サプリメントを使うこともあります。 糖尿病やアレルギー性鼻炎などの病気が原因で味覚障害が起こっているときには、その治療が行われます。 ストレスや鬱が原因の場合には、精神科の医師と連携して抗うつ薬や 抗不安薬が処方されることもあります。これらの治療を行うと、味覚障害が改善することもあります。 持病などの治療薬が原因の場合は、その病気の担当医と相談をして、薬を変更したり、中止することもあります。 味覚障害があると食事が楽しくなくなったり、健康にも悪影響が及びます。 少しでも異常があれば、早めに受診しましょう。