痛風(痛風発作・関節炎)

主に足の親指の付け根や足首が腫れ、激しく痛むのが痛風(痛風発作の症状です。 痛風(痛風発作)の特徴は、ある日突然、関節に激しい痛みが起こることで、国内に約100万人の患者さんがいると推計されています。 患者さんの約半数は「高血圧」を、約半数は「高脂血症」を合併しているともいわれており、 最終的には、「心筋梗塞」などの危険な病気を引き起こすこともあります。 治療は「高尿酸血症」の状態では「生活療法」が基本となり、「痛風発作」を起こした場合は「薬物療法」を中心として生活療法を加えます。


■痛風(痛風発作・関節炎)とは?

主に足の親指の付け根などの関節に腫れや痛みが起きる

痛風は、正確には痛風関節炎といい、 血液中の尿酸が増えすぎた状態の「高尿酸血症」によってっ生じる症状の一つです。 尿酸値が高い病態を「高尿酸血症」、発作を起こした病態を「痛風(痛風発作)」といいます。 痛風の原因となる「高尿酸血症」とは、血液中の尿酸値が7mg/dlを超えた状態のことで、痛みなどはありませんが、じわじわと関節に尿酸の結晶が溜まっていきます。 そして、高尿酸血症の状態がある程度長期化すると、尿酸が結晶化し「尿酸塩」という形になって、関節や腎臓などに析出してくるようになります。 このような「高尿酸血症」を基礎として、尿酸塩が関節に沈積した後、ある日突然、 関節に激しい痛みを呈する発作(痛風関節炎)をを引き起こす病気が「痛風」で、発作自体を「痛風発作」と呼びます。 痛風発作は、足の親指の付け根や足首に起こりやすく、30代以降の男性に多い病気です。


●痛風発作が起こる仕組み

血液中の尿酸が増えすぎて関節に溜まり、炎症を起こす

痛風発作を引き起こすのは、血液中の尿酸という物質です。 尿酸は、細胞の核などに含まれているプリン体 という物質から細胞の新陳代謝やエネルギーの代謝によって作られる老廃物です。 プリン体の多くは私たちの体内で合成されますが、食べ物にも含まれています。 体内にはいったプリン体は、肝臓に集められ、それが分解・代謝されて尿酸が合成され、やがて尿酸は尿と共に排泄されます。 通常、血液中の尿酸の濃度は、一定範囲内に保たれています。 しかし、腎臓での尿酸の排出を上回るペースで尿酸が作られたり、尿酸を排泄する機能が低下したりすると、余分な尿酸が血液中に溜まっていきます。 血液中の尿酸が増えすぎ尿酸値が7mg/dlを超えると、「高尿酸血症」の状態になり、この状態が続くと、 血液中に溶け切れない尿酸が結晶化し関節などに溜まりますが、痛みなどの症状はありません。 ところが結晶の溜まった関節に何らかの刺激が加わると、関節の軟骨から尿酸の結晶が剥がれ落ちます。 すると、、そこに白血球が集まってきて、剥がれた結晶を異物と認識し、それを排除しようとして攻撃します。 その結果、炎症(関節炎)が起きて痛みが生じるのです。 これが痛風発作で、多くは足の親指の付け根など、足の関節に起こります。これが「痛風発作」です。 そして痛風を繰り返すことで結節ができ、その部分の骨が変形してしまうこともあります。 痛風発作の約7割は、足の親指の付け根か足首の関節に起こります。 また、足の指以外に、手指や肘の関節などに起こる場合もあります。 「手足は体温が低く、尿酸が結晶化しやすい」「足には外圧がかかりやすい」ため、尿酸が血液に溶けにくく、結晶ができやすいのです。


●痛風発作の症状

突然の激しい痛みが特徴

痛風発作(痛風関節炎)は、突然の激しい痛みが特徴です。 最初は足の親指の付け根の関節に起こることが多く、その場合は地面に足をつけて立つこともできず、横になっても、布団の重みさえつらく感じるほどです。 痛風発作が起こったときは、まず痛みのある部分を冷やします。 横になって、患部を心臓より高いところに上げると、患部への血流が弱まり、痛みが和らぐことがあります。 発作中は、「非ステロイド性消炎鎮痛薬」などの鎮痛薬を使います。 痛みが完全に治まったら、2週間ほどあけて、尿酸値を下げる治療を始めます。 発作中に尿酸値を下げると、かえって痛みがひどくなるためです。

痛風発作は、通常、前触れもなく激しい痛みが起こり、2~3日ほど続きますが、必ずしも激しい痛みばかりとは限りません。 なかには痛みが軽く、見逃してしまう場合もあるようです。 しかも、痛風発作自体は特に治療しなくても、腫れや痛みは1週間~10日ほどでえて自然に治まり、 痛み止めの薬を飲めば2~3日で回復することもあるので治療を受けずに放って置く人も少なくありません。 しかし、尿酸値が高い状態が改善されたわけではないので、高尿酸血症を治療しない限り、 症状は消えても、改善することはありません。 その結果、次第に発作と発作の間隔が短くなり、発作の回数や炎症を起こす部位が増え、痛みもひどくなって治りにくくなります。 さらに、痛風発作を2回3回と繰り返すうちに、くるぶしや膝などの大きな関節に尿酸の結晶が溜まり、これが「痛風結節」です。 痛みはありませんが、次第に関節が変形し、次第に腫れてきます。 動作に支障を来すようになります。痛風発作が足の関節に多いのに対し、痛風結節は全身のどの関節にも起こる可能性があります。

また、さまざまな合併症も起こってきます。 常に多量の尿酸を尿中に排泄していると「尿路結石」ができたり、 腎臓の働きが低下して「痛風腎」と呼ばれる腎障害を起こす場合があります。 また、痛風があるということは同じような生活習慣を背景とする 「高血圧」「高脂血症」などにもかかりやすいということであり、 動脈硬化が進んで 「心筋梗塞」などの重大な病気の危険性も高くなります。


●痛風のタイプ

「高尿酸血症(痛風)」には、尿中への尿酸の排泄量が減る「尿酸排出低下型」と 体内で尿酸が過剰に作られる「尿酸産生過剰型」および、排泄低下と産生過剰が混合している「混合型」があります。 薬物療法が必要になった場合、タイプによって使われる薬が違うので、 医療機関では、痛風のタイプの診断も行います。


■高尿酸血症

血液中の尿酸が多い”高尿酸血症”に要注意

痛風の原因となるのが高尿酸血症です。 血液中の尿酸の量を示す尿酸値が7.0mg/dlを超えると、溶けきれず、結晶ができやすくなります。 そこで、尿酸値が7.0mg/dlを超える場合を高尿酸血症とし、治療の対象としています。 高尿酸血症は、痛風を引き起こすだけでなく、他にも悪影響をもたらします。 尿酸が腎臓内に溜まることで腎臓の働きが低下し、 腎臓病になる可能性があります。 尿酸の結晶が尿路にできると、激しい痛みを伴う尿路結石を引き起こします。 また、血液中の尿酸が多いと、血管壁を障害して、動脈硬化を引き起こします。 痛風の有無にかかわらず、高尿酸血症を改善することが大切です。 痛風を起こしていないけれど尿酸値が高い状態を、無症候性高尿酸血症といいます。 高尿酸血症のある人は約1000万人、痛風のある人は約100万人と推計されているので、およそ9割の人が無症候性高尿酸血症と考えられます。 痛風がないために尿酸値が高い状態を放置してしまい、気付いた時には腎臓病が進行してしまっていることも少なくありません。 痛風を起こしていなくても、尿酸値が7.0mg/dl超えていたら、受診して適切な対策を摂ることが大切です。


■痛風になりやすい人

男性の30~50歳代の人が痛風を起こす可能性が高い

下の危険度チェックリストで、当てはまる項目が多い人ほど、痛風を起こす可能性が高くなります。 痛風を起こす人の95%以上が男性です。特に30~50歳代に多いことがわかっています。 チェックリストにあるような尿酸値を上げやすい生活習慣が長く続いた結果、痛風を起こすようになると考えられています。 肥満がある人に多いのは、腎臓から尿酸を排泄する機能が低下するためです。 肥満になりやすい食習慣自体も、痛風を起こしやすくなる原因になります。 アルコール飲料や清涼飲料水、甘いものの摂り過ぎは、体内で作られる尿酸を増やすことに繋がります。 また、ストレスがあると過食やアルコール飲料の過剰摂取に繋がることがあります。 家族に痛風を起こした人がいると、発症する可能性が高まることがわかっています。 遺伝的な要因の他、食生活が似ることも関係していると考えられます。 痛風が起きた時は、応急処置として、患部を少し高くして冷やします。揉んだりすると、かえって痛むようになるので要注意です。 痛風は、特に治療をしなくても、1~2週間すれば治まります。しかし、体の尿酸が多すぎる状態を改善しなければ、何度でも再発する可能性があります。 必ず医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。

  • 男性である
  • 30歳以上である
  • 肥満がある
  • 外食やコンビニ食が多い
  • 食事の時間が不規則
  • アルコール飲料をよく飲む
  • ジュースや清涼飲料水をよく飲む
  • 甘いものが好き
  • ストレスが多い
  • 家族に痛風を起こした人がいる

■痛風の検査

痛風かどうかや尿酸値が高くなった原因を調べる

高尿酸血症の検査は、目的によって大きく3つに分かれます。

▼痛風かどうかを見極める検査
血液検査では、尿酸値だけでなく炎症の有無を確認するためにCRP白血球の値も調べます。 腎臓の機能の状態を示す尿素窒素クレアチニンも調べます。 エックス線検査では、関節に骨の変形がないかを調べます。 症状が痛風と似ていて間違いやすい偽痛風や変形性膝関節症などの病気との鑑別にも役立ちます。

▼尿酸値が高くなった原因を調べる検査
血液と尿を調べる尿酸クリアランス検査では、血液中の尿酸がどれだけ尿に排泄されているかを調べます。 それにより、尿酸が作られ過ぎているために尿酸値が高くなっているのか、尿酸が腎臓から十分に排泄されないために高くなっているのか、 尿酸値が高くなっている原因がわかります。

▼合併症やその危険性を調べる検査
腎臓病や尿路結石などの有無を調べるために尿検査内臓のエコー検査が、狭心症や心筋梗塞の可能性を調べるために 心電図検査が行われます。また、心筋梗塞などの危険性を高める高血圧や脂質異常症、糖尿病などの有無を調べるために、 血液検査血圧測定なども行われます。


■痛風の治療

まずは痛みを抑え、場合によっては尿酸値を下げる薬を飲む

痛風を起こした人は、まずは関節の炎症を鎮めるため、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を痛みがなくなるまで服用します。 腎臓病などで非ステロイド性消炎鎮痛薬が使えない場合には、副腎皮質ステロイド薬が使われることがあります。 そして、痛みが始まったら、尿酸値を下げる薬が使われます。 痛風を起こしたことがないけれど、尿酸値が8.0~9.0mg/dl以上と高い場合や、高尿酸血症が続いたことで腎臓病や尿路結石を起こしている場合は、 尿酸値を下げる薬が使用されることがあります。 薬物療法では、高尿酸血症が起きている原因に応じて、尿酸をできにくくするタイプの薬と、尿酸の排泄を促すタイプの薬が使い分けられます。 痛風は起きていないけれど尿酸値が7.0mg/dl程度で、合併症を起こしていない場合は、食生活の見直し、飲酒制限、適度な運動などの 生活改善に取り組みます。 痛風を防ぐには、尿酸値を6.0mg/dl以下に下げ、その状態を長期間維持することを目標にします。 実現できれば、関節内に溜まっていた尿酸値の結晶は溶け、痛風は起こらなくなると考えられています。 薬を使用している人も、生活改善に取り組むことが大切です。