ストレスと不眠

「今晩こそ眠らなくては」と、気にしすぎると、それが ストレスとなり、不眠を慢性化させることがあります。


■ストレスと入眠障害

寝つけないことを気にしなければ、眠れるようになる

「不眠症」には、なかなか寝付けない「入眠障害」、夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」、 朝早く目が覚めてしまう「早朝覚醒」、ぐっすり眠った気がしない「熟眠障害」の4つのタイプがあります。 このうち、ストレスで起こりやすいのが入眠障害です。 例えば、その日にあった嫌な出来事や明日の仕事のこと、日ごろの心配事などが、布団に入っても頭から離れず、 つい考え込んで寝付けなくなったという経験は、誰にもあることと思われます。 しかし、寝付けないことをあまり気にしなければ、多くは一過性で済み、再び通常通り眠れるようになります。

ところが、「また寝付けなかったらどうしよう」「しっかり睡眠をとらなくては」と眠りについて気にしすぎると、 眠れないこと自体がストレスとなり、ますます脳が覚醒して、寝つきが悪くなります。 それが度重なると、「布団に入ると目が冴える」ようになり、心配事など特定のストレスがなくても寝付けなくなって、 入眠障害が慢性化、重症化してしまいます。 入眠障害では、一般に、寝付くまでに30分~1時間かかり、なかには2~3時間かかることもあります。


■入眠障害の生活改善

朝、眠くても布団から出て1日をスタートさせる

入眠障害の対処では、まず次のような「生活改善」を行います。

▼体内時計を修正する
入眠障害が慢性化すると、「体内時計」が乱れやすく、 それが寝つきをより悪くしています。そこで、体内時計のリズムを整えることが大切ですが、 そのポイントは朝にあります。朝きちんと起きて、朝日を浴びると、体内時計が修正され、 夜、眠気が起こりやすくなります。寝つくのが遅かった分休養をとろうと、朝に布団から出ないでいると、 朝日を浴びるタイミングを失います。起きるのが多少辛くても、布団から出るようにしましょう。 また、規則正しく食事を摂ることも大切です。体内時計の働きは、脳のほか、胃腸にも備わっています。 規則正しく食事を摂ることが、体内時計を整えることにつながります。 さらに適度に体を動かすなど、日中は、活動的に過ごすようにしましょう。

▼「深部体温」をいったん上げる
体の奥の体温を「深部体温」といいます。一般に深部体温が下がってくると、眠りに入りやすいといわれています。 このとき、体の表面温度は上がります。赤ちゃんが寝つく前に手足が温かくなりますが、 これは深部体温が下がることによって起こるのです。 次のような工夫で深部体温をいったん上げると、その後に下がりやすく、眠りに入りやすくなります。
【軽い運動】就寝の2~3時間前に軽い運動を行うと深部体温が上がります。 例えば夕食後の軽い散歩、筋肉の緊張を解きほぐすストレッチングなどを行うとよいでしょう。
【入浴】就寝1~2時間前にぬるめのお風呂に入ると、深部体温が上がります。

▼リラックスする
眠気を感じていないときに布団に入っても、すぐには眠れません。 結局は「寝つけない」という焦りが生じ、ストレスが高まりますから、布団に入るのは、 あくまで眠くなってからにしましょう。また、眠気はリラックス状態で起こってくるものです。 夜はのんびりと過ごし、リラックスすることも大切です。 例えば 「音楽を聴く」 「アロマテラピーを楽しむ」 「ハーブティーを飲む」 「気楽な内容の本を読む」など、 さまざまなリラックス法の中から自分に適した方法を取り入れましょう。 なお、飲酒には注意が必要です。アルコールには催眠作用がありますが、一方で夜間後半の眠りを浅くし、 早朝覚醒を招くことがあります。また、徐々に飲酒量が増えて、アルコールへの依存性が高まることもあるので、 アルコールに頼るのは好ましくありません。