声帯ポリープ

声がれ」が続く場合、声帯ポリープが原因の可能性があります。 症状が続く場合は、適切な治療を受けることが大切です。


■声帯ポリープとは?

喉に起こるトラブルの1つである「声帯ポリープ」は、声帯の縁にできる小さく隆起した良性の瘤のことです。 声帯は気管の入り口にあり、左右の声帯が閉じることで喉を塞ぐ構造になっています。息を吸うときには声帯が開きます。 声を出すときには声帯が閉じて、左右の声帯の間を空気が通過することで、声帯自体が1秒間に100~400回ほど細かく振動して声になります。 声帯ポリープができると、左右の声帯がしっかり閉じなくなります。 そのため、声帯の振動が不規則になり、声がれなど発声の障害が現れます。 声帯ポリープは声帯の片側にできることが多く、腫れる部位は声帯の一部に限られます。


■声帯ポリープの原因と症状

◆原因

風邪をひいたり、声の出し過ぎで声帯を酷使することなどが原因で、声帯に炎症が起こり、粘膜から出血することで声帯ポリープができると考えられています。 教師や歌手、アナウンサー、政治家など、日常的によく声を出す人は、声帯ポリープができることが多いので注意が必要です。 また、普段大きな声を出すことが少ない人が、運動会の応援などで急に大声を出したりすると、声帯ポリープができることがあります。 さらに、タバコを吸っていたり、多量の飲酒している人は、声帯に負担がかかり、声帯ポリープができやすくなります。 そのほか、睡眠不足も声帯ポリープのリスクになります。

◆症状

声帯ポリープの主な症状は「声がれ(嗄声:させい)」です。 そのほかに「発声時に違和感が強くなる」「発声が続かなくなる」などの症状もあります。


■診断のための検査

「声がれが10日以上続く」「15秒以上続けて声を出せない」に加え、「喉に異物感がある」場合は、声帯ポリープなど声帯の異常が疑われるので、 耳鼻咽喉科を受診することが勧められます。

◆初期のポリープの治療

通常、初期の声帯ポリープでは、数週間ほどできるだけ声を出さないようにし、「ステロイド薬」の飲み薬や吸入薬、 「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」の飲み薬を使って声帯の炎症を緩和します。 必要に応じて「去痰薬」「胃酸分泌抑制薬」の飲み薬を使うこともあります。 また、言語聴覚士から声の出し方の指導を受け、声帯に負担をかけない発声法を身に付けることで、ある程度は改善が期待できます。

◆手術

呼吸の妨げになるほどの大きな声帯ポリープがある場合や、喉頭癌が疑われる場合などには、早めに手術を行う必要があります。 また、初期の声帯ポリープの治療を、1~2ヵ月間続けても改善しない場合は、手術で声帯ポリープを切除し、声帯の機能の改善を図ることが検討されます。 患者さんがより早く治したいと希望する場合にも、手術が検討されます。

▼喉頭顕微鏡下手術(ラリンゴマイクロサージェリー)
声帯ポリープの手術は、声帯を手術用の顕微鏡で拡大して行う喉頭顕微鏡下手術が基本となります。 この手術は、全身麻酔をしたうえで行い、一般に2~5日間程度の入院が必要です。 持病があり全身麻酔での手術が難しい場合などには、ポリープの性状や患者さんの生活環境を考慮したうえで、局所麻酔をし、 喉頭ファイバースコープで切除することもあります。喉頭ファイバースコープでの切除が行える医療機関は限られています。 対応した設備や熟練した技術を持つ医師がいるなど、治療体制が整っている施設で行われています。 どちらの手術の場合でも、手術後は一時的に声帯が傷ついているため、3日間から1週間程度は声を出さずに安静にする「沈黙療法」が必要になります。 声を出すことが多い職業の人でも、手術後3~4週間で仕事への復帰が期待できます。 歌手などの場合は、手術後3週間程度は、歌うことを制限する場合があります。

■再発の予防

治療後も、声帯ポリープができた時と同じような、声帯に負担がかかる生活を送っていると、再発するリスクが高くなります。 そのため、日常生活を見直して、再発に努めましょう。


■声帯ポリープ以外にもある声がれが起こりやすい症状や病気

▼声帯の炎症
風邪をひいたり、声帯を酷使したために一時的に声帯に炎症が起こり、声帯全体が腫れることがあります。 一般に、声を出さずに安静にすることで、次第に腫れが治まり元の状態に戻ります。

▼声帯を開閉させる筋肉の萎縮
加齢とともに、声帯を開閉させる筋肉が委縮することがあります。

▼喉頭癌
1年間に全国で約5000人が新たに発症するとされています。喉頭の一部である声帯に癌が発生した場合には、声がれが現れることがあります。 喉頭癌の発症には喫煙飲酒が影響しており、特に、50歳代以上の男性に発症する危険性が高いです。

胸部大動脈瘤
声帯を開いたり閉じたりする神経が、胸部大動脈瘤によって圧迫され、その神経が麻痺すると、声がれが起こることがあります。 胸部大動脈瘤の25%は、声がれが原因で発見されています。

声帯ポリープの発症や再発の予防

「声帯ポリープ」の発症や再発の予防には、日常生活の見直しや発声トレーニングを実践することが勧められます。

■喉によい生活習慣とは?

声帯ポリープの発症や再発を予防するためには、次のようなことを心がけ、喉の乾燥を防ぎましょう。

◆鼻呼吸

「鼻呼吸」では、空気が鼻腔(鼻の中の空間)を通る間に適度な温度や湿度になり、喉を守ってくれます。 一方、「口呼吸」では、外気とほぼ同じ温度や湿度の空気が喉に入ってくるため、喉に負担がかかることがあります。 ガラスのコップを口に当てて普段通りに呼吸をすると、ガラスが曇る場合は、口呼吸が習慣になっている可能性があるので注意しましょう。

◆保湿

▼マスク
マスクを装着していると、自分自身の呼気に含まれる水分で喉を潤すことができます。 また、布製のマスク2枚の間に、水で濡らしたガーゼを挟んだ「手作り濡れマスク」にすると、保湿効果が期待できます。

▼加湿器や吸入器
加湿器を使って、室内を適度な湿度(40~60%)に保つことも大切です。 また、声をよく出した日や、教師や歌手など、喉をよく使う職業の人は、家庭用の喉専用スチーム吸入器などで加湿するのもよいでしょう。

▼水分補給
喉を乾燥から守るためには、こまめに水分を補給して体内の水分量を保つことも有効です。 ただし、コーヒーや緑茶などカフェインが含まれる飲み物や、利尿作用によって水分が体外に排出されやすくなったり、 胃酸の分泌を増やして胃食道逆流症(逆流動性食道炎) の原因になることがあるため、控えましょう。 その他に、喉の粘膜のむくみを防いだり、傷ついた声帯の修復を促すためには、十分な「睡眠」が欠かせません。 また、睡眠中に口呼吸になって喉が乾燥する場合は、マスクを装着して寝るのもよいでしょう。 声帯ポリープの発症や再発の予防には、発声トレーニングが役立ちます。

●声帯に負担をかける生活習慣

次のような生活習慣や行動を避けて、声帯に負担をかけないようにすることも大切です。

×長時間話し続ける
声帯に負担がかかるため、長時間話し続けることは避け、時には無言で相槌を打つなどして、声帯を休ませるようにします。

×大声を出す、叫ぶ
大声を出したり、叫んだりすると、左右の声帯が激しくぶつかり合います。 大きな声を出す必要があるときは、マイクやメガホンなどを使用するとよいでしょう。 また、会話するときは、目安として手が届く範囲にいる人に聞こえる程度の大きさの発声を意識しましょう。

×ささやき声
左右の声帯を開いて空気を通しながら発声するため、声帯が乾燥しやすくなって、声帯に負担をかけてしまいます。

×咳払い
咳払いをすると、声帯が擦れ合います。咳払いをしたくなったら、唾液を飲み込んだり、水を飲んでいがらっぽさを解消するようにします。

×前かがみの姿勢
前かがみで食事をすると胃が圧迫され、食事中や食後に胃酸が食道から喉に逆流しやすくなり、喉に負担がかかります。

×アルコール飲料の飲み過ぎ
アルコール飲料を飲み過ぎると、声帯の粘膜に直接負担がかかります。 また、脱水で喉が乾燥したり、酔って声が大きくなったりしがちです。

×甘いものや脂っこい食べ物、炭酸飲料の飲み過ぎ
これらを摂り過ぎると、過剰に分泌された胃酸が食道から喉に込み上げてきて、喉が焼けつくような感じになったり、咳払いをしやすくなったりします。 「飲みにくい」「喉のつかえ感など、喉の違和感」「胸やけ」「酸っぱいものが込み上げてくる」など、 胃食道逆流症が疑われる症状がある場合は、 早目に医療機関を受診することが勧められます。

×喫煙
喫煙は喉頭癌の発症に大きく関わっています。 タバコに含まれるタールなどが喉に蓄積され、癌を誘発します。 また、電子タバコは、喉に低音火傷が起こることがあります。

発声トレーニング