「高齢者の鬱病(うつ病)」のサイン
高齢者の場合は見逃されやすい
高齢者に鬱病(うつ病)が起こりやすいということは、一般にはあまり知られていません。 そのため、”高齢だから元気がなくても当たり前””体の調子が悪ければ憂鬱にもなるはず”などと考えられてしまい、 見逃されやすいのです。高齢者の鬱病(うつ病)を見逃さないためには、その特徴を知っておく必要があります。 高齢者が鬱病(うつ病)を発症すると、まず引きこもる傾向が強まり、家事などをしなくなります。 イライラや、不安感が目立つようになり、頭痛や腰痛のなどの痛み、あるいはだるさなどの体の不調を訴えるようにもなります。 ほかにも”自分は罪を犯している””我が家はお金が無くなり破産する”などといった妄想で苦しむ人もいます。 中には、鬱病(うつ病)と思えない症状もあるため、高齢者の鬱病(うつ病)は見逃されやすいのです。
■「高齢者の鬱病(うつ病)」のサイン
元気がないなどの症状のほか、体の不調を過剰に心配することも
高齢者の場合、配偶者や友人など身近な人の死や、身体機能の低下による体の不調、経済面での先行きの不安などが背景となって、 鬱病(うつ病)を発症しやすくなります。
- ▼精神症状
- 「元気がない」「家に閉じこもりがち」など。
- 周囲の人は、こうした精神症状を”親しい人が亡くなったショック””年のせい”などと考えがち。 2週間以上続くようなら、鬱病(うつ病)が疑われる。
- ▼身体症状
- 「不眠」「食欲低下」など。
- 身体症状も”年のせい”と見逃されることが多いため、周りの人は注意が必要。
- ▼体の不調を過剰に心配する
- 「頻尿」「膝の痛み」「白内障」などを過剰に気にしたり、強く訴える。
- 加齢に伴って誰にでも起こる可能性のある症状や病気をきっかけに、鬱病(うつ病)を発症することもある。 鬱病(うつ病)を発症すると、もともと持っている慢性的な病気や鬱病(うつ病)による身体症状を過剰に心配するようになる。 その病気を心配するあまり、鬱病(うつ病)が悪化してしまうこともあるので要注意。
■「高齢者の鬱病(うつ病)」と「認知症」との誤認
「高齢者の鬱病(うつ病)」の特徴として、「アルツハイマー型認知症」と間違えやすいという点があります。 両者に「物忘れ」「活気がなくなる」「物事に興味がなくなる」など共通の症状が見られ、 認知症が増える年代でもあるので、周囲の人は鬱病(うつ病)を見逃しやすいのです。 しかし、両者にははっきりとした違いも見られます。 鬱病(うつ病)では憂鬱感などの鬱症状があり、その症状を本人が強く訴えますが、認知症ではあまりみられません。 むしろ、のんきそうだったり、深刻感がないように見える場合がほとんどです。
高齢者の鬱病(うつ病)で現れる症状は、「アルツハイマー型認知症」の初期症状によく似ています。 どちらも活気がなくなって引きこもりがちになりますし、物事に対する興味も示さなくなります。 物忘れも共通する症状です。アルツハイマー型認知症では、物忘れは認知機能の低下によって起こりますが、 鬱病(うつ病)では、判断力や注意力が低下するため、物忘れが起こるようになります。
物忘れは、鬱病(うつ病)では比較的急に物忘れが現れますが、認知症では、半年から1~2年の長い期間をかけて だんだんと物忘れの症状がはっきりしてきます。鬱病(うつ病)の人は、自分の物忘れに必要以上に過敏になりますが、 認知症では、症状を軽めに言ったり否定することがあり、認知症が進んだ人には「物忘れの自覚」がありません。 また、何か質問すると、認知症では、答えが的外れだったり、ごまかしたり、言い訳をしますが、 鬱病(うつ病)では、質問の意味はわかっているのに、考えがまとまらず、正しい答えが出てこないという印象がします。 似ている症状があっても、鬱病とアルツハイマー型認知症の治療法は根本的に異なり、 認知症にしても鬱病(うつ病)にしても、それぞれの病気に適した治療を行う必要があります。 また、2つの病気を合併することもあるため、精神科などで適切な診断を受ける必要があります。
鬱病(うつ病)と認知症は全く異なる病気ですが、合併していることも少なくありません。 例えば認知症の場合、その10~20%が鬱病(うつ病)を合併しているというデータがあります。 また、鬱病(うつ病)で認知機能の低下の症状がある場合、そのうちの9~25%が、1年程度で認知症を発症するというデータもあります。
●どちらの症状があっても、一度検査を受ける
鬱病(うつ病)や認知症ではないかと思える症状がある場合には、精神科や神経内科など、
鬱病(うつ病)や認知症を専門とする医療機関を受診することが勧められます。
鬱病(うつ病)、あるいは認知症と既に診断されている場合も、合併の有無を調べるため、
一度受診するとよいでしょう。鬱病(うつ病)が疑われる場合には、問診などで診断されます。
認知症が疑われる場合は、認知機能のテストや脳の画像検査が行われます。
診断がつけば、それぞれの治療が行われます、認知症の場合は、薬によって進行を抑える治療が中心です。
鬱病(うつ病)で認知機能が低下している場合は、鬱病(うつ病)の治療を行い、
鬱病(うつ病)が改善することで、認知機能も改善する可能性があります。