高尿酸血症の合併症

高尿酸血症』では、痛みの強い「痛風発作」を気にしがちですが、 尿酸値が高いことがさまざまな合併症を招きます。 特に、「メタボリックシンドローム」を伴っている場合は、命に関わる病気が起こりやすくなります。 生活習慣の改善や薬物療法などで尿酸値を下げることが大切です。


■主な合併症

尿路の障害を引き起こしたり、生活習慣病を伴いやすい

「痛風」というと、痛風発作による激しい痛みばかりを気にしがちですが、痛風発作が起こらなければ問題はない というわけではありません。尿酸値が高い状態、すなわち「高尿酸血症」が長期間続くと、 痛風発作が起こらなくても体に悪影響を及ぼし、さまざまな病気を引き起こします。 腎臓、尿管、膀胱、尿道からなる尿の通り道を「尿路」といい、 高尿酸血症が原因で起こる尿路の病気には「腎障害」「尿路結石」があります。 また、血液中の尿酸値が高いと「高脂血症」「高血圧」などの生活習慣病も併発しやすくなります。


●高尿酸血症に特有の合併症

『痛風関節炎(痛風発作)』
高尿酸血症の状態がある程度長期化すると、尿酸が結晶化し「尿酸塩」という形になって、 関節や腎臓などに析出してくるようになります。 このような「高尿酸血症」を基礎として、 尿酸塩が関節に沈積した後、ある日突然、 関節に激しい痛みを呈する発作(痛風関節炎) をを引き起こす病気が「痛風」で、 発作自体を「痛風発作」と呼びます。

『腎障害(痛風腎)』
尿酸値が高い状態が続くと、腎臓に結晶化した尿酸がたまり、腎臓の濾過機能が低下します。 この状態を「痛風腎」といいます。痛風腎があると尿酸が排泄されにくくなり、 さらに尿酸値が上昇するという悪循環が生じます。 尿酸値が高いまま放置していると、腎臓の機能が著しく低下し、「尿毒症」を起こしたり、 「腎不全」に陥ることもあります。

『尿路結石』
尿路に尿酸の結晶がたまると、「尿路結石」ができることがあります。 結石のある場所によって、ほとんど症状が現れないこともあれば、激しい痛みが起こることもあります。 結石が尿路を傷つけて「血尿」が出る場合もあります。

●高尿酸血症と併発しやすい生活習慣病

高尿酸血症があると、肥満や脂質異常症、高血圧、耐糖能異常などの生活習慣病を合併しやすいことがわかっています。 最近では、高尿酸血症とメタボリックシンドロームとの関係も注目されています。 メタボリックシンドロームとは、内臓の周りに脂肪がたまっていて、かつ血中脂質、血糖、血圧のうち、 2つ以上が高めの状態をいい、動脈硬化が飛躍的に進むことがわかっています。 高尿酸血症は、メタボリックシンドロームの中にこそ含まれていませんが、 高脂血症や高血圧などの生活習慣病を併発しやすい、やっかいな性質があります。 また、尿酸値が高いと、「動脈硬化」が促進されます。動脈硬化が進むと、心臓や脳の血管が詰まる 「心筋梗塞」「脳梗塞」などの命に関わる病気につながることもあります。 生活習慣病を伴うと、発症のリスクはさらに高くなります。

▼高脂血症
高尿酸血症と併発する生活習慣病のうちで最も多く、高尿酸血症患者の半数が 高脂血症を伴っているというデータもあります。偏った食事や過食、お酒の飲みすぎ といった生活習慣が、これらの病気を招きます。

▼肥満
高脂血症と同じく、生活習慣が原因で高尿酸血症と併発しやすい症状です。 肥満には、「皮下脂肪型肥満」と「内臓脂肪型肥満」の2つのタイプがあります。 皮下脂肪型肥満の場合は、尿酸の排泄が妨げられ、内臓脂肪型肥満の場合は、 尿酸が作られやすくなります。高尿酸血症の人にとっては、皮下脂肪型肥満 も内臓脂肪型肥満も大敵です。

▼耐糖能異常
血糖値が高めの人は、インスリンというホルモンが過剰に増える「高インスリン血症」 になりがちです。高インスリン血症になると、尿酸の産生が増える上に、 排泄も妨げられてしまいます。

▼高血圧
高血圧があると腎臓に負担がかかるため、尿酸の排泄が妨げられて尿酸値が上がります。 一方、高尿酸血症を放置すると腎障害を招き、ますます血圧が高くなります。 このように高血圧と高尿酸血症は関係が深く、併発しやすい病気です。

高尿酸血症ををもつ人の死亡原因の第一位は心筋梗塞などの心疾患です。 第二位は脳卒中と、動脈硬化による病気が上位を占めています。 これらの病気は、生活習慣病を併せ持っている人ほど危険性が高くなるため、 尿酸値を下げるだけでなく、併発している生活習慣病の治療もきちんと行う必要があります。 なお、高脂血症や高血圧の治療薬には、尿酸値に影響を及ぼすものもあります。 治療の際には、必ず医師に高尿酸血症があることを伝えましょう。


●合併症を防ぐには?

高尿酸血症の合併症を防ぐには、尿酸値を下げることが重要です。 高尿酸血症の治療法には大きく分けて「生活習慣の改善」と「薬物療法」があり、 尿酸値や合併症の有無などを基準に選択されます。

【関連項目】
『生活療法』
『薬物療法』