50代からのダイエット

健康診断などでメタボリックシンドロームと診断された場合は、 そのままにしていると、やがて糖尿病高血圧脂質異常症 といった生活習慣病が徐々に進行していきます。 これらの病気は動脈硬化を進行させ、 狭心症心筋梗塞脳卒中といった命に関わる病気を引き起こす危険性を高めます。 また、内臓脂肪型肥満は、 高尿酸血症・痛風NASH(非アルコール性脂肪肝炎)慢性腎臓病認知症など、さまざまな病気の発症にも関連していることがわかってきています。 50歳代は、肥満に繋がる生活習慣を見直す最後のチャンスです。 今こそ「脱メタボ・ダイエット」に取り組みましょう。


■特に問題なのは内臓脂肪

50代前後になると、誰でも体型の変化が進みます。特に気になるのは、腹部に脂肪がつく「お腹太り」ではないでしょうか。 もちろん、若い世代でも肥満の人はいます。若いときの肥満は、体が全体的に太っていて、体重もズッシリと重くなります。 ところが、中高年の肥満は、たとえ体重はさほど増えていなくても、お腹の辺りだけが目立ってくるのが特徴です。 初めのうちは「ズボンのウェスト周りがきつくなった」という程度でも、若いときと同じ食生活を続けていると、 いつの間にか下腹がポッコリ出たり、脇腹にも脂肪がついてビア樽のようになったりします。 私たちは、毎日の食事で摂った糖や脂肪などの栄養から、生命維持や日々の活動に必要なエネルギーを得ています。 そのエネルギーが十分に消費されればいいのですが、食べ過ぎや運動不足などによって消費されなかった余分なエネルギーは、体内の脂肪細胞に蓄えられます。 そして、エネルギー過剰の状態が続くと、肥満になってしまうのです。 ちなみに、体脂肪率(体重のうち脂肪の重さが占める割合)が成人男性で25%、成人女性で30%以上あれば肥満とされます。

肥満は、体への脂肪の付き方によって大きく2つのタイプに分かれます。 具体的には、体の表面にある皮膚の下につく皮下脂肪が増える「皮下脂肪型肥満」と、 腹部の奥にある肝臓や腸など内臓の周囲につく内臓脂肪が増える 「内臓脂肪型肥満」。 中高年に多いのは、後者の方です。特に問題なのは内臓脂肪型肥満で、 メタボリック症候群(以下、メタボと略す)を招きやすくなります。 メタボとは、肥満・高脂血症などの危険因子を複数併せ持った状態のこと。 日本のメタボ診断基準では、おへその高さで測った腹囲が「男性85cm以上、女性90cm以上」の場合に内臓脂肪型肥満とされ、 それに加えて、 脂質異常症高血糖高血圧のうち2つ以上に当てはまるとメタボと診断されます。 今挙げた危険因子がいくつも重なると、一つ一つの検査値は低めでも、動脈硬化が急速に進みます。 その結果、 狭心症や心筋梗塞脳梗塞、 さらに癌といった、命にもかかわる重大な病気を引き起こす危険性が非常に高まるのです。


●寝たきりとも無縁になれる

では、なぜ内臓脂肪が増えると動脈硬化を急速に進めてしまうのでしょうか。
内臓脂肪は、血液中の糖や脂肪などの栄養をエネルギーとして燃やす代謝に深く関わっています。 食べ物から摂った糖や脂肪などのエネルギー源は、遊離脂肪酸として血液中に入り、全身に運ばれて消費されます。 一方、消費されなかった余分なエネルギー源は、肝臓で中性脂肪として合成され、脂肪細胞などに蓄えられます。 その際、内臓脂肪の細胞には、皮下脂肪の細胞よりも早く中性脂肪が蓄積されます。 また、脂肪細胞からは アディポサイトカインと呼ばれる、さまざまな働きをする生理活性物質が分泌されます。 内臓脂肪が増えると、体にとって悪い働きをする生理活性物質が多く分泌され、よい働きをする生理活性物質は減ったり働きが弱くなったりします。 その結果、代謝の働きに悪影響が及んで動脈硬化を飛躍的に進めてしまうのです。

内臓脂肪が増えると活性酸素も増えて細胞が損傷され、 それが肝臓や胃・肺などのの元凶になります。 もちろん、皮下脂肪型肥満も問題です。皮下脂肪は腕や脚など体全体を太くして、二段腹や脇腹がたるむ原因になります。 見た目が悪いばかりか、体重が増えて 腰痛膝痛も招きやすくなります。 従って、中高年にとって、お腹太りを解消すれば、見た目にも若々しくなり、動脈硬化を改善して、重大な病気を未然に防ぐことができます。 痩せて体重が軽くなれば、膝や腰への負担も減って活動的になるので、寝たきりとも無縁になるでしょう。

このように、50代からの人生を病気と無縁で過ごせるかどうかは、お腹太りのあるなしに左右されるといっても過言ではないのです。