腹腔鏡下手術
「腹腔鏡」は内視鏡の一種で、腹部に小さな孔を開け、そこからお腹の中に挿入して使います。 『腹腔鏡下手術』は、主に「大腸がん」「虫垂炎」「良性腫瘍」に対して行われます。
■腹腔鏡下手術
「腹腔鏡」は内視鏡の一種で、腹部に小さな孔を開け、そこからお腹の中に挿入して使います。 『腹腔鏡下手術』は、主に「大腸がん」「虫垂炎」「良性腫瘍」に対して行われます。 一般に、病気が初期の段階であれば「内視鏡的切除」、ある程度進行している場合は「開腹手術」、 その中間であれば「腹腔鏡下手術」が行われます。ただし、どの段階まで「腹腔鏡下手術」が行われるかの基準は、 医師や医療機関によって異なります。
●「腹腔鏡下手術」が行われる対象
大腸がんに対して「腹腔鏡下手術」が施術される場合には、早期がんと一部の進行がんが対象になります。 大腸壁は、内側から「粘膜」「粘膜下層」「固有筋層」「漿膜」の4層に大別されます。 一般に、がんが粘膜や粘膜下層の浅いところにとどまっていれば、内視鏡的切除が行われます。 しかし、がんが深いところまで達していて、リンパ節まで切除しなければならない場合は、開腹手術が必要です。 そしてその中間、がんが粘膜下層より下に広がっているものの、リンパ節の切除範囲が比較的小さい場合には、 腹腔鏡下手術が選択されることが多くなってきています。 ただし、腹腔鏡下手術の基準は、医師や医療機関によって異なります。
▼「腹腔鏡下手術」の流れ
腹腔鏡の先端は直径が0.5~1cmほどで、自在に動かせるようになっています。 腹部に0.5~1cmほどの小さな孔を開けて腹腔鏡を挿入し、手術操作がしやすいように、 炭酸ガスを注入してお腹を膨らませます。 さらに、腹部に開けた数ヶ所の孔からそれぞれ手術器具を挿入して、腹腔鏡が写し出す映像を見ながら、 大腸をリンパ節ごと周囲の組織から剥がします。十分に剥がしたら、3~5cmほどお腹を切開して、 そこからがんのある部位の大腸を体外に取り出し、がんを切除します。 その後、残った大腸をつなげて体内に戻します。
●「腹腔鏡下手術」の特徴
「腹腔鏡下手術」は、開腹手術に比べて「手術の後が小さい」「手術後の回復が早い」 「入院期間が短い」などのメリットがあります。ただし、手術時間は開腹手術よりも長くなります。 モニター画面で腹腔鏡による映像を見ながら行うため、手術操作が複雑になるのです。 治療効果については、海外の調査では、「腹腔鏡下手術」は開腹手術と同程度だと認められています。
▼「腹腔鏡下手術」技術に格差
「腹腔鏡下手術」は、患者にやさしい治療といえますが、大腸の病気に関しては歴史が浅く、 まだ、標準的な治療とはいえません。また、従来の手術とは違った技術が必要とされるので、 医師や医療機関によって技術に格差があるのも事実です。そこで、日本内視鏡外科学会などでは、 技術認定制度を設けて各地で講習会を行うなど、技術向上のための取り組みを行っています。
▼「腹腔鏡下手術」に適さない人
「腹腔鏡下手術」は、腹部に癒着があると手術操作が難しくなるため、 「腹部の手術を受けたことがある人」には向いていません。 また、腹腔を膨らませる際に心臓や肺に負担をかけるため、「心臓や肺の病気のある人」も同様です。 「腹腔鏡下手術」を希望する場合は、その医療機関での手術件数や、担当医の手術経験も聞いておくとよいでしょう。 不安なときは他の医療機関を受診して、セカンドオピニオンを求めるのも1つの方法です。 手術を受ける本人や家族が納得した上で、治療を受けることが大切です。