高血糖改善・糖尿病予防に『亜鉛』
【亜鉛を補う食事療法】

亜鉛は、インスリン合成やエネルギーの変換、 活性酸素の除去に必要な物質です。 高血糖になると、全身の血管で活性酸素を発生させますが、 亜鉛はその活性酸素を除去する「SOD」という酵素の材料にもなるので、 大量のインスリンを作るのに亜鉛が多く必要になります。 そこで、目や腎臓、筋肉に貯蔵されている亜鉛を取り出して、インスリン合成やエネルギーの変換、活性酸素の除去に回すことになり、 本来亜鉛が必要なところで不足するので、合併症を引き起こしやすくなるのです。 亜鉛を補う食事療法は、糖尿病患者の9割の血糖値が改善し、合併症の予防にも著効です。


■栄養不足で糖尿病になる

糖尿病は、「食べ過ぎが原因の肥満した人たちの病気」だと思われていますが、実はそうではありません。 「栄養不足」が高血糖を引き起こし、糖尿病になるのです。 「飽食の時代に栄養不足?」と疑問に思うかもしれません。 しかし、不足した栄養素を補う食事療法などを指導した糖尿病患者さんの9割に、 血糖値の改善効果が出ていることからも、栄養不足が大きな原因の一つであることは間違いないと考えられます。。 足りない栄養素の中で、特に必要なのが「亜鉛」です。 (独)国立健康・栄養研究所で長年栄養の研究をされていた西牟田守先生は、15年以上前から亜鉛と糖尿病の関わりを指摘されています。 食事の後は、糖質から取り込まれたブドウ糖が血液中にたくさんあります。 ブドウ糖を細胞に取り込むためにも、細胞の中でエネルギー源として使うためにも、インスリンというホルモンが必要です。 インスリンが十分に働くために必要な栄養素の一つが、インスリンの原料である亜鉛です。 亜鉛が不足すると、血糖コントロール機能を悪化させるだけでなく、膵臓のインスリン分泌機能にも悪影響が出ます。 加齢に伴って、尿中に排泄される亜鉛の量が増えることも、中高年の糖尿病発症の一因だと思います。

高血糖は、全身の血管で活性酸素 (体内で増えすぎると細胞を傷つけ、老化の一因となる物質)を発生させます。 亜鉛は活性酸素を除去する「SOD」という酵素の材料にもなるのです。 亜鉛は 糖尿病網膜症(カメラのフィルムの役目をする網膜に損傷が生じる病気)、 糖尿病腎症糖尿病神経性障害という合併症の予防にも有効です。 目、腎臓、筋肉、骨髄など活性の高い組織には、亜鉛が多く貯蔵されています。 例えば、目。目の網膜の後ろにある「脈絡膜」には、大量の亜鉛がありますが、これは、目は常に紫外線にさらされていて、 活性酸素の害を受けやすいうえ、目や腎臓は、インスリンがなくてもブドウ糖を取り込める細胞なので、高血糖で発生した活性酸素の消去に亜鉛が必要となります。 ところが、亜鉛が体内に不足すると、そこから亜鉛を取り出して使ってしまいます。 高血糖の場合、大量のインスリンを作るのに亜鉛が多く必要になります。 目や腎臓、筋肉から亜鉛を取り出して、インスリン合成やエネルギーの変換、活性酸素の除去に回すことになり、 本来亜鉛が必要なところで不足するので、合併症を引き起こしやすくなるのです。


■食べる順番も大切

糖尿病の改善のために、患者さん自身に取り組んでほしいのが、食生活の見直しです。 そこで、亜鉛が不足しない食生活を送るための食生活のポイントが2つあります。
まず、亜鉛を含む食品を積極的に摂ること、亜鉛を多く含む食品の代表格は、貝の牡蠣。 また、牛もも肉、豚ヒレ肉、木綿豆腐などにも多く含まれています。 これらは、いずれも糖質が少なく、タンパク質が豊富なのでお勧めです。 2つ目のポイントは、なるべく亜鉛を尿中に捨てないこと。例えば、みそ汁のダシなどに使いがちな市販の旨味調味料。 その中の成分が亜鉛とくっつきやすく亜鉛を尿中に排泄するので、ダシは亜鉛を多く含む食品を摂って、 亜鉛を捨てるものをやめるようにすれば、その差はとても大きなものになります。

食べる順番も大切です。糖尿病の人は、ご飯などの糖質が大好き。ご飯から食べ始めるので、糖質を摂り過ぎてしまいます。 そこで、おかずや具だくさんの味噌汁を先に食べ、ご飯を最後に食べると、おかずでお腹がいっぱいになるので、ご飯は少量で済みます。 また、よく噛んで食べると、満腹を感じやすくなるうえに、微量栄養素の吸収が促されるので、一口30回噛んで食べることを推奨します。 食事療法だけで改善しない患者さんには、 亜鉛の天然栄養補給食(牡蠣肉エキス)をお勧めします。 ただし、過剰摂取は逆効果なので注意が必要です。まずは血液循環で体調を把握し、亜鉛を上手に補給して、糖尿病の改善に役立ててください。