糖尿病神経障害の治療

糖尿病神経障害を完全に治す薬はまだないので、対症療法が中心になります。 糖尿病神経障害は、高血糖状態が長く続くために起こります。したがって、「血糖コントロール」が治療の基本です。 具体的には、「全身運動や食事療法、禁煙、薬物療法」などがあります。 そのなかで、特にお勧めしたいのが全身運動です。


■全身運動の効果

糖尿病神経障害の薬物療法では、一般に血液循環をよくする薬が使われますが、全身運動にも血流を改善する効果があります。 血流がよくなれば、症状が和らぎますし、血糖コントロールにもよい効果が期待できます。 また、血液中の糖が筋肉に取り込まれやすくなり、エネルギーを燃焼しやすい状態になります。

全身運動に適しているのが、 「ウォーキング」と「水中運動」などの有酸素運動です。 ただし、頑張りすぎて腰や脚などの関節を痛めないように注意しましょう。 ぬるめのお湯での「入浴」や、「軽いマッサージ」なども、血流の改善に役立ちます。 運動は、1日合計30分間、1週間のうち4日以上行うことで、以下のような効果が期待できます。

▼高血糖を改善する
運動をすると、筋肉を動かすエネルギー源として脂肪が使われます。 また、糖が筋肉に取り込まれやすくなり、筋肉の中でエネルギーとして消費されるため、血糖値が下がります。

▼血行を改善する
血液の循環が促進されて、低下している神経線維の機能が改善します。

また、運動と同様に「食事療法」も血糖コントロールにおいて重要な方法です。 食事の摂り方や内容を工夫することで、血糖値を上げ難くすることができます。 さらに、「禁煙」することも大切です。 タバコには血管を収縮させる作用があり、喫煙していたのでは、 血行をよくしようと努力しても十分な効果が得られません。

糖尿病神経障害では、劇的には改善しませんが、根気よく治療を続けることで、障害された神経線維が 少しづつ回復していきます。治療の途中で一時的に異常感覚が強くなることがありますが、 これは神経線維の機能の回復によるもので、むしろよいことです。

糖尿病の合併症の中でも、初期に起こるのが糖尿病神経障害です。 糖尿病を発症しても十分な対策をしなかった人にとっては、最初の試練になります。 しかし、糖尿病神経障害の改善は、「網膜症」や「腎症」を未然に防ぐことになります。 あきらめずに、根気よく治療を続けることが大切です。


■その他

●進行させないために

大切なのは、やはり血糖値の管理です。ヘモグロビンA1cの値を7.0%未満に保ちます。 危険因子である飲酒や喫煙、 「高血圧」「脂質異常症」などの管理も、糖尿病神経障害の予防や治療に繋がります。 また、早期で、血糖管理が比較的良好な場合は、アルドース還元酵素阻害薬という薬を使うと症状の改善が期待できます。


●日頃のフットケアも大切

糖尿病神経障害が進むと、足の感覚が鈍くなり、足の小さなけがなどに気付きにくくなります。 さらに、「糖尿病」があると 「動脈硬化」が起こりやすく、 下肢の動脈硬化が進むと血流が障害され、足の傷が治りにくくなります。 すると、小さな傷であっても、やがて壊疽などの深刻な状態に繋がり、足や足の指を切断しなければならなくなることもあります。 壊疽を防ぐためには日頃のフットケアが大切です。毎日足の隅々まで見て触って、異常がないか確認してください。 また、高血糖の状態だと、細菌感染が起こりやすいので、足を清潔に保ちます。 足を保護するために普段から靴下を履き、靴は足の形に合ったものを選びましょう。