睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に大きないびきをかき、何度も呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」。 日中の強い眠気を招くほか、高血圧や心筋梗塞、脳卒中などの合併症を引き起こす危険性もあります。 中年の肥満男性に多い病気ですが、あごの小さい人や、更年期以降の女性にもよく見られます。 肥満があって、大きないびきをかく人は特に注意が必要です。


■「睡眠時無呼吸症候群」とは?

睡眠中に上気道が塞がり、繰り返し呼吸が止まる

「睡眠時無呼吸症候群」は、睡眠中に繰り返し呼吸が止まる病気です。 この病気の人は、睡眠中に大きないびきをかきます。このいびきは突然止まりますが、このとき呼吸も止まるのが特徴です。 通常、呼吸の止まった状態は10~20秒間ほど続きますが、長い場合には1分間ほど続くこともあります。 その後、大きないびきとともに、呼吸が再開します。このように「大きないびき」と「いびきと呼吸の止まった状態」が、 1晩中に何度も繰り返し起こります。睡眠時無呼吸症候群の患者は、日本では約300万人いると言われていますが、 実際に治療を受けているのは、そのうち10万人程度です。


■睡眠時無呼吸症候群の症状

大きないびきをかき、いびきが突然止まると同時に呼吸も一時的に止まります。 そして、大きないびきと共に呼吸が再開します。これを一晩中何回も繰り返します。 呼吸が再開するとき、本人は気付かないものの、脳は目覚めています。 そのため、深い睡眠がとれず、熟睡感が少なくなります。 さらに、昼間に強い眠気が起こり、居眠りをすることが多くなります。
その他にも、

▼睡眠中
「いびきに強弱がある」「朝まで続く」「最近いびきがおおきくなり、音が変わった」「夜間頻尿」

▼朝
「朝起きたとき口やのどが渇いている」

▼日中
「疲労感がとれない」「身体がだるい」「集中力が低下する」

などのさまざまな症状が現れます。


■睡眠時無呼吸症候群が起こる原因

睡眠中に呼吸が止まる理由のほとんどは、気道の上部にあたる「上気道」がのどの軟口蓋や口蓋垂、 下の付け根(舌根)などで塞がることによるもので、主な原因は肥満です。 睡眠状態に入ると全身の筋肉が弛緩するため、のどのあたりの筋肉も緩みます。 しかも、あお向けの姿勢になると、重力で舌の根元(舌根)などが上気道の方へ落ち込みます。 その結果、上気道が狭くなります。通常は、上気道が塞がるほど狭くなることはありません。 しかし、肥満があると、軟口蓋やのどの内側・周囲などにも脂肪や軟部組織などが付着しており、 もともと上気道が狭い状態になっています。睡眠状態に入って筋肉が緩むと、上気道はさらに狭くなります。 そこを空気が無理に通るときにいびきが生じ、上気道が完全に塞がると呼吸が止まります。 呼吸が止まると、酸素不足に陥った脳が目覚めます。すると、弛緩したのどの筋肉が活動性を取り戻し、 上気道が開いて呼吸が再開します。睡眠時無呼吸症候群では、このように脳が何度も覚醒してしまい、 本人は十分に眠ったつもりでも、実際には深い睡眠が取れていません。そのため、昼間、仕事中や自動車の運転中になどに、 強い眠気に襲われたり、体がだるくなるなどの症状が現れます。肥満している人のほか、あごが小さい人や あごが後退している人も、あお向けになると、上気道が狭くなりやすく、睡眠時無呼吸症候群を起こしやすいといえます。

首が短くて太い人も同様です。肥満がなくても、あごの骨格が小さな人は、仰向けに寝たとき、 舌根がのどの奥に落ち込みやすく、やはり上気道を狭めてしまいます。 更年期以降の女性も注意が必要です。女性ホルモンには脳の呼吸中枢を刺激する作用がありますが、 更年期以降は女性ホルモンの分泌が極端に減少するため、発症しやすくなります。 また、扁桃やアデノイド(咽頭扁桃)が肥大していたり、鼻腔を左右に分ける「鼻中隔」が大きく曲がる 「鼻中隔湾曲」による鼻づまりがあったりなど、耳鼻咽喉科の病気によっても起こることがあります。 たとえ肥満がなくても、昼間の強い眠気が続いたり、家族に大きないびきを指摘されたら、早めに受診しましょう。