不眠と脳の働き

不眠が続くと大脳に疲労がたまり、 物忘れボケにつながる危険が大きくなります。


■不眠と脳の働き

不眠が続くと記憶力も衰える

みなさんの中には、眠る時間が短いと、ぼんやりしたり、注意力や集中力が低下したりした経験のある人も多いでしょう。 中には、イライラしたり怒りっぽくなったりした経験のある人も多いはず。 不眠は、実は脳の働きにも影響を及ぼすのです。 私たちが眠くなるのは、脳の視床下部という部位から睡眠の指令が脳幹(脳の最下層にあり、血液循環や体温調節などを 司る部位)に伝えられ、大脳の活動が弱まるため。そして、朝になると、視床下部への睡眠命令が解かれ、 大脳が再び活動を始めます。

大脳は、意思の決定や、言葉の発生・理解・認知・判断といった日常生活に欠かせない行動をしています。 この大脳は「眠る脳」とも呼ばれ、睡眠を必要とする脳です。そのため、不眠が続くと大脳に疲労がたまり、 物忘れやボケにつながる危険が大きくなります。 これまでの研究によれば、人間が長時間眠らずにいると、幻覚や幻想が現れ、脳に障害が起こることもわかっています。 また、大脳は日中に得た情報を整理して必要なものは記憶し、不要なものは消去するといった、いわば情報の交通整理の 役目も果たしています。不眠が続けばこうした働きも低下し、記憶力も衰えます。 さらに最近の研究によれば、技能を修得するために昼間に練習したことが、眠っている間に頭の中で整理されて 身につくことが明らかになりました。つまり、不眠が続くと、技能を修得する能力も衰えてしまうのです。 当然、いい仕事はできなくなるでしょう。


■国語や算数の成績が悪くなる

睡眠不足は、大人だけの問題ではありません。最近では、子供たちの間にも広がっているのです。 日本小児保健協会が行った調査によると、現代の3歳児の約5割は就寝時刻が午後10時以降になっており、 その割合はこの20年で倍増しているそうです。聖徳短期大学の鈴木みゆき教授の調査によれば、 就寝・起床時刻が一定していない幼児ほど「無気力」「自己主張が強く、通らないとパニックを起こす」 「理由のない攻撃性が強い」などの問題が多いと確認されています。 小学生以上の子供についても、東京都教育委員会が行った調査の結果、睡眠不足を感じている子供の割合は、 小学生が40%、中学生が60%、高校生にいたっては70%に上っています。 そして注目すべきは、そうした睡眠不足の子供の中で「大声を出して暴れたい」「イライラする」といった 精神症状を訴える子供が大勢いたということです。最近、衝動的で感情をコントロールできない、 いわゆるキレやすい子供の増加が言われますが、その背後には睡眠不足が関わっているとも考えられています。 また、子供たちのそのほかの訴えの中には、「頭が重い」「ほんやりする」といった回答が20%あったといいます。 授業に集中できず、やる気が起こらないわけです。 広島県教育委員会が全公立小学5年生を対象に行った調査では、8時間の睡眠をとる子供は、 5~7時間の睡眠を取る子供に比べて、国語や算数の成績が高いという結果が出ています。 睡眠不足は学業の成績にも悪影響も与えるのです。