クレアチン

クレアチンはアルギニン、グリシン、メチオニンの3種類のアミノ酸から合成される成分です。 体内ではクレアチンリン酸といった形で、筋肉に多く存在します。 エネルギー代謝に関わる成分であることから、運動選手が使うサプリメントとして人気が高まりつつあります。 クレアチンは、食品では肉や魚に含まれていますが、その量は少ないため、 スポーツ目的での摂取の場合はサプリメントでの摂取が勧められています。


■「クレアチン」とは?

『クレアチン』は、体内でエネルギー代謝に関与している成分で、 スポーツ選手のサプリメントとして海外では広く利用されていますが、 日本ではまだあまり耳にする機会が少ないのではないでしょうか。 血液検査で腎機能の評価指標となっているクレアチニンと混同されることもしばしばです。 スポーツの世界では、1992年のバルセロナオリンピックで、陸上の金メダリストの中にクレアチンを飲用していた選手がいたことから、一気に注目度が上がりました。


●クレアチンの構造と食品での分布

クレアチンは、1835年フランスの科学者シュプルールによって、牛肉汁に含まれる一成分として発見され、 ギリシャ語の”新鮮な”を意味する「kreas」から「クレアチン」と命名されました。 現在では化学合成法により生産され、日本では、食薬区分の変更(2001年の医薬品の範囲に関する基準の改正) によって食品素材としての使用が認められ、主に運動選手のサプリメントへの利用が進んでいます。 クレアチンはタウリン、オルニチン、γ-アミノ酸(GABA)などと同じく、 たんぱく質の構成成分とならない非タンパク質性アミノ酸の一種です。 食品中のクレアチン含量は、魚類、肉類に多く、まぐろ、鯛、ヒラメには約0.6g/100g含まれ、牛、豚、鶏に約0.4g/100g含まれています。


●クレアチンの生体での働き

体内にあるクレアチンの95%以上が骨格筋に存在しており、体重60kgの人では、約100gを体内に保有していることになります。 クレアチンの給源としては、食品として摂取されるだけでなく、 体内でもグリシンアルギニン、 メチオニンを材料として、肝臓や腎臓で生合成されます。

生体内でのクレアチンは約60%がクレアチンリン酸、残りの約40%がクレアチンとして存在しています。 クレアチンの重要な役割は、生体内でATP(アデノシン三リン酸)供給に関わっていることです。 ATPは運動時における筋肉収縮のエネルギー源をはじめ、生体におけるエネルギー燃料の基本単位となっています。 高エネルギー化合物であるATPは、高エネルギー結合したリン酸を放出し、 自身がADP(アデノシン二リン酸)となる際に放出されるエネルギーを種々の生命活動に利用しています。 しかし、このATPの量は限られており、特に、激しい筋肉運動では数秒間でなくなってしまいます。 限られた生体内の環境でエネルギー産生活動を続けるには、ADPをATPに戻してリサイクルすることが最も効率的です。 このリサイクル活動を行うのがクレアチンリン酸です。 クレアチンリン酸は、結合しているリン酸をADPに渡してATPに戻すと共に、自身はクレアチンとなります。

クレアチンリン酸とクレアチン、ADPとATPの反応は、クレアチンキナーゼによる可逆的反応であり、 ATPが十分にあるときは、クレアチンからクレアチンリン酸が生成され、安定したエネルギー源として変化していきます(不可逆的)。 蓄積されます。クレアチンリン酸は、筋肉内で1日約1〜2gが非酵素的反応により尿中排泄体のクレアチニンに そのため、クレアチニン生成量は個人ごとに全身の筋肉量に比例しています。 クレアチニンは腎糸球体から濾過され、ほとんどが再吸収されることなく尿中に排泄されます。 健康診断などで血中のクレアチニンを測定するのは、腎臓の濾過機能のよい指標となるためです。 運動時におけるATPやクレアチニンリン酸は、すばやくエネルギー源となってくれますが、ごく短時間で消耗されてしまいます。 これらがなくなると、筋肉はグリコーゲンやグルコースを消費してエネルギーを発生させます。


■クレアチンの経口摂取の効果と意義について

クレアチンは前述したようなエネルギー代謝に関わることから、「筋肉疲労を回復する」「運動持久力を高める」などといわれ、 スポーツ選手のサプリメントとして プロテインやバリン、ロイシン、イソロイシンなどの 分岐鎖アミノ酸(BCAA)などと並び、 人気の高い成分となりつつあります。 運動選手におけるクレアチンサプリメントの効果的な摂取方法としては、ローディング(増強)期間として1日に20gを4回に分けて摂取を行い、 その後のメンテナンス(継続)期間には1日に5gを摂取する方法が推奨されています。

クレアチンは、入手可能な最も信頼できる科学的エビデンスによって裏付けが行われている、 米国のナチュラルメディシンデータベース(NMDB)に収載されている成分です。 短距離走のように短時間に激しい運動を何度も繰り返す運動期間中、 筋肉機能を増強するために経口投与された場合において、有効であるとされています。 この効果はNMDBにおいて有効性レベル3、すなわち「効くとは断言できないが、効能の可能性が科学的に示唆されるレベル」と判断されています。 しかしクレアチンの投与効果は、運動する人の状態(年齢、食事、投与方法)、運動の種類、訓練状況などによって評価が大きく異なります。、 例えば、高度なトレーニングを受けた運動選手や高齢者の運動能力の向上には、クレアチンの効果が認められていません。


●サプリメントでクレアチンを摂取する場合

クレアチンは、肉類や魚類に多く含まれる成分ですが、 クレアチンをサプリメントなどで摂取する場合は、十分な水分と共に適量を用いれば、経口摂取でほとんどの人に安全と考えられています。 しかし、クレアチンを大量に摂取すると、分解産物であるクレアチニンの血中濃度が上昇するため、尿中への排泄が亢進し、 尿量が増加して腎臓や心臓に負担をかける恐れがあります。 腎機能が正常で健康な人ではまれですが、腎臓に障害があるまたはそのリスクがあるという人においては、 クレアチンの摂取が腎機能に影響を与える可能性が示されています。 腎疾患の既往歴がある人、糖尿病高尿酸血症などで腎疾患のリスクが高い人は、 クレアチンの摂取を避けるべきでしょう。

さらに、薬の中にも使用法によっては腎臓に障害を与える場合のあるものがあります。 クレアチン摂取中における薬物の服用は、両者の相互作用によってさらに腎臓に負担をかける可能性も考えられ、十分な注意が必要です。 妊娠中、授乳中におけるクレアチンの摂取については、安全性に関する信頼性の高いデータは十分にありませんので、摂取を避けるべきでしょう。

いずれにせよクレアチンの摂取効果が期待できるケースは、一部のスポーツ競技に関わる人だけのようです。 一般の方において、疲労回復効果や体格の改善効果などを裏付ける十分なデータは、今のところないのが現状です。