骨・関節が衰えると
骨や関節が衰えると、介護が必要になったり、寝たきりの状態になるリスクが高くなります。 適切な予防対策に取り組みましょう。
■骨が衰える原因
骨が衰える最大の原因は、骨粗鬆症です。 骨は、骨を壊す「破骨細胞」と、骨を作る「骨芽細胞」の働きによって、常に新陳代謝を繰り返しています。 しかし、破骨細胞の働きが骨芽細胞の働きを上回ってしまうと、骨の量が減り、骨がスカスカになります。これが骨粗鬆症です。 高齢者の骨粗鬆症では、骨折がきっかけとなって歩けなくなったり、寝たきりの状態になったりすることが少なくありません。 骨粗鬆症の原因には、次のようなものがあります。
- ▼加齢
- 若いころと同じ量のカルシウムを摂っていても、 加齢とともにカルシウムの吸収率が低下し、カルシウム不足になって骨がもろくなりやすくなります。
- ▼運動不足
- 運動によって骨に適度な負荷がかかると、骨を作る働きが促されます。 そのため、運動不足になると、骨がもろくなりやすくなります。
- ▼女性ホルモンの変化
- 女性ホルモンは、骨芽細胞の働きに関係しています。 女性は閉経によって女性ホルモンの1つであるエストロゲンの分泌量が急激に減少するので、注意が必要です。
■関節が衰える理由
関節は、骨と軟骨でできています。膝の関節では、立ったり座ったり歩いたりするときに軟骨がクッションとして働きます。 関節が衰える原因には、次のようなものがあります。
- ▼軟骨のすり減り
- 加齢とともに軟骨がすり減ってくると、その部分で炎症が起こり、痛みが現れます。 膝の軟骨がすり減ると、 「変形性膝関節症」が起こり、 歩くときや、階段を下りるときなどに痛むようになります。 変形性膝関節症が進行すると、動きが緩慢になって、活動範囲が狭まったり、自分でできることが減ってきたりして、自立度が低下しやすくなります。
- ▼筋力の低下
- 関節周りの筋力が低下すると、関節痛が起こりやすくなります。
■骨や関節を鍛える
骨や関節の衰えを予防するためには、次のようなことを意識しましょう。
- ▼骨を強くする
- 骨を強くするには、日常生活で ウォーキングなどの軽い運動をしたり、 こまめに家事をしたりするなど、活動的な生活を送る習慣をつけることが大切です。 散歩の場合は、1日30分間、2km程度を目安に行うとよいでしょう。 食生活では、カルシウムをしっかり摂るとともに、 ビタミンDや ビタミンKなど幅広く摂るようにしましょう。 また、適量の良質なたんぱく質を摂ることも、丈夫な骨を作るのに役立ちます。 さらに、禁煙をして、 飲酒は控えめにします。 時々、日光浴をすることも大切です。
- ▼関節を鍛える
- 膝の関節の衰えを予防するには、関節を鍛える運動をすることが勧められます。 まずは運動する前に、「膝の健康度チェック(下図参照)を行い、症状がなければ、「膝を支える筋肉を鍛える運動」や、 「膝の関節の働きをよくする運動」に取り組みましょう(下図参照)。
■フレイルを予防する
骨や関節、筋肉が衰えると「フレイル」が起こりやすくなります。 フレイルとは、「健康」と「要介護・寝たきり」の間の状態をいいます。 フレイルが起こると、心身の衰えや疲労感、閉じこもりなど、さまざまな要因が重なり、徐々に自立度が低下して、要介護状態に至る恐れがあります。 フレイルがあるかどうかを見極めるには「体重減少」「筋力低下」「疲労感」「歩行速度の低下」「身体活動の低下」の5つの基準があります。 次の基準のうち3つ以上に当てはまると、フレイルが起こっている可能性があります。
- ▼体重減少
- ダイエットを行うなど、意図的に体重を減らそうとしていないのに、6ヶ月間で2~3kg以上体重が減少している。
- ▼握力低下
- 握力が、男性で28kg未満、女性で18kg未満。ペットボトルのふたを開けられない場合は、握力が低下してる可能性がある。
- ▼疲労感
- ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする。
- ▼歩行速度の低下
- 以前に比べて歩く速度が遅くなったと感じる。例えば、青信号の間に横断歩道を渡り切れない場合は、歩行速度が低下している可能性がある。
- ▼身体活動の低下
- 軽い運動や体操、または、定期的な運動やスポーツのいずれも行っていない。
●フレイルを予防する対策
■その他
【膝の健康度チェック】
運動を始める前に、膝の関節に次のような症状がないかどうかを確認します。
- 膝を軽く曲げたり、伸ばしたりすると、膝から「ゴリッゴリッ」や「ギュッギュッ」という音がする。 また、階段を下りているときに、膝の力が抜けたり、痛みが現れたり、和式トイレの使用や正座が苦痛である。
- 床に足を伸ばして座ると、膝が完全に伸びきらず、膝の裏が床につかない。 ただし、指1本分の隙間程度であれば、問題ないと考えられる。
- まっすぐ立った姿勢で、両膝の間が拳1つ分以上離れている。
1つでも当てはまる症状がある場合は、医療機関を受診して診断を受け、医師から適切な運動について指導を受けます。