鼻血
『鼻血』はほとんどの場合心配はいりませんが、中には命に関わる危険な病気のサインであることもあります。
■鼻血の原因
空気が乾燥しやすい時期や季節の変わり目には、鼻血が出やすくなりますが、ほとんどの場合、心配はいりません。 しかし、中には何らかの病気が原因で鼻血が出やすくなったり止まりにくくなっている場合があるので注意が必要です。
●キーゼルバッハ部位からの出血
鼻腔(鼻の中の空洞)の内側の粘膜には、たくさんの血管が走っています。 特に鼻腔の入り口(鼻の穴)から1cm程度奥にある「キーゼルバッハ部位」には、血管がたくさん集まっており、 指でひっかくなどのちょっとした刺激で出血してしまいます。 鼻をぶつけたり、鼻をほじった際などにキーゼルバッハ部位の粘膜が傷つくと、鼻血が出ることがあります。 また、「慢性副鼻腔炎」や「アレルギー性鼻炎」などの鼻の病気があると、 鼻をいじったり、鼻をかむ回数が増えたりすることで、鼻血が出やすくなります。 これらの出血も、キーゼルバッハ部位からの出血であることがほとんどです。 一般に、キーゼルバッハ部位からの鼻血は、あまり心配なとされています。
●病気が原因となって起こる鼻血
何らかの病気や薬が原因で、鼻血が出やすくなることがあります。また、キーゼルバッハ部位より奥の粘膜の動脈から出血する鼻血は大変危険です。
- ▼高血圧や動脈硬化
- 高血圧や動脈硬化によって血管がもろくなると、 突然、鼻の粘膜の動脈から出血することがあります。この場合は、かなりの量の出血があり、また止まりにくいため、血液が喉にも流れ込んでしまい、 誤嚥や窒息が起こる危険性があります。
- ▼肝臓・腎臓・血液の病気
- 肝臓・腎臓・血液の病気があると、血液中の出血を止める成分を作る働きが低下するため、鼻血が出たり、止まりにくくなったりすることがあります。 キーゼルバッハ部位からの出血がほとんどですが、歯肉(歯茎)などほかの部位からも出血する場合があります。
- ▼抗凝固薬や抗血小板薬の服用
- 心筋梗塞や 脳梗塞などの治療や予防のために、 血小板をできにくくする抗凝固薬や抗血小板薬を使っている場合、鼻血が出て止まりにくくなることがあります。
- ▼鼻の腫瘍
- 鼻に腫瘍がある場合、腫瘍から出血し、鼻血が繰り返し起こることがあります。
- ▼オスラー病
- オスラー病とは、血管がもろくなる遺伝性の病気で、国の指定難病の1つです。 オスラー病を発症すると、鼻だけでなく、肺や脳などの血管からも出血することがあります。
■鼻血の止血法
鼻血が出ると、突然の出血で慌ててしまうかもしれませんが、落ち着いて適切に対処することが大切です。
◆正しい止血法
鼻血が出た時は、まずは気持ちを落ち着かせて椅子などに座ります。 顔を少しうつむけて、出血している側の小鼻(鼻の横の、膨らんでいるところ)を、人差し指など1本の指で5分間ほど押さえ続けます。 5分経ったら小鼻から指を離して、止血できているかどうかを確認します。 鼻血が止まっていない場合は、もう一度小鼻を5分間ほど押さえます。 キーゼルバッハ部位からの出血であれば、ほとんどの場合、小鼻を押さえることで鼻血は止まります。
◆誤った止血法に注意
- ▼ティッシュペーパーなどを鼻に詰める
- ティッシュペーパーなどを詰めてもそれに血液が染み込むだけで、止血することはできません。 さらに粘膜を傷つけてしまい、傷口を広げてしまうこともあります。 また、出血が止まったとしても、詰めたものを鼻から取り出すときに、かさぶたが剥がれてしまい、再び出血する恐れがあります。
- ▼上を向く・仰向けに寝る
- 鼻から鼻血が出てこないようにしようと、上を向いたり、仰向けに寝たりすると、鼻血が鼻腔から喉に流れていくため、 出血が多い場合には血液を飲み込んでしまいます。 血液は飲んでも毒ではありませんが、血液中に含まれる鉄分が胃で酸化すると、嘔吐しやすくなります。 その結果、嘔吐した物で窒息を起こすと、命に関わることもあります。
- ▼首の後ろ側をたたく
- 首の後ろ側をこぶしなどでたたいても、止血の効果がないばかりか、かえって出血を促してしまうことがあります。
- ▼鼻を冷やす
- 氷などを使って鼻を冷やすと、鼻血が止まるといわれることがありますが、実際にはそのような効果はありません。
- ▼鼻をかむ
- 鼻血が出ているときに、鼻をかんで血液を鼻腔から出そうとすると、かえって出血が止まらなくなってしまうことがあるため、避けてください。
●医療機関で行われる止血処置
出血した側の小鼻を10分間以上押さえても出血が止まらない場合や、出血量が多く、血液が喉の奥に流れ込んでいく感覚がする場合、 顔が青ざめている場合などは、速やかに医療機関を受診し、適切な止血処置を受けてください。 医療機関では、まず出血している部位を調べるために、鼻腔内を直接、あるいは内視鏡を使って観察します。 次に、血管を収縮させる薬剤を染み込ませた細長いガーゼや、血液を吸収することで膨らむ特殊なスポンジを、出血した側の鼻に詰めます。 ガーゼやスポンジを詰めたら、患者さんは少しうつむいて、指で小鼻を押さえます。 こうした方法で、出血が止まらない場合は、内視鏡を使って出血している部位を確認し、出血している血管を電気メスなどで焼き固め、止血します。