■「脳動脈瘤」があり、不安です
昨年11月に「脳動脈瘤」と診断されました。
大きさは2cmです。日常生活で注意することはないが、1年後にまた受診するように言われました。
動脈瘤が破裂しないようにするにはどうしたらよいでしょうか。食事は塩分を控え、野菜を多く摂るように気を付けています。
「解離性動脈瘤」で亡くなった方のニュースを読み、ますます不安になりました。
このまま様子を見ていても大丈夫なのでしょうか。
●74歳・女性
●体重60kg
●血圧120/70くらい
【答】
「脳卒中」には、 脳の動脈が閉塞する「脳梗塞」(約80%)、 脳内の動脈が破綻する「脳出血」(約13%)、 脳表面の動脈にできた動脈瘤が破裂する 「くも膜下出血」(約7%)があります。 ご質問はくも膜下出血の原因となる脳動脈瘤です。 破裂する前に発見された脳動脈瘤を「未破裂脳動脈瘤」といい、成人の4~5%にあると考えられています。 頭痛やめまいの精密検査や脳ドックなどの検診で発見される機会が増えています。 発見された動脈瘤がすべて破裂するわけではなく、全体の1~2%(年間)が破裂するといわれています。 動脈瘤の部位、大きさや形状、年齢やくも膜下出血の家族歴などにより、破裂する危険性が異なります。
未破裂脳動脈瘤に対する治療は手術以外になく、開頭して行う「クリッピング術」とカテーテルを使用して行う「血管内コイル塞栓術」があります。 74歳の女性で2cmの動脈瘤が見つかった場合、経過観察を行うのが一般的です。 動脈瘤自体が小さなものであること、手術には合併症による障害が残る可能性(3%程度)があること、高齢者は合併症の出現率が高いこと、などがその理由です。 ご質問の破裂予防のための注意点ですが、一般的な健康管理として、適度な運動、栄養バランスのとれた食事や減塩以外にはありません。 高血圧や 糖尿病がある方はその治療が優先されますし、 喫煙者はぜひ禁煙してください。
動脈瘤の存在を一度は受け止められた方でも、著名人がくも膜下出血で亡くなられた報道に接したりすると不安に駆られてしまうことも多いようです。 しかし、よく考えてみてください。その動脈瘤はかなり前からあったものかもしれません。 MRIが普及する前はCT検査が頭痛の精密検査などで行われていましたが、CTでは動脈瘤は発見できません。 CTで異常なしと言われた方の中には動脈瘤が存在した方もあったと思われますが、ほとんどの方はくも膜下出血にならずに一生を終えられたと考えられます。 動脈瘤が発見される前と同じ気持ちで生活され、今回の検査をご自身の健康を振り返るよい機会にされることをお勧めします。 なお、お手紙にあった「解離性動脈瘤」は特殊な血管の病態で、一般的な動脈瘤とは異なることをご理解ください。
(この答えは、2017年4月現在のものです。医療は日々進歩しているので、後日変わることもあるのでご了承ください。)