ラクナ梗塞

脳の細い血管が詰まるラクナ梗塞は、症状が現れにくい脳梗塞ですが、 多発すると認知症が起こることもあります。


■脳の細い血管で起こるラクナ脳梗塞

心房細動の原因 ラクナ梗塞は、脳の深い場所に発生する直径15mm以下の小さな脳梗塞です。 脳の奥には、太い血管から枝分かれした穿通枝(せんつうし)という細い血管があります。 この穿通枝の先(抹消)が詰まるのがラクナ梗塞です。特に高齢者や男性に多く発症する傾向があります。 脳の太い血管が詰まる脳梗塞の場合は、脳の神経細胞が広範囲にダメージを受けるため、体の麻痺や言語障害など様々な症状が現れます。 ラクナ梗塞は、ダメージを受ける範囲が小さいため症状が現れないことが多く、「無症候性脳梗塞」とも呼ばれています。 そのため、ラクナ梗塞が起こっていても気付かないことがよくあります。 ただし、症状が現れなくても安心はできません。そのままにしておくと、本格的な脳梗塞や脳出血を発症したり、 認知症に繋がるリスクが高くなります。 ラクナ梗塞を引き起こす原因として注目されているのが高血圧です。 高血圧が長期間続くと、穿通枝の末梢で動脈硬化が進行し、ラクナ梗塞を発症しやすくなります。 また、2型糖尿病がある人の3~6割に、 慢性腎臓病がある人の約4割に、ラクナ梗塞が起こっていたとの報告があります。

▼MRI検査で見つかる
ラクナ梗塞は、MRI検査で見つけることができます。 人間ドックなどでMRI検査を受けて、偶然、ラクナ梗塞が発見されるケースが多くあります。 ラクナ梗塞の原因(高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病、過度の飲酒、運動不足、喫煙、肥満、ストレス、加齢、家族歴) に心当たりがある場合は、MRI検査を受けてもよいかもしれません。

■血圧を管理してラクナ梗塞の悪化を防ぐ

ラクナ梗塞の対策で重要なのが、血圧の管理です。例えば、上の血圧が120mmHg未満で下の血圧が80mmHg未満の場合に比べて、 上の血圧が140mmHg以上で下の血圧が90mmHg以上だと、ラクナ梗塞を含む脳卒中の発症率は約3倍になることがわかっています(下のグラフ参照)。 血圧を管理するためには、まず食生活に注意して、 食塩の摂取量を減らすようにします。 禁煙し、お酒を多く飲む習慣がある場合は控えます。 さらに、ウォーキングのような有酸素運動を1日に30分間程度続けて行えば、 血圧を下げる効果が期待できます。降圧薬が必要とされた場合は、きちんと服用しましょう。 血圧を毎日正しく測ることも大切です。家庭で測る血圧(家庭血圧)は正常でも、 医療機関で測ると緊張して血圧が高くなることがあり、これを白衣高血圧といいます。 血圧の総合的な状態をより正しく反映しているのは家庭血圧のほうなので、こちらの方が重視されます。


心房細動の原因

■ラクナ梗塞の多発で血管性認知症が起こることも

認知症で最も多いのは、「アルツハイマー型認知症」です。 特殊なたんぱく質が脳の神経細胞を破壊するために起こると考えられています。 その次に多いのが、「脳血管性認知症」です。 ラクナ梗塞の多発などによって脳の血管が詰まると、脳の神経細胞に必要な酸素と栄養が送られなくなり、脳がダメージを受けて、認知機能に障害が起こるのです。 アルツハイマー型認知症は、認知機能が徐々に低下していき、それに伴って症状の程度も進行していきます。 それに対して脳血管性認知症は、症状が”まだら”に現れます。そのため”まだら認知症”ともいわれています。 例えば、興味のあることはよく覚えていても、興味のないことは全く覚えていないということがあります。 また、1日の中でも調子のよいときと悪いときがあり、朝は自分で着替えられず、話しかけても反応しなかったのに、 夕方になると自分で着替えられ、会話もできるということがよく起こります。 脳血管性認知症の症状には、記憶障害以外に、歩行障害や転倒、頻尿や尿意切迫、 体の麻痺、些細なことでもすぐ感情が表に出る「感情失禁」などがあります。 早期発見には、こうした症状を見逃さないことが大切です。 脳血管性認知症と診断された場合は、ラクナ梗塞がこれ以上起こるのを防ぐために血圧をしっかり管理しましょう。