50代からのダイエット
「食事量を減らすだけのダイエットは逆効果」
食事量をただ減らすダイエットも中高年には逆効果で、体重が一時期減ってもお腹太りが加速します。
■脂肪だけでなく筋肉も減ってしまう
前頁でも述べたように、50歳前後から進むお腹太りの解消には、体内で最も多くエネルギーを消費する筋肉を増やすことが重要です。 筋肉量が増えれば基礎代謝量がアップし、効率よく痩せられるからです。 しかし、運動で筋肉を増やすことは簡単ではなく、効果が見られるようになるまでには、かなり時間がかかります。 そのため、楽に痩せようと考える人は、どうしても食事量を減らすダイエットの方に目が向きがちです。 痩せるためには、食事から摂る摂取エネルギー量よりも、日々使われる消費エネルギーの方が上回らなければなりません。 その点、食事量を減らすダイエットは、摂取エネルギーが確実に減るので、体重も体脂肪も落ちやすく、速効性が高いように見えます。 しかしそれには重大な問題が潜んでいます。実は食事制限をして摂取エネルギーが不足すると、体重と共に筋肉量も減ります。 筋肉が減れば基礎代謝も低下するので、痩せにくい体質になってしまうのです。少し詳しく説明しましょう。
食事量が減れば、血糖値が下がります。すると、血糖値を上げるコルチゾールというホルモンが副腎から分泌され、不足した糖質を補おうとします。 この時のエネルギー源は、主に肝臓の糖質と筋肉中のタンパク質を分解することで得られるアミノ酸です。 つまり、摂取エネルギーが少ない場合、筋肉を減らしてエネルギーを補給するのです。 もちろん、体脂肪も落ちますが、脂肪と同程度か、それ以上に筋肉が減ってきます。 従って、エネルギーを貯蔵する脂肪よりも、エネルギーを消費する筋肉を減らす結果、痩せにくい体質になってしまうのです。 食事量を減らすと、確かに体重は減りますが、ある時期から体重の減少は止まります。 そればかりか、筋肉が減った分、基礎代謝が低下しているため、逆に太ってしまうことがあります。これがリバウンドです。 そして、リバウンドで戻った体重の大部分は脂肪です。たとえ以前と同じ体重に戻っただけでも体の中身は大きく違い、 筋肉は少なく、脂肪ばかりが多くなってしまっています。このような状態を「隠れ肥満」といいます。 こうしたリバウンドを繰り返していると、隠れ肥満は、いつしか隠し切れない肥満へと進みます。 当然、脂肪だけが腹部の奥や表面に増え、お腹太りが加速します。 また、厳しい食事制限は、骨のタンパク質まで分解してエネルギーに変えることがあり、骨をもろくします。 食事制限で栄養素が不足すれば、さまざまな体の不調や病気も招きます。 健康のためにダイエットしているのに、これでは本末転倒です。
■筋肉を減らさないことが何よりも肝心
それでも食事量を減らすことは、摂取エネルギーを減らすという点で、一般的にはダイエットに有効といえます。 ただし、筋肉量を減らさない範囲で行うことが肝心です。 厳しい食事制限やカロリー制限ではなく、無理なく続けられる範囲、つまり筋肉量を減らさない範囲で食事量を減らすべきでしょう。 一般に、1日の摂取エネルギー量は、消費エネルギー量よりも150kcal多いと言われています。 とりあえず、この1日150kcalを減らすことを心掛けてみてください。 ショートケーキなら1個食べていたのを半分にする、缶ビールを毎晩2本飲んでいたのを1本に減らす、といったことから始めるといいでしょう。 こうした小さいことでも、意識して続ければ、筋肉を減らさずに体脂肪だけを減らすことができるので、お腹太りの解消には役立つことでしょう。
ところで、男性と女性では、太り方に違いがあります。男性の場合は、食べ過ぎや運動不足によってお腹がポッコリ出る 内臓脂肪型肥満になりやすいものです。 一方、女性は、若いときにはお尻や太もも・腕などが太くなる皮下脂肪型肥満になりやすい傾向があります。 こうした違いは、性ホルモンと深く関わっています。 男性ホルモンは筋肉量を増やすとともに内臓脂肪を蓄積させる働きがあるため、男性は内臓脂肪型肥満になりやすいのです。 これに対して、女性ホルモンは出産などに備えて皮下脂肪を蓄積させることがあるのですが、閉経でこの分泌量が減ると、男性と同様、内臓脂肪も増えてきます。 50代以降は、男性も女性も、運動と共に、栄養バランスのとれた食生活を続けることが重要です。