もやもや病

網のように細かい異常な血管網が生じるもやもや病。 この病気があると 脳梗塞や脳出血が起こる危険性が高くなります。


■脳の血管の先が詰まって異常な血管網ができてしまう

内頚動脈は、心臓から脳に血液を送る、首の左右に伸びた太い血管で、脳に到達する終末部は細くなっています。 もやもや病は、この内頚動脈の終末部が一層細くなって、最終的に詰まってしまう病気です。 終末部が細くなると、その先の血流が悪くなります。 その状態が続くと、血流を補うために、周囲に毛細血管が網目状に発達して、本来あるはずのない異常な血管網ができてしまいます。 もやもや病は、この異常な血管網の発達が不十分で詰まってしまい血流が不足する虚血型と、 血管網に負担がかかって破れる出血型があります。

もやもや病の症状 もやもや病の症状


●もやもや病の症状

▼虚血型
内頚動脈の終末部が細くなり、異常な血管が詰まり、血流が不足する虚血型は子供に多いです。 熱い食べ物を冷ますために「フーっ」と息を吹きかける動作などが引き金となって脳の血流不足が起こり、 失神や頭痛などの症状が現れることがあります。
・失神
・頭痛
・脱力発作(身体に力が入らなくなる)
・片麻痺(身体の左右どちらかに麻痺が起こる)
・不随意運動(自分の意思と関係なく身体が動く)
・痙攣
・言葉が不自由になる(失語症)
・記憶力の低下

▼出血型
異常な血管網が破れると、脳出血が起こったときと同じように、頭痛や失神、体の片側の手足の麻痺などの症状が突然現れることがあります。
・突然の頭痛
・意識障害
・片麻痺

もやもや病の症状


■子供や女性に多く、原因はわかっていない

国内には、2013(平成25)年の時点で、約1万6000人の患者さんがいます。 厚生労働省の指定難病と小児性慢性特定疾病に指定されています。 10歳以下の子供に最も多く発生し、次いで30~40歳代に多く発症します。 子供では虚血型がほとんどで、大人では虚血型と出血型が約半数ずつです。 男女比は、男性1に対して女性は1.8~2.0と、女性に多く起こります。 最近の研究によって、もやもや病の発症には遺伝子が関係しているということが報告されていますが、原因はまだはっきりしていません。


■画像検査で脳血管や血流の状態を調べる

もやもや病は、脳梗塞や脳出血を招く危険があります。 症状に気付いたら、脳神経内科や脳神経外科などを受診しましょう。 診断のためには、次のような検査が行われます。

▼MRI検査・MRA検査
MRI検査では、脳梗塞や脳出血の有無を調べることができます。 MRA検査(下写真参照)は、脳の血管の状態をチェックできます。

▼脳血管造影検査
脚の付け根の動脈から脳の血管にカテーテルを送り込み、造影剤を注入してエックス線で撮影します。 脳の血管の狭窄や閉塞、異常な血管網の状態を詳しく調べることができます。 この検査は入院して行われます。検査結果によって、もやもや病の治療方針が決まります。

▼脳血流検査
腕の静脈から放射性医薬品を注入し、専用のカメラで頭部を撮影します。 放射性医薬品の分布を調べることで、脳のどの部分の血流が、どの程度委縮しているかがわかります。 放射性医薬品の体への影響はほとんどありません。出血型の場合も、血流不足が起こっていることが多いため、この検査が必要になります。

もやもや病の症状のMRA検査


■脳の血流を改善する治療が行われる

もやもや病と診断された場合は、脳梗塞や脳出血を防ぐことが重要になります。 そのために、薬や手術で脳の血流を改善する治療が行われます。 薬による治療は、血流をよくする抗血小板薬が使われます。 症状で、痙攣がある場合は抗痙攣薬が使われ、必要に応じて鎮痛薬や降圧薬なども使われます。 手術は、不足する脳の血流を補うために、新たな血液の通り道を作る血行再建術が行われます。 血行再建術には、直接バイパス術と間接バイパス術があります。

脳の血流を改善する治療