糖尿病対策に「亜鉛の補給」改善例

この項では、亜鉛を補給して糖尿病が改善した人の例を紹介します。
①食事制限でも治らない糖尿病が、亜鉛を摂ったら血糖値が正常値内まで下がり網膜症も改善。
②インスリン注射も無効の糖尿病が、亜鉛を摂ったらヘモグロビンA1c値が6.8%から5.8%に急降下。


■減量をしたのに血糖値が下がらない

石川県に住む沢井加寿子さん(仮名・62歳・主婦)は、6年前に糖尿病と診断されました。 当時の沢井さんの空腹時血糖値は196ミリグラム、ヘモグロビンA1c値は7.4%(当時の基準では6.1%以上で糖尿病)もあったそうです。 沢井さんの場合、初期のころから糖尿病の三大合併症の一つである網膜症も発症していました。 網膜を検査したところ、毛細血管からの出血がひどく、網膜に白斑(網膜にできる白い塊)も、たくさんできていたといいます。

そんな沢井さんが私のところへ来たのは、今から3年前のこと。血糖値は相変わらず高く、右目はレーザー治療を受けているが、 治療のたびに視力が落ちているとのこと。また、沢井さんは、カロリー制限をして5kgの減量までしたのに、 血糖値が下がらないと私に訴えました。ところが、沢井さんは身長が163cmで体重が50.7kg。 太っているどころかむしろ痩せ型で、栄養不足が糖尿病を招いていると一目で感じました。 私は沢井さんに、食事制限をしても糖尿病が改善しないのは、ミネラルの一種である亜鉛が不足している可能性があると説明しました。 そして、亜鉛不足を補うため、亜鉛がたっぷり含まれた栄養補助食品を摂るように指導したのです。

沢井さんは、私の指導をよく聞き、熱心に亜鉛食品を摂り続けました。 また、ミネラルやビタミンの多い食品も積極的に摂るように心掛けたといいます。 すると、1年後には、合併症の網膜症が少し改善してきました。 網膜にたくさんあった白斑が、なんと半分に減少し、レーザー治療は不要と言われたのです。 2年半後には、ヘモグロビンA1cが基準値以下の5.7%まで低下し、空腹時血糖値も140ミリグラム前後まで下がりました。 視力も大幅に回復して、網膜の出血の跡もところどころに見られるだけになり、白斑部分は2箇所まで減少しました。

沢井さんが亜鉛を摂り始めて3年後の現在では、空腹時血糖値は100ミリグラムを下回り正常範囲内で安定しています。 そして、網膜症の症状もすっかり落ち着き、眼科の先生からは糖尿病性網膜症が改善する例を始めて見たといわれるまで回復しました。 沢井さんによれば、床に落ちているごみまで見えるようになったとのこと。 体調もよくなり、老後の生活を明るく考えられるようになったと話してくれました。


■体重が急に落ちだし糖尿病が悪化

石川県に住む坂本満雄さん(仮名・71歳)も亜鉛を補給して糖尿病を改善しました。 坂本さんの糖尿病歴は長く、発症して24年になります。 47歳の時職場の健康診断で高血糖を指摘された坂本さんは、近くのクリニックで治療を受け始めました。 しかし、そのクリニックでは食事に対する指導はなく、投薬治療のみだったといいます。 10年以上もそんな生活を続けた坂本さんも、60歳になり定年を迎えました。 気が緩んだ坂本さんは、昼からビールを飲む生活をした結果、体重が急に3kgも落ちだし、 60kgを下回ってしまったのです(身長は164cm)。

さすがに異常だと感じた坂本さんは、糖尿病の専門医のいる大学病院を受診しました。 すると、非常に危険な状態であることがわかり、即日入院になってしまいました。 入院中は、投薬療法や食事療法が続きましたが、病状は改善せず、投薬量がどんどん増えていきました。 インスリン注射も行いましたが血糖値は安定せず、ヘモグロビンA1cは6.8~7.3%(当時の基準では6.1%以上で糖尿病) もあったといいます。

そんな坂本さんが私の薬局を訪れたのは2011年8月のこと。坂本さんの食生活について聞き取りを行ったところ、 退院後に奥さまを亡くして一人暮らしになったため、食事が不規則で栄養バランスも悪くなっていたことがわかりました。 そこで、坂本さんには、食事を規則正しくよく噛んで食べることを指導すると同時に、亜鉛の栄養補助食品をごく少量ずつ、 毎日摂るように勧めました。坂本さんは、当初は半信半疑だったようですが、食生活を見直すとともに、 亜鉛食品も毎日摂り続けたようです。

その結果、6.8%だったヘモグロビンA1c値が、1ヶ月後には6.4%、2ヶ月後には6.1%と、順調に下がりだしました。 そして、9ヶ月後の今年5月には5.8%(新基準での値、従来の基準では5.4%)以下にまで血糖値が下がったのです。 ふだんの血糖コントロールが安定してきて、血糖値が急激に上下することが少なくなりました。 今では坂本さんの血糖値は基準値以下で安定し、薬も減らすことができました。 今後も亜鉛を摂り続けたいと、坂本さんは話しています。

このように、長年改善しなかった高血糖が、亜鉛を摂れば1年足らずに基準値以下に下がる例もあります。 ただし、亜鉛は誰にでも同じ効果が現れる魔法の栄養ではありません。 食事の改善を中心とした生活習慣の見直しとともに、亜鉛を改善策の一つとして試してみてください。