痛風予防『尿酸値を下げる治療』

痛風』の治療は、尿酸値を下げることが目標になります。 主な治療法は、生活の改善と薬物療法です。 薬物療法では、状態に合わせた薬の選択が必要になります。


■痛風の治療

尿酸の生成とバランスを整える

痛風の原因となる尿酸は、体の中でプリン体から作られます。プリン体が肝臓で分解されて尿酸となるのです。 体の中では尿酸が一定に保たれるようになっています。これは、尿酸の生成と排出のバランスを取る仕組みが働いているためです。 これを蛇口とプールに例えると、肝臓で生成された尿酸は、体の中にある尿酸のプールに流れ込みます。 このプールには、尿酸を流しだす排水口が付いていて、生成される量が増えれば、排出する量を増やしてバランスを取ります。 こうして、プールの尿酸の量は、常に一定の量に保たれているのです。
ところが、何らかの理由で、尿酸が過剰に作られたり、排出する量が減ったりすると、ためてある尿酸量が増え、 プールから溢れ出してしまいます。この状態が「高尿酸血症」なのです。 血液中の尿酸値が増え、7.0mg/dLを超えた場合にそう診断されます。高尿酸血症は、痛風を起こしやすい状態です。 治療では、尿酸値を7.0mg/dL以下に下げることを目指します。

◆激しい痛みは白血球が原因

尿酸は血中だけでなく、関節液にも同じように溶けています。体内の尿酸の量が増えて濃度が高くなると、 溶け切れなくなった尿酸が関節の中で結晶化し、沈着するようになります。 尿酸値の高い状態が続くと、長い年月をかけ、結晶がたまっていきます。 痛風の発作は、この結晶が剥がれ落ちたときに起こります。白血球は、剥がれ落ちた結晶を体の外敵と見なし、 排除しようと働きます。 この時、白血球から炎症性の物質が出され、腫れと激しい痛みが生じるのです。 これが痛風発作で、歩行困難になるほどの痛みが起こります。


●治療法①生活指導

まずは生活の改善、すべてのペースになる

『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』では、高尿酸血症に対し、尿酸値に応じた治療が推奨されています。 尿酸値が7.0mg/dLを超えていて、高尿酸血症と診断される場合には、尿酸値の高さに関わらず、まず「生活指導」 が行われます。薬による治療が検討されるのは、尿酸値が8.0mg/dL以上で、なおかつ腎臓病、尿路結石、高血圧、心臓病などの 合併症がある場合です。尿酸値が9.0mg/dL以上であれば、合併症がなくても薬による治療が行われる場合があります。

◆生活指導は3つの柱で行う

生活指導は、「食事療法」「飲酒制限」「適度な運動」が中心になります。 肥満のある人は、食事で摂取するエネルギー量を適正にすることで肥満を解消します。 体重が減ることだけで、薬を使用しなくても、尿酸値が改善することがあります。 生活指導は、尿酸値がどのレベルの人にも必要な治療です。 尿酸値が高い人は、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクも抱えています。 生活習慣の改善は、それらを予防するのにも役立ちます。


●治療法②薬物療法

状態に合わせて、薬を使い分ける

薬物療法で使われる薬は、患者さんがどのような状態にあるかによって異なっています。

◆尿酸値を下げる薬

尿酸値を下げる薬には、「尿酸をできにくくする薬」と「尿酸を出しやすくする薬」の2種類があります。

▼尿酸をできにくくする薬
古くから使われてきた「アロプリノール」のほかに、最近になって使われるようになった「フェブキソスタット」と 「トピロキソスタット」があります。アロプリノールは腎機能が低下していると副作用が出やすいため、 そのような患者さんには使いにくい薬でした。その点、新しく登場した薬は、腎機能が低下した人でも使用することができます。

▼尿酸を出しやすくする薬
尿酸の排出量が減っている場合に使う薬で、「ベンズブロマロン」と「プロベネシド」があります。 副作用としては、まれに肝機能障害が起こることがあります。また、尿に出る尿酸が増え、尿路結石ができやすくなるので、 それを防ぐための対応が必要になります。

◆発作時の痛みを取る薬

痛風の発作時には、痛みを取る薬として「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」が使われます。 この薬は腎臓に対してよくない影響を及ぼすため、腎機能が低下した人には使えないことがあります。 そのような場合には、ステロイド薬が使われます。 痛みに対する薬は、副作用を軽くするためにも、だらだらと長く使い続けるのは好ましくありません。 発作が起きているときに必要な量をしっかり使い、短期間で終わりにします。

◆発作の進行を抑える薬

発作が起こりやすそうなときに、初期症状が現れることがあります。「ビリビリする」「ゾワゾワする」などの個人差がありますが、 これから発作が始まるとわかった時には、発作の進行を抑える「コルヒチン」という薬を使用します。 それによって、発作が強くならずに済みます。


●薬物療法の注意点

薬には「適材適所」があることを知っておく

薬物療法で使用する薬には、薬の種類によって、それぞれの役割があります。 このことをよく理解しておくことが大切です。

◆発作時に使うのは痛みを取る薬

痛風の治療に使われる薬でも、痛みを取る薬と尿酸値を下げる薬は、全くの別物です。発作時には、痛みを取る薬が使われます。 尿酸値を下げる薬を、発作が起きているときに使い始めることはありません。 発作が悪化したり、長引いたりすることがあるからです。尿酸値を下げる薬は、発作が始まってから2週間以上空けて、 使い始めることになっています。

◆自己判断で服用を中止しない

痛みを取る薬は、痛みがあるときだけ使用しますが、尿酸値を下げる薬は長く使い続ける必要があります。 症状が治まったからといって、自己判断で服用をやめてしまうと、尿酸値は元の状態に戻ってしまいます。 尿酸値を下げる薬は、基本的には生涯にわたって服用を続けていく薬です。 薬物療法を行っていて、副作用などで困ったことが生じた場合には、自己判断せず、医師に相談するようにします。