痛風「家族を介護する人の健康」
介護が長期間に及ぶと、介護する人の健康が損なわれる恐れがあります。 介護は、自分一人で抱え込まずに、家族や身近な人の協力を求めましょう。 地域や社会のサポート体制を利用することも大切です。
■家族を介護する人の悩み
介護期間が長くなるにつれ、介護する人の健康状態が悪化する
家族を介護している人は、介護を優先して、自分の健康を振り返りにくい状況に陥りがちです。 他の家族も、「介護しているから、自分の時間が取れなくても仕方ない」「睡眠不足でも我慢してほしい」と思い、 介護している人の体調不良などを見過ごしてしまいがちです。 そのため、長期にわたって、自宅で介護している人の健康問題が起きています。 「どのぐらいの期間、介護を続けているか」という調査を行ったところ、10年以上という人は全体の約19%、 3年以上という人は約70%を占めました。長期間にわたる介護による疲労は、介護している人の体調を損なうことが少なくありません。 また、同じ調査で、介護をしていない同年代の女性と家族を介護している女性をしたところ、家族を介護している女性の方が、 「抑鬱」「腰痛」「首、肩、背中の凝り」「高血圧」を起こしている割合が多く、48%の人に抑鬱、46%の人に高血圧があるという 結果になりました。抑鬱を起こす原因として、「ストレス」「気分の切り替えができない」など、高血圧を起こす原因としては、 「食生活の乱れ」「ストレス」「睡眠不足」などが考えられています。
- ▼ストレス
- 抑鬱や高血圧に限らず、腰痛や首、肩、背中の凝りも、介護中の動作のほかに、ストレスが強く関係しているといわれています。 終日介護をしている人には、「自分がしなければならない」という使命感を持っている人が多く、 良い意味では前向きといえますが、反面、その気持ちが重責となってのしかかり、リラックスできない傾向があります。
- 【関連項目】『ストレス解消』
- ▼気分の切り替え
- ほぼ終日介護にあたっている場合には、他のことをする時間がなくなり、気分を切り替えにくくなります。
- ▼睡眠不足
- 介護をしている人の多くは、夜間、要介護者のトイレの介助のために起きることがあります。 また、要介護者の隣で眠ることが多く、要介護者の身動きの気配で目を覚ますことも、睡眠不足を招く原因になります。 睡眠不足や血圧を上昇させ、途切れ途切れの睡眠は、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高めるという研究結果も報告されています。
- ▼食生活の乱れ
- 食事を短時間で済ませるために、すぐに空腹を満たせるご飯や麺類、おかずになる塩分の多い料理などを食べている人が 多いようです。野菜や海藻類などが不足しないような食事を摂るよう心がけましょう。
- ▼ケアマネージャー(介護支援専門員)
- 介護保険制度の介護サービスを希望する場合や、受けているときに、さまざまなことを相談できる身近な存在です。
- ▼地域包括支援センター
- 地域の高齢者を支援するための機関で、支援内容は、自治体や地域によっても異なります。
- ▼地方自治体の窓口
- 相談のための窓口を開いている自治体もあります。
- ▼家族会
- 同様の悩みを持つ家族同士が支援し合う団体で、全国にあり、社会福祉協議会や保健所、保健センターなどに問い合わせるとわかります。 「認知症の人と家族の会」に相談することもできます。
- ▼NPO法人
- 介護する人を支えようというNPO法人の活動もあります。活動の内容はさまざまですが、家族を介護している人同士が交流し、 悩みを相談したり、ストレスを発散したりしています。なかには、臨床心理士など、専門知識を持つ人に話を聞いてもらえるところもあります。 身近にあるNPO法人を知りたい場合は、地域包括支援センターや自治体などの窓口などに問い合わせてください。
●健康を守るために
介護する人と他の家族が、それぞれ心掛けることがある
いつも一人で介護していると、介護の大変さや不自由さを理解してもらえず、いざというときに家族の協力が得られないことがあります。 日頃から少しでも関心を持ってもらう工夫が必要です。まずは簡単な手伝いから介護に参加してもらい、 徐々に複雑なことへと勧めます。例えば、わずかな時間、「(要介護者を)ちょっと見ていて」と頼んだり、 おむつ交換の際など、「ちょっとここを支えていて」と頼んでみてください。 介護している人の行為を見せることで、自然に覚えてもらえることもあります。 また、「これをやってほしい」という要求ではなく、「これをやってくれると私は嬉しい」というように、「私は」を主語にして、 自分の感情を伝えるようにします。例えば、「食器を洗ってくれると、(私は)嬉しい」というように言います。 そして、頼んだことが不完全であっても、やってくれたことに対して、「ありがとう、助かったわ」と感謝し、褒めることが大事です。
◆他の家族が心掛けること
介護する人の健康問題は、本人の努力だけでは解決しません。介護している人が健康を保てるように、周りの家族や身近な人が サポートすることが大切です。誰でもすぐにできることは、「介護している人の話を聞く」ことです。 「昨晩は1時間しか寝られず、昼寝もできなかった」「昼ご飯を食べるのを忘れた」などという話の中から、 介護している人が苦労している日常が見えてきます。それが「自分に何ができるか」を考えるきっかけになります。
●家族を介護する人のサポート
社会や地域の支援制度を利用する
◆法制度
会社などに勤務している人が介護をするための法律として、「育児・介護休業法」があります。 介護が必要な家族に対して、「最長で連続93日間の休業を取ることができる(1回のみ)」「1年に5日間の休暇を取ることができる」というものです。 しかし、実際の介護休養制度の取得状況を調べると、ほとんど利用されていないという結果が出ています。 「周囲の目が気になる」「職場の人に迷惑をかけると申し訳ない」などと思わなくて済むような環境整備が望まれます。
◆支援制度
地方自治体や地域などの支援制度には次のようなものがあります。