首の痛みを和らげる

首の痛みを和らげる治療には、「手術」のほかに、「生活指導」「保存療法」があります。


■首の痛みの改善には?

多くの場合、保存療法が有効。痛みがあるときは我慢しない

首の痛みに手や足のしびれ、麻痺などを伴う場合、我慢していると症状が悪化したり、場合によっては手術が必要になることも あります。痛みがあるときは、早めに対処することが大切です。 首の痛みを和らげる治療には、大きく分けて「生活指導」「保存療法」「手術」の3つがあります。 筋肉の疲労やコリによる首の痛みは、生活指導と保存療法で改善できるため、手術をすることはまずありません。 「神経根」が圧迫されている「神経根症」の場合も、約90%が保存療法で改善されます。 「脊髄」が圧迫される「脊髄症」で、手足のしびれなどの症状が強いときは、手術が必要になることもあります。 原因となる病気が「脊椎腫瘍」の場合は、元となるほかの臓器にできた腫瘍と並行して放射線療法などを行い、 脊椎腫瘍の場合は手術で腫瘍を取り除くのが基本です。「感染性脊椎炎」の場合は抗菌薬などを使った治療が行われます。


●生活指導

首の負担を軽減する姿勢をとり、筋力を強化する運動を行う

首の負担を軽減するには、日常生活に注意することが大切です。 まずは、「よい姿勢」や「運動」について、指導を受けます。

▼首に負担を掛けない姿勢をとる
例えば、パソコンで作業をしているときに、画面に顔を近づけすぎると、首が後ろにそった状態になってしまいます。 このような姿勢を長時間取り続けていると、脊髄や神経根が圧迫され続けるため、首の痛みを悪化させてしまいます。 座って作業をするときは、背筋を伸ばし、軽く顎を引いた姿勢をとりましょう。

▼首の運動をする
首の運動は、痛みを和らげるのに有効です。関節を柔らかくして姿勢をよくする「リラックス運動」と、 首の回りの筋肉を鍛えて痛みを出にくくする「筋力強化運動」を行いましょう。 ただし、運動は無理をせず、自分のできる範囲で継続することが大切です。 「首に強い痛みがある」「手や足にしびれがある」場合は、運動を行うと悪化することがあります。 必ず担当医に相談してから行うようにしてください。


●保存療法①

首の痛みを和らげる保存療法には、「薬物療法」「装具療法」「理学療法」「神経ブロック」があります。

これらの保存療法は、神経への圧迫そのものを取り除く治療ではありません。しかし、治療により神経の炎症が治まることで、 痛みが改善されます。保存療法で十分な効果が得られない場合は、手術を検討します。 保存療法は、主に次のような順序で行われますが、症状によってはいくつかを組み合わせることもあります。

◆薬物療法

症状を改善する薬には、炎症を抑えて痛みを鎮める「非ステロイド系消炎鎮痛薬」、筋肉の緊張を緩める「筋弛緩薬」、 血流を改善する「循環改善薬」、炎症をより強く抑える「ステロイド薬」などがあります。 薬によっては、「胃が荒れる」といった消化器系の副作用が現れたり、血糖値を上げる副作用が起こることもあります。 「胃潰瘍」「糖尿病」がある人は、担当医に相談してください。


●保存療法②

装具療法で首を安定させたり、理学療法で血行を改善する

◆装具療法

装具療法では、首の働きを制限して安静を保つと同時に、保温を目的に「頸椎カラー」を装着します。 頸椎カラーにはいくつかタイプがあり、保存療法では、緩めの頸椎カラーを2~3週間ほど装着します。 手術後に使用するような、首と顎をしっかりと固定するタイプは、長く使うとかえって痛みを強くしてしまうことがあります。

◆理学療法

専用の機器で首をひっこめる「牽引療法」は、神経根症に有効な治療法です。 また、首や肩周辺に「超音波」などを当てる「温熱療法」は、温めることで血流を改善して痛みを軽減させます。


●保存療法③

痛みが強く、改善しない場合は神経ブロックを使う

薬物療法や理学療法などを行ってお、症状が改善されない場合は「神経ブロック」が行われることがあります。

◆神経ブロック

神経ブロックとは、痛みがある部分に「局所麻酔薬」を注射して、一時的に痛みをなくす治療法です。 痛みが続くと血流が低下して疲労物質が排出されなくなり、さらに痛みが強くなるという”痛みの悪循環”が起こります。 痛みを抑える薬の作用は数時間でなくなりますが、神経ブロックはこの悪循環を一度断ち切るので、 比較的長く痛みを緩和する効果が期待できます。首の痛みに行われる神経ブロックには、主に次の4つの方法があります。

▼トリガーポイント注射
最もよく行われている方法で、抑えると痛みがある部分に、局所麻酔薬を注射します。

▼硬膜外ブロック
神経を包む「硬膜」の外側に局所麻酔薬を注射し、首の神経全体に作用させます。首の後ろ側から注射します。

▼神経根ブロック
痛みの原因となっている神経根そのものに、のどがわから局所麻酔薬を注射する方法です。

▼星状神経節ブロック
7番目の「椎骨」の前辺りにある「星状神経節」には、交感神経が集まっています。 ここに薬を注射すると、交感神経の作用が弱まり、血管が拡張して血行が良くなって、痛みが改善します。 この方法は技術的に難しいため、最近では、近赤外線を用いる「光線療法」も行われています。

◆日常生活で気を付けること

日常生活では、首に負担を掛けないよう、できるだけ重いものは持たないようにしたり、首や肩を冷やさないようにしましょう。