耳鳴り・難聴・めまい②耳鳴り

耳鳴り』は内耳の異常興奮が主原因で、低温ならメニエール病や耳管開放症の疑いあり。


■耳鳴りに悩む人は日本人の4人に1人

近頃、耳鳴りを訴える人が急増しています。厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2001年)によれば、日本人の約4人に1人が 耳鳴りに悩んでいるという結果が出ているのです。一言で耳鳴りといっても病的なものばかりとは限りません。 静かな場所にいれば誰でも「シーン」「シンシン」など、かすかな音を感じるものです。 しかし、健康な人でも経験するかすかな耳鳴りと、病的な耳鳴りとは異なります。 詳しくは後述しますが、病的な耳鳴りは周囲の状況に関係なく、持続的、もしくは断続的に聞こえます。 病的な耳鳴りのほとんどは、本人にしか聞こえない「自覚的耳鳴り」です。 これは体のどこにも音源がなく、聴診器を当てても周囲の人は耳鳴りの音を聞くことができません。 自覚的耳鳴りは、内耳の蝸牛から大脳に至る聴覚ルートのどこかで電気的な異常興奮が生じて発生すると考えられています。 この他、血流や筋肉の痙攣などが音源となり、聴診器でも聞こえる「他覚的耳鳴り」もあります。


●耳鳴りは4タイプあり、疑うべき原因も違う

耳鳴りの現れ方は決して一様ではありません。患者さんごとに、耳鳴りの聞こえ方は違います。 あえて耳鳴りの聞こえ方を分類すれば、次の4タイプに分けられます。

▼低温性
「ゴー」「ボー」など低い音が聞こえたり、耳が詰まったように感じたりする耳鳴りです。
内耳の障害、もしくは空気振動を伝える外耳や中耳に障害がある場合に多く見られます。 回転性めまいを伴えばメニエール病、耳が詰まって聞こえるなら、耳管開放症が疑われます。 低温性は、比較的治りやすいと言われています。

▼高温性
「キーン」「ピー」など、甲高い金属音や電子音が聞こえる耳鳴りです。 主に、内耳や聴神経など音を電気信号に変換し、脳に伝える器官に障害が発生すると起こります。 加齢性難聴、薬物中毒なども疑われます。 高音性は、低音性に比べて治療が難しい傾向にあります。

▼雑音性
「ジージー」「ザーザー」などの音に加え、「シュー」などの異音が入り混じって聞こえるタイプです。 耳の広い範囲で障害が生じているか、原因が複合して難聴が起こっていると考えられます。

▼単音性(純音性)
「ブーン」「リーン」など一種類の音だけが聞こえるタイプです。 これは雑音性に比べて、耳の狭い範囲で障害が起こっていると考えられます。

他にも、耳鳴りには、急に異音が聞こえだす「突発性」、長期にわたって異音が続く「慢性」といった分類があります。


●難聴やめまいを伴うことが多い

こうした耳鳴りの聞こえ方からすぐに原因を特定するのは難しいのですが、症状の現れ方で疑うべき病気をおおよそ推測できます。 例えば、左右どちらかの耳に低音性耳鳴りが現れ、目がグルグル回る回転性めまいを伴う場合は、 メニエール病(内耳が水ぶくれになる状態の病気)の疑いが濃厚です。また、低音性の耳鳴りとともに、耳が詰まって 自分の声が大きく響いて聞こえるなら、耳管開放症(中耳の気圧を調整する耳管が開きっぱなしになる病気) の可能性が高いと言えます。 ほとんどの耳鳴りは、難聴・めまい・あるいはほかの随伴性症状と共に起こります。自分の症状をつぶさに観察し、 適切な治療を受けることが、症状改善の第一歩といえるでしょう。 耳鳴りの主な治療法は、生活習慣の改善と薬物療法です。

まずは、聴覚器のトラブルを招く日常生活の危険因子を取り除きます。一般に、耳鳴りを訴える患者さんには、神経質な人も多いので、 「あまり気にしない」ように心掛けることも重要でしょう。 次に服薬(血流改善薬・利尿薬・ビタミン剤など)、筋肉注射、麻酔薬・ステロイド薬の鼓室内注入(鼓膜に注射すること) などを行います。こうした治療を受けることによって、大抵の耳鳴りは快方へと向かいます。

過度のストレスを原因とする心因性の耳鳴りでは、自律神経調整薬・抗鬱薬・抗不安薬が処方されることもあります。 心因性の場合、ストレスを減らす工夫や努力が不可欠です。