薬だけに頼らない糖尿病の克服法
薬に頼らない糖尿病の克服法を長年研究した結果、亜鉛の補給こそ最重要とわかりました。 食事制限も運動療法も効かなかった糖尿病の人が亜鉛を摂ったら急回復し薬も不要になる人が続出しています。 亜鉛は膵臓でインスリンの合成・貯蔵・分泌を促す働きをします。 また、亜鉛はインスリン自体の原料となり、インスリンの働きを長く持続させます。 亜鉛が不足すると、膵臓はインスリンを十分に作ることができず、インスリンの働き自体も弱くなります。 その結果、糖がエネルギーに変えられずに血液中に増え、糖尿病を招くのです。
■糖尿病患者の半数が痩せていた
日本人の糖尿病の患者数は右肩上がりで年々増加し、今なお歯止めがかからないように見えます。 その理由として、これまで考えられてきたのは、食べ過ぎや食生活の欧米化による摂取カロリー過多と、 生活が便利になったため体を動かさなくなったことによる運動不足でした。 そのため、糖尿病の治療では、低カロリーの食事療法と、消費カロリー増やしのための運動療法が指導されてきました。 ところが、食事制限をしたり、運動療法を行ったりしても、糖尿病の進行を止められない患者さんが少なくないのです。 薬剤師である私のもとには、そうした悩みを持つ糖尿病の患者さんがたくさん訪れます。 そうした患者さんの治療になればという思いで、私は薬だけに頼らない糖尿病の克服法を研究してきました。 その結果、現代人に不足しがちなミネラルの一種の『亜鉛』こそ、 糖尿病改善の切り札だと確信するに至ったのです。
そもそも、石川県の能登半島で25年間も薬局を経営する私が糖尿病の研究を始めたのは、 店頭で相談に乗ってきた糖尿病の患者さんが相次いで急死したことがきっかけでした。 薬頼みの糖尿病対策に限界を感じた私は、薬を極力使わずに糖尿病を改善させようと考え、 血糖値が高い人向けのダイエット教室を開催しました。 ところが、参加した糖尿病の患者さんのうち、実に半数が痩せていたのです。 私は、痩せている糖尿病の人は、ミネラルやビタミンが不足しているために起こるのではないかと考えました。 なぜなら、食べ物から摂取した糖分は、ビタミンやミネラルといった栄養成分が不足すると、 エネルギーに変換して消費できないからです。
そういった栄養学的な事実をもとに、糖尿病患者の指導法を考えていた時、私はある論文に出合いました。 その論文は、1995年に国立栄養研究所の西牟田守先生が発表したもので、亜鉛には糖尿病を改善する可能性があることを 指摘していたのです。衝撃を受けた私は、この論文の内容を実証するため、糖尿病の患者さんに亜鉛を摂るよう、勧めました。 すると、高い血糖値が下がった人が下がった人が続出しはじめました。 それ以来、私は、日常の調剤業務の傍ら、糖尿病の患者さんに亜鉛を中心とした栄養素を補給するように指導しています。 その一方で、これまで全国1000人以上の薬剤師に講演と指導を行い、糖尿病改善における亜鉛の重要性を広く知らせる活動を 行っています。痩せているのに糖尿病の人、服薬や食事療法・運動療法を行っても症状が改善しない糖尿病の人は、 是非、亜鉛を補給してみてください。
■糖尿病は薬だけでは治らない
糖尿病の患者さんの中には「糖尿病は薬さえ飲んでいれば改善する」と考えている人が多いでしょう。 確かに、病院で処方された薬をきちんと飲むことは大切です。 しかし、私は30年以上も薬剤師をしていますが、薬だけで糖尿病を克服した例を見たことがありません。 実際に、糖尿病の薬に添付される医療機関向けの文書には、その効能について「ただし、食事療法・運動療法のみで 十分な効果が得られない場合に限る」という但し書きがあります。つまり、糖尿病は薬だけでは治らないということ。 逆にいえば、適切な食事療法と運動療法を行えば、薬を飲まなくても糖尿病を改善する効果が得られるということです。
では、薬と併せて生活習慣の改善を行えばいいのかというと、そう簡単ではありません。 食事制限をしたり、運動を行ったりしても糖尿病がよくならない人がいます。 その理由こそ、前述した亜鉛をはじめとするミネラル・ビタミンなどの栄養素不足なのです。 私たちが摂る食べ物は、体の中で代謝されてエネルギーに変えられます。 こうした代謝を助ける物質が、ビタミンB1やビタミンB2といったビタミンと、亜鉛・鉄・マグネシウムなどのミネラルです。 こうしたビタミンやミネラルが不足していれば、せっかく摂った食事もエネルギーに変えられず、体の中で余ってダブついてしまいます。 その余った状態が血液中で起これば高血糖や脂質異常症になります。 また、脂肪細胞に蓄えられれば肥満につながり、さらに血糖値を上げやすい状態を引き起こすのです。
特に、インスリンの原料となる亜鉛が不足すれば、インスリンの分泌量コントロールが悪くなるばかりか、 インスリンの働き自体も悪くなります。その結果、糖尿病はますます悪化してしまうのです。 ミネラルやビタミンが足りないために高血糖になっているのであれば、薬を飲んだり、食事療法や運動療法をやったりしただけでは 改善しないのは当然でしょう。つまり、私が糖尿病の患者さんに行う亜鉛補給を中心とした指導は、「足りないものを補う」という、 非常に単純な考えに基づいているのです。
考え方は単純ですが、効果は絶大。私が指導した糖尿病の患者さんの実に9割が、糖尿病の改善効果を実感しています。 痩せている糖尿病の人や、食事制限や運動を行っても血糖値が下がらなかった人が、亜鉛を補給したら血糖値が下がり、 薬も不要になったり網膜症が改善したりする例が続出しているのです。 亜鉛の補給は、ふだんの生活で簡単な方法で行えるため、多忙な現代人にもピッタリの糖尿病撃退法といえるでしょう。 亜鉛の多い食品や、その食べ方については、次の項で詳しく説明します。