漢方治療
漢方治療には、独特の診察法があり、これらの診察(四診)で、心を含めた体全体の病態や体質を捉え、「証」を決定し、漢方薬を処方します。
■漢方の診察とは?
「証」は、漢方の治療の指針ともいえるもので、西洋医学の診断名に相当します。 証は、医師の行う望診、聞診、問診、切診の四診により診断されます。 いずれも、患者さんの心と体の状態を同時に、自然な形で診察することが特徴です。
- ▼望診
- 視覚を使った診察法で、患者さんの顔色、皮膚の色や状態、体格や体形、動作などを診察します。 特に、舌の状態を診る舌診は、重要な診察法の一つで、色や形、歯形が付いていないかどうか、舌の苔(舌苔)の状態などの情報を得ます。
- ▼聞診
- 聴覚や嗅覚を使った診察法で、呼吸や咳の状態、体臭、排泄物の臭いなどの情報を得ます。
- ▼問診
- 自覚症状や病歴などを尋ねます。問診は基本的に西洋医学と同じように行いますが、例えば、冷えの状態など、 西洋医学ではあまり重要視しないような症状も細かく尋ねることが特徴です。
- ▼切診
- 触覚を使った診察法で、医師が患者さんの体に直接手を触れて調べます。 特に、手首付近の動脈の拍動を診る腹診は重要とされています。
■エキス剤と煎じ薬
医療用の漢方薬の主な剤形に、次の2つがあります。それぞれ使用方法、利点、欠点などが異なります。
- ▼エキス剤(医療用漢方製剤)
- 生薬を煎じた(煮出した)液体を、製薬メーカーが顆粒状や細粒状などに加工したもので、現在、広く利用されています。 原則として湯に溶かして飲みますが、そのまま水で飲むこともできます。 携帯や保管に便利で、手軽に使えますが、患者さん一人一人に合わせ、それぞれの生薬の量を加減することはできません。
- ▼煎じ薬
- 刻んだ生薬を自分で煎じ、その液体を飲むものです。手間はかなりかかりますが、処方する際に、患者さんに合わせて生薬の量を加減することができます。
どちらも効果はほぼ同じですが、エキス剤はインスタントコーヒー、煎じ薬はドリップコーヒーに例えられます。 香りや味、飲みやすさなど、好みやライフスタイルを考慮し、担当医と相談のうえ、剤形を選択するとよいでしょう。
■漢方薬の副作用
漢方薬の副作用は、西洋薬に比べて、全体的に少ないといえます。しかし、漢方薬も薬の一種なので、副作用がないわけではありません。
例えば、葛根湯に含まれる甘草という生薬には、むくみや血圧上昇、低カリウム血症などの副作用「偽アルドステロン症」が見られることがあり、
そのまま服用し続けると、心臓に重大な悪影響を及ぼす恐れもあります。
そのほかの漢方薬でも、まれに肝機能障害や間質性肺炎などの副作用があることが報告されています。
漢方薬は市販もされていますが、できれば医療機関で処方してもらい、副作用も含めて、その後の経過をきちんと診てもらうことが望まれます。
■漢方治療を希望する場合
漢方薬を使いたい場合、持病があって医療機関を受診していれば、まずは担当医に相談するとよいでしょう。
担当医自身が漢方に詳しくなくても、漢方専門医を紹介してくれる場合もあります。
担当医がいないなどの場合には、日本東洋医学会のホームページを利用し、漢方専門医を探すのも一つの方法でしょう。
現在、約150種類の漢方処方に健康保険が適用されています。ただし、自費診療の医療機関もあるので、
受診する前に問い合わせるなどの確認をしておいたほうがよいでしょう。