アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎の1つが 花粉症ですが、スギ花粉症の新しい治療が登場し注目されています。


■アレルギー性鼻炎とは?

花粉やダニの増加や、体質の変化によって有病率が増加

アレルギー性鼻炎は、アレルギーの原因となる物質によって鼻の粘膜が刺激され、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりなどの症状が発作的に起こる病気です。 全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象に行われた調査によると、アレルギー性鼻炎の有病率は、1998年が30%だったのが、2008年には39%に増えていました。 スギ花粉症だけに限ると、1998年の有病率16%に対して2008年は27%と10ポイント以上増加しています。 アレルギー性鼻炎が増えている大きな原因として、スギ花粉の飛散量や室内のダニの増加が挙げられています。 日本人の体質の変化も関係していると考えられています。社会が非常に清潔になったことや、食生活が変化し、高タンパク・高脂肪の食事が増えたことで、 アレルギーを起こしやすい腸内細菌が増えたことなどがアレルギー反応を引き起こしやすくなった可能性として指摘されています。


■アレルギー性鼻炎のタイプ

原因によって2つのタイプに大別される

アレルギー性鼻炎は、通年性アレルギー性鼻炎季節性アレルギー性鼻炎に大きく分けられます。

▼通年性アレルギー性鼻炎
季節に関係なく一年中起こっているアレルギー性鼻炎です。 原因の多くは、室内のほこりであるハウスダストダニと考えられています。 カビペットの毛、ふけ、唾液なども原因になります。 ペットの唾液では、特に猫の唾液が感染して飛散すると、通年性アレルギー性鼻炎を起こすことがあります

▼季節性アレルギー性鼻炎
特定の季節に起こるアレルギー性鼻炎で、主に花粉によって起こるため 花粉症とも呼ばれます。 原因としてスギ花粉が知られていますが、季節や地域によってさまざまな種類の花粉が飛散します。 例えば、東北地方では、スギ花粉は3月に入ってから飛散し始めます。 北海道では、スギ花粉よりもシラカバ花粉が問題になっています。 近年は、河川敷などでよく見かけるカモガヤというイネ科の雑草が、激しい花粉症を起こすとして注目されています。 5月ころから花粉が飛散します。

■スギ花粉症の治療

スギ花粉に対する体質を変えていく

スギ花粉症では、舌下免疫療法という新しい治療が、2014年10月に健康保険の適用になりました。 舌下免疫療法は、スギ花粉の成分を含むエキスを体内に入れることによって、スギ花粉に対する体質を少しずつ変えていく治療で、 登録医のいる医療機関で行われます。最初は少量から初めて、2週間かけて量を増やしていき、3週目からは「維持量」といって一定のエキスを使います。 現在、治療効果が期待できるのはスギ花粉症に限られるので、事前に検査を行って原因を調べる必要があります。 原因が杉花粉と診断された場合は、舌下免疫療法を受けることが可能になります。

●治療開始は花粉の飛散が終わってから

舌下免疫療法の効果が現れるまでには、治療開始から2~3か月かかるとされています。 副作用は開始から1ヵ月以内に生じやすいといわれ、花粉が飛散する時期に始めると、特に起きやすいことも危惧されています。 そのため、花粉が飛散する時期や直前は、舌下免疫療法の開始を控えるよう推奨されています。 また、東日本や西日本では、スギ花粉の飛散が終わるころからヒノキ花粉が飛び始めます。 スギ花粉とヒノキ花粉は構造がよく似ているので、スギ花粉症の人の多くはヒノキ花粉でも症状が起こります。 舌下免疫療法を受ける場合は、関東地方ならヒノキ花粉の飛散が終了する6月以降がよいでしょう。

●治療は2~3年以上毎日続ける

スギ花粉エキスは液薬で、1日1回自分で舌の裏に投与し、2分間保持した後に飲み込みます。初回だけ医師の前で行いますが、2回目からは自分で行えます。 治療は少なくても2~3年以上毎日続ける必要がありますが、治療終了後は効果が長期間続くと期待されています。 治療効果の検討では、スギ花粉ピーク時に軽症で済んだ人の割合は、舌下免疫療法を1年半続けた群が55%と、偽薬を使った群の25%を上回りました。 また、製薬会社の治験では、治療を1年半続けた人のうち、症状の改善が見られず、効果がなかったとされた人も20%おり、 治療を受けた人のすべてに効果があるわけではありません。 スギ花粉症の原因物質を体内にれるため、不安もあると思います。 臨床試験や治験では、高い安全性が確認されていますが、副作用として口の中の腫れやかゆみなどが起こることがあります。 舌下免疫療法を受けている患者さんには、舌下免疫療法を行っていることや医療機関の電話番号などを記載したカードが交付され、携帯が義務付けられています。 重い副作用が起きた時などにも、すぐに対応できるようにするためです。

●ダニに対する舌下免疫療法もある

ダニが原因の通年性アレルギー性鼻炎でも、舌下免疫療法の試験が終了し、効果も確認されています。


■日常生活で行う対策

できるだけ花粉やダニなどに触れないようにする

アレルギー性鼻炎を改善するためには、日常生活での対策も欠かせません。

●通年性アレルギー性鼻炎の対策

特に重要なのがダニ対策で、次のようなことに注意します。

▼寝具のケア
ダニは布団などに住み着きます。ダニの死骸や糞も原因になるので、布団は丸洗いがお勧めです。 布団や枕のカバーは、生地の目が細かくてツルツルした、ダニが侵入しにくいものにするとよいでしょう。

▼掃除機のかけ方
特に、畳やカーペットはダニが付きやすいので、毎日丁寧に掃除機をかけます。 フローリングに替えれば、ダニが付きにくくなりますし、拭き掃除もしやすくなります。

▼湿度・温度設定
空気が乾燥すると鼻の粘膜が渇いて症状が起こりやすくなります。 冬の室内は、湿度50%、温度20~25℃に保ちます。

●季節性アレルギー性鼻炎の対策

外出するときは、帽子と花粉症用の眼鏡を装用し、花粉が付きにくくて落としやすい、表面が滑らかな素材のコートを着用しましょう。