■肥満と不眠
「睡眠時無呼吸症候群」による血圧の上昇などを招きやすい
肥満があると、糖尿病や高血圧になりやすいだけでなく、睡眠中に呼吸が何度も止まる「睡眠時無呼吸症候群」 を起こす危険性が高まります。睡眠時無呼吸症候群の人は高血圧や糖尿病を合併していることが多く、 特に高血圧は約3~4割の人が合併しているとされています。
●睡眠時無呼吸症候群の症状
「睡眠時無呼吸症候群」は、
睡眠中に呼吸が止まる「無呼吸」を何度も繰り返す病気です。
『「大きないびき」「昼間の眠気」などの症状があり、睡眠中に10秒以上の無呼吸・呼吸量が半分以下に低下する
「低呼吸」が1時間に5回以上ある』、あるいは『無呼吸・低呼吸が一晩に15回以上ある』場合に、
睡眠時無呼吸症候群とされます。
睡眠中に呼吸が止まっていることに、本人は気づいていないのが一般的です。
しかし、呼吸が止まったときは脳が覚醒するので、深い眠りが得られません。
そのため、睡眠時間は十分であっても、「昼間に眠気を感じる、熟睡感がない、朝起きたとき頭が重い、
昼間の集中力が低下する」などの症状が現れます。
●呼吸が止まる仕組み
「睡眠時無呼吸症候群」の最も大きな危険因子は「肥満」です。仰向けに寝ると、重力で舌の付け根(舌根)
などが落ち込み、空気の通り道である上気道が狭くなります。健康な人では、上気道が塞がってしまうこと
はありません。しかし、肥満があると、のどの周辺に脂肪がついているため、
睡眠中に上気道が健康な人よりも狭くなります。そこを空気が通ると、大きないびきが起こります。
さらに重力で舌根などが落ち込んで完全に上気道がふさがると、呼吸が止まってしまうのです。
呼吸が止まると、全身の酸素が不足し、血管や心臓に大きな負担がかかります。
その結果、血圧や心拍数が上がるだけではなく、「心筋梗塞」や「狭心症」「脳卒中」を起こす危険性も高くなります。
実際に、重症の睡眠時無呼吸症候群を放置すると、寿命が短くなることもわかっています。
また、高血圧の治療をしていても血圧が下がりにくい場合は、この病気が原因になっていることもあります。
●睡眠時無呼吸症候群の治療
睡眠中に「CPAP」や「マウスピース」を使い、気道を広げて空気を通りやすくします。
- ▼CPAP
- 鼻にマスクをつけ、一定の圧力を掛けた空気を鼻から送り込んで、気道を広げます。
- ▼マウスピース
- 装着すると下顎が前に出て、空気が通りやすくなります。症状が軽い人などに用いられます。
●日常生活での注意
肥満のある人は、まずは減量が大切です。体重を減らすだけで無呼吸が起こりにくくなります。 重力で舌根などが落ち込むのを防ぐために、寝るときは、横向きで寝るようにしましょう。 また、お酒を飲んで寝ると、のどの筋肉が弛緩して無呼吸が起こりやすくなります。 また、多くの睡眠薬にも弛緩作用があります。そのため、寝酒や自己判断での睡眠薬の使用は厳禁です。