耳鳴り・難聴・めまい③めまい

めまい』は数秒続けば頭位めまい症、数時間ならメニエール病、数日以上続けば前庭神経炎が心配。


■平衡感覚を担う内耳や脳の異常で発生

目の前がグルグル回ったり体がフラフラしたりするめまいは、平衡感覚を担う耳や脳に障害が起こることで発生します。 耳の内部で平衡感覚を司っているのは、内耳の三半規管と耳石から成る前庭です。 このうち、三半規管は、体の回転を感知する器官で、中にある内リンパ液の流れを感覚細胞が捉えることにより、 頭が動いた方向や速さを認識します。一方、耳石器は、体の傾きや重力を感知する器官です。 耳石器の中には小さな石(耳石)があり、その動きを感覚細胞が捉えることで、体の傾きなどを認識します。 平衡感覚は、三半規管と耳石器からの情報が前庭神経を介して脳幹や小脳に伝わることで認識できます。 そして、脳が必要な指令を筋肉や関節に伝えることにより、体のバランスが保たれるのです。 めまいは、こうした平衡感覚を保つ仕組みのどこかに平衡感覚を保つ仕組みのどこかに異常が生じて起こります。

めまいを招く病気には、上や下を向いたときなど頭の向きを変えたときに起こる良性発作性頭位めまい症、 激しい回転性のめまいや難聴・耳鳴り・耳閉感が同時に起こるメニエール病などがあります。 この他、椎骨脳底動脈循環不全、前庭神経炎、聴神経腫瘍や脳腫瘍、脳卒中(脳梗塞・脳出血など)、生活習慣病(糖尿病・ 高血圧・脂質異常症)、低血圧、貧血、更年期障害といったことが原因で起こるめまいもあります。 最近は、ストレスを原因とする心因性のめまいも若い人に増えており、原因の見極めが難しくなっています。


●めまいのタイプから原因の病気を推測

めまいの原因は多岐にわたりますが、症状の特徴から原因となる病気をある程度なら推測できます。 めまいの現れ方には、次の5つのタイプがあります。

①回転性
目の前がグルグルと激しく回っているように見えるめまいです。また、地震のように縦揺れ・横揺れが起こっていると 感じることもあります。回転性のめまいは、主に内耳の病気に多く見られます。

②浮動性
地面が不安定に揺れているかのように、体がフワフワと浮かんでいるように感じられるめまいです。 これは、耳石器の異常や内耳の機能不全、あるいは小脳の障害などが原因となって起こります。

③動揺性
体がユラユラと揺れる感じがするめまいです。これは、薬物中毒、脳幹や小脳の障害などによって起こります。

④眼前暗黒性・失神性
目の前が急に真っ暗になってクラッときたり、頭から血の気が引いて失神したりするめまいです。 これは、貧血や椎骨脳底動脈の血流が滞った時などに起こります。

⑤動揺視
物が揺れて見える症状で、これもめまいに含まれます。動静脈奇形や心臓血管系の病気に見られます。 これらは動いていない時にも起こる自発性と、姿勢を変えたときに起こる誘発性とに分かれます。 原因として疑われる主な病気は、下の一覧表を参照してください。



●めまいの持続時間で原因を推測

めまいは、発作として現れることが多く、その持続時間から原因となる病気を推測することもできます。 例えば、良性発作性頭位めまい症なら数秒、メニエール病なら数時間、前庭神経炎なら数日以上、めまいが持続します。 めまいの標準的な治療は、生活習慣の改善や薬物療法(抗めまい薬・抗不安薬・利尿薬・血流改善薬の服用)が中心になります。 麻酔薬・ステロイド薬の鼓室内注入(鼓膜に注射すること)も有効とされます。 めまいが起こったら、かかりつけ医か耳鼻咽喉科を受診してください。めまい外来や神経内科、平衡神経科などの専門科を 受診するのもお勧めです。めまいは、脳の病気とも深く関係しています。手足のしびれや麻痺、ろれつが回らないなどの症状もあれば、 脳卒中の可能性があります。特に早朝から症状がある場合は、要注意です。直ちに脳神経外科を受診すべきでしょう。