不眠と病気との関係

不眠には「夜なかなか寝付けない」「夜中に目が覚める」「早朝に目が覚める」「熟睡感がない」など4タイプあります。 不眠は今や5人に1人が悩む国民病で、放置すれば 糖尿病メタボなどを招くとされています。 また、不眠が続くと脳の働きも衰えて、イライラ・集中力の低下・ 物忘れ・ボケも多発し、仕事や学業の成績低下をも招きます。


■不眠と病気との関係

不眠症の人は病気になりやすい

不眠というと、「死に直結することはないから」という理由で今までは軽視されがちでした。 ところが、最近は不眠がさまざまな病気の温床になるとわかってきたのです。 例えば、癌にかかりやすくなります。これは、不眠が続くと 「免疫力」を担う血液中の白血球という免疫細胞の働きが衰えるため。 文部科学省の協力で行われた調査によれば、昼夜逆転の生活をしている男性は、 そうでない人に比べて 前立腺癌にかかる危険度が3倍も高くなることがわかっています。 また、米国の癌研究センターなどの調査では、深夜1~2時まで起きている人は、早い時間に寝る人に比べて 乳癌になりやすいと報告されています。 これは、夜更かしをすると、睡眠ホルモンと呼ばれる メラトニンが不足し、 それを補うために女性ホルモン(エストロゲン)が過剰に分泌され、その結果、乳癌が発生しやすくなると考えられています。


■生活習慣病と不眠

「生活習慣病」「不眠」とは、実は密接に関係しています。 35歳から59歳までの会社員約6000人を対象にした調査では、 糖尿病高血圧脂質異常症がない人のうち、不眠の経験があるのは約26%でした。 一方、これらの生活習慣病がある人では、約40%が不眠に悩んだ経験がありました。 実際、”生活習慣病があり、不眠に悩んでいる人”は多く見られます。 内科で治療を受けていても不眠が続いていて、精神科を紹介され、受診する人は少なくありません。 生活習慣病の中でも、特に「糖尿病と高血圧」は、不眠と深い関係があります。 最近では、これらの病気の症状が不眠を起こすだけでなく、逆に不眠が病気に影響を及ぼすこともわかってきました。 また、糖尿病や高血圧の人にも多い「肥満」は、 睡眠障害を引き起こす「睡眠時無呼吸症候群」の原因となります。 生活習慣病と不眠は相互に影響しあって、両方の病気を悪化させます。 生活習慣病と不眠を併せ持つ人は、その両方を改善することが大切です。


■不眠とメタボリックシンドローム

「メタボリックシンドローム」も、不眠と無関係ではありません。 メタボリックシンドロームは内臓に脂肪がたっぷり付いた肥満に加え、 高血圧・高血糖・脂質異常のうち2つがそろった状態を言います。 メタボリックシンドロームになると、脳梗塞や心筋梗塞といった死に直結する大病になる危険が高まるため、 問題視されているのです。 私たちの体は、眠りが深くなるにつれて体温・心拍数・呼吸数が下がり、血圧や血糖・血中脂質の数値も下がる 仕組みになっています。つまり、不眠になると、血圧や血糖・血中脂質の数値も上がったままの状態が続き、 高血圧や糖尿病・脂質異常を招く原因になるのです。日本大学の兼板佳孝准教授が行った研究結果でも、 睡眠時間が5時間未満の人は、5時間以上の人に比べて高血糖になる確率は1.27倍、脂質異常症になる確率は1.42倍 高いことが明らかになっています。

メタボリックシンドロームの元凶である肥満も、不眠と深い関係があります。 兼板准教授は、健康診断のデータを比べた結果、睡眠が5時間未満の人は、5時間以上の人に比べて1.36倍も肥満になりやすい と発表しています。そして、不眠の傾向がある人は、そうでない人に比べてメタボリックシンドロームになる確率も高い と報告しています。眠っている時間が短いと、起きているときの疲れがたまって体の活動性が下がり、 代謝も悪くなるため、太りやすくなります。また、睡眠時間が短いと、それだけ食べ物を口にする機会も多くなるため、 肥満につながります。不眠は重大な病気を招く温床です。ぜひ解消してください。

【関連サイト】:『高脂肪症(肥満症・メタボリックシンドローム)』