耳鳴り・難聴・めまい③難聴

難聴』は耳垢・突発性など原因が多く、体温計のピー音が聞きにくいなら加齢性難聴に注意。


■感音性難聴は根治しにくい

難聴は加齢による耳(聴覚器)の衰えによって、誰にでも起こり得ます。しかし、聞こえづらいからといって、 一概に加齢性難聴と決めつけることはできません。 難聴は、音の空気振動がうまく伝わらない「伝音性難聴」と、音の電気信号が脳にうまく伝わらない「感音性難聴」 とに大別できます。このうち伝音性難聴は、外耳から中耳に至る器官の異常が原因で起こります。 例えば、中耳炎による鼓膜・耳小骨の異常(鼓膜裂傷・耳軟化症など)で音の振動が伝わりづらくなると、聞こえが悪くなります。 また、外耳に耳垢が溜まり(耳垢栓塞)、音がさえぎられることもあります。

伝音性難聴は、鼓膜や耳小骨の異常を治療したり、耳垢を除去したりして音の伝達ルートを正常に戻せば解消するので、 比較的治しやすい難聴といえます。一方、感音性難聴は音を電気信号に変換して脳に伝える内耳や、聴神経、脳幹、大脳などの 異常で発生するため、治療が難しくなります。特に内耳や聴神経の神経細胞は、一旦死滅すると回復しないので、 元通りに治すことは困難です。


●難聴の聞こえ方には3パターンある

いずれの難聴であれ、病状の程度は人それぞれ違います。難聴の程度(レベル)は、軽度・中等度・高度・重度に分かれます。 軽度はささやき声が聞こえづらいレベル、中等度は大きな声なら聞こえるレベル、高度は耳元で大きな声で話されれば聞こえるレベル、 重度は電話のベルが聞こえないレベルです。重度では補聴器をつけても音が聞こえず、両耳の聴力が全くな状態で 全聾と診断されます。感音性難聴の場合、いったん失われた聴力の回復はなかなか望めません。 そのため、軽度の鬱から治療を受け、残された聴力を温存することが肝心です。 難聴は、聞こえ方のパターンによって原因となっている病気をおおよそ推測できます。 難聴の聞こえ方は、次の3つのパターンに分かれます。

▼低音障害型
低温が聞こえづらいパターンの難聴です。低音障害型の人は、中耳炎や耳管狭窄症、あるいは鼓膜に孔が開いている疑いがあります。

▼谷型
中音が聞こえづらいパターンの難聴です。谷型の人は突発性難聴や聴神経腫瘍の可能性があります。

▼高音障害型
高音が聞こえづらいパターンの難聴です。高音障害型の人は、加齢性難聴、抗生物質(ストレプトマイシン)による薬物中毒、 頭を強く打ったことによるケガなどが難聴の原因として考えられます。

ちなみに、加齢性難聴の人は、甲高い電子音や金属音が聞こえにくくなります。 体温計のピーという電子音が聞こえにくいようなら、老化による難聴が疑われます。


●補聴器や人工内耳も検討するといい

難聴の治療では、生活習慣の改善に加え、薬物療法・手術・補聴器の装着などが行われます。 薬物療法では、内耳の血流をよくするためにステロイド薬、末梢神経拡張薬、ビタミン剤、利尿薬、抗血小板薬などを服用します。 また、麻酔薬・ステロイド薬の鼓室内注入法(鼓膜に注射する)も、難聴の改善に有効なのでよく行われます。 難聴の手術(鼓室形成術)は、慢性中耳炎で伝音性難聴がひどい場合に選択されます。 具体的には、炎症の部分を除去し、耳小骨や鼓膜を作り直して聞こえをよくするものです。

聴力低下が進んで改善の難しい難聴では補聴器を使います。補聴器には、耳に入る音を大きくする気道補聴器、 頭蓋骨を響かせて内耳に音を送る骨伝導補聴器などがあります。 内耳が正常に機能しない人には、人工内耳もあります。これは、内耳に電極をつないで聴力を補う器具です。 人工内耳は、これまで最も成功した人工補聴器と言われています。手術が必要になりますが、こうした器具も大きな助け成るでしょう。